#743/1850 CFM「空中分解」
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騎甲神ナイザー<Vol.5> <ふぉろんくん>
★内容
もはや、この<ふぉろんくん>にとって最初で最後になるであろうこの一作!
上京までの残り少ない時間が、ことごとく失われていく中で
小宇宙(コスモ)だけは最大限に高めて書き放ってやるっ!
受けてみよ!AWCの諸君!『騎甲神ナイザー』【第一部】をっ!
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【第一部】騎甲神、目覚める。
今だ外の雰囲気はお祭りの真っ最中であった。
「愚かなるズマーサめ‥‥。」
いまいましそうに言葉を吐きだす。その鍛え上げられた褐色の腕は怒りで震えていた。
「我が親愛なる民達よ聴け!我等の平和の日々は、残念ながら終わってしまう。」
リーナスが祭壇で演説する。
「え?何だって?」
「平和が終わっちまうんだってよ!」
「なんだよそれ!どーゆーことだいっ?」
「しっ!静かに!リーナス様がお話になるぞ。」
「聴いてくれ、諸君。あのズマーサ軍が悪鬼のごとくこの都を目指し進軍している。
男子たる者は剣を持て!婦女子、子供、老人は身仕度を整えて我等が出生の地、
『星の谷』へ向かうのだ。今夜にでも出発してほしい。」
リーナスは民衆をゆっくりと見回した。誰もが不安を隠しきれずにいた。
<俺は、この人達を守らなければならない。>
心の奥でそう彼は誓うのだった。
「待ってくれ!俺はここに残って奴らと戦う!」
「何っ!?」
「お、俺もだ!」
「そうだ!この俺も残って戦うぞ!」
若者達が口々にそう叫んだ。彼等の中にはリーナスが幼いころ共に剣士として修業し
た仲間もいた。そして、飾りの為に腰に下げてた剣を抜くのであった。飾りだったと
はいえ、剣は戦士の誇りと言うのが古くから言い伝えられていたため、その刀身は、
見事に磨きあげられ夕陽を浴びて淡いオレンジ色に輝くのであった。
「み、みんな。」
彼は驚きを隠せなかった。なぜなら、見を守るための剣を戦うために使ってくれると
は思ってもみなかったのだ。
「リーナス。今回は俺も戦いに参加させてもらうぞ。そこらのヒヨッ子共よりは役
立つと思うが?」
祭壇の階段を登って来る男がそう言った。サントスである。
「サ、サントス。お前もか?」
「彼等は皆、最強の『超剣士リーナス・サーメント』に憧れて日夜修業に励んでい
たのさ。わかるだろ?お前なら。」
「し、しかし。」
「騎甲神とラーラさえ無事であれば『リミルガ』はどこにだって再建できる。」
「う、わ、わかった‥‥。」
「なら応えてやれ、若き剣士達に!」
「うむ。」
リーナスはスラリと『聖剣ガミシス』を抜いた。オーラがみなぎり刀身を赤く染める。
「おぉーっ!!」
そして男達は正義の秩序の為に、進軍するズマーサへ聖戦を挑むのであった。その夜、
ラーラを除く女、子供は『星の谷』へ向かって行った。
★
リミルガは城砦都市である。都を中心に巨岩石が大木のようにたっていて、うっか
り足を踏み入れると迷路をさまよっているような感覚に陥ってしまう。これが『巨岩
石の森』である。さらに、これを取り巻くように『魔の砂漠』がひろがる。
リミルガの入口とも言える巨岩石で造った門にリーナスはいた。彼はサントスのこ
しらえた金色のプロテクターに身を包んでいた。月明かりがさらに輝きを増している。
その深刻な表情がさらに二枚目をひきたてていた。どうやら物想いにふけっている。
<虚しい。こんな争いは早く終わらせたいものだ。‥‥騎甲神。なぜあなたは我等
に安らぎを与えて下さらないのか‥‥。>
彼はズマーサの動きを見張る為にずっと遠くをみつめていた。
マントが風になびく‥‥。
肩に掛かるほどの長い金髪を邪魔くさそうに振払う‥‥。
なにをやっても絵になるニクイ二枚目であった。
‥‥いつの間にか雨が降ってきた。恨めしそうに夜空を見上げた。シトシトと顔を
冷やりと濡らす。
「フッ。空よ、血塗られた俺のために泣いてくれているのか‥‥。」
つぶやきつつ振り返ると、そこに サントスがゆっくりと近づいてきた。一瞬、リー
ナスの顔が引きつる。
「な、んだ‥‥、いたのか。」
顔を赤らめてそう言った。
「なんだはないだろ?フフッ、『空よ、俺の為に泣いてくれているのか‥‥』か。」
「こ、声に出して言うな‥‥!」
「相変わらずキザだな、お前は。‥‥しかし、ここまで貴様を追い詰めるとは『ズ
マーサ』とは、かなりの軍団なのだな。」
「あぁ。おそらくリミルガは、‥‥壊滅する。」
「そ、うか‥‥。」
しばらく二人は無言だった。
「妹を呼んだのだろうな‥‥?リーナス。」
「あぁ。すまんなサントス。しかし、間に合わんようだ‥‥。」
「いや、かまわないが。にしても、お前等いつ結婚するんだ?」
「さぁね、ジェナールにでも訊いてくれ。」
「あいつも女だてらに『超剣士』を持っているから、‥‥こんな風になるのなら、
俺が『カルナーシャ』を継承すりゃ良かった。」
「そうは言ってもジェナは利かないよ。」
「‥‥だろうな。騎士になることも半分はリーナス、お前と居たいからだったし。」
「そうだったか?」
「フッ、片や『無敵の超剣士』、片や『砂漠の女騎士(ワルキューレ)』。」
「笑い事ではないぞ。その二人共、お前を『兄』と呼ぶのだからな!サントス。」
「まったく、困ったもんだな。」
「あぁ、本当に‥‥‥。」
リーナスは十年前の事を思い出していた。
★
淡い乳白色の想い出。それはリーナスが『超剣士』になるための最後の試練の時だ
った。白い大理石の上で彼はサントスとその試練をまっていた。
「お兄ちゃん!リーナス様がんばってネ!」
「ジェ、ジェナ。」
少年のリーナスが頬を赤らめた。そこにはピンクのローブ(布)をまとったジェナー
ル・ド・レイクがいたのである。
「ジェナ、ほんとは僕じゃなくてリーナスを応援に来たのだろ?」
「サ、サントスっ!!」
慌てて彼はサントスの口を封じようとする。
「いいって、いいって照れない照れない。」
「お、お兄ちゃんっ!!」
当のジェナールも、まんざらではなさそうだ。
「おいっ!約束があるんだろっ!?リーナス!言っちゃえよ!ホラ。」
「う、うん。(汗っ!)」
「え?なぁに?」
ジェナールは不思議そうに小首をかしげる。その仕草がまたまたオジサンのイケナイ
遊び心をくすぐるのであった。
「あ、あのさ!あ、アハ。えっとそのぅ‥‥。」
「ん?どしたの?リーナス様。」
「あのさぁ、お、俺が『超剣士』になったら、その、こ、婚約をだな、してくれな
いか?」
「婚約?私とリーナス様が?‥‥‥‥いいわ。でも、その代わり私も『超剣士』に
なります。」
「え?えぇっ!?」
「だって、ずっとリーナス様のそばにいたいから‥‥‥。」
「えぇぇっ!?」
★
<今思えば、サントスが『超剣士』にならなかったのも、このためなのか。>
ふと、リーナスはサントスの横顔をみた。
「元気だったか?」
「あ?あぁ。」
「どうだった?」
「へっ?」
いきなり、リーナスの顔のパースがくずれる。
<な、なんてことを訊くんだ、この男はっ!?あやうく自白するところだった。>
リーナスは流れ落ちる雨の滴を拭いながらサントスその人をみた。
「フッ、別に隠すことなかろ?」
サントスは向きを変えて仮眠室へ優雅にもどっていった。
「後の見張り、よろしく頼むぞ!」
と捨てゼリフを残して。
「な、なんなんだ?あの人わっ?」
いちまつの不安を残しながらもリミルガの夜は更けていくのであった。このとき、リ
ーナスに不吉な影が掛かっていたことをサントスはおろか、リーナス本人まで知る由
もなかったのである。なぜ知る由もなかったのかは知る由もない。
ま、ラーラなら気付いたとは思うが‥‥‥‥。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−<つづく>−
なぁんか、文面が変になっちゃいましたね。ほんとは大真面目な物語りなんだけどな。
ま、いっか。人それぞれだしぃ。
SMB96724/ふぉろんくん でした。