#731/1850 CFM「空中分解」
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騎甲神ナイザー<Vol.4> <ふぉろんくん>
★内容
今回は超剣士リーナスについて書きますね。(一応本編ですけど‥‥。)
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リーナスは22歳の若さで剣士最高の称号である『超剣士』を持っていた。そして、
この世界で彼の存在を知らぬ者はいないと言われるほど高名だった。サラリとした金
髪、見る者によっては正義の炎が見えると言われる金色の瞳、ギリシャ神話にでてく
るようなスッと通った鼻筋は、ラーラと似た気品さえ感じさせる。なんと言っても、
優しく微笑む口元には2枚目の特権とも言われる白い歯が輝いている。
この男には『リルミガ』だけでなく、到る処に女性ファンがいる。数え上げると切
りがないが、人妻だろうが未亡人だろうがガキからババァまで皆リーナスのカリスマ
的美しさに惚れてしまうのだ。男性陣にとっては、うらやましい限りの男だが、彼の
絶大な“能力(ちから)”と、寛大な“心”で『リルミガ』の民からは絶対の支持を
受けていた。(余談ではあるが彼にはフイアンセがいる。)
「うん。この御二方(ラーラとリーナスのこと)がおいでになされば、この都も安
泰であろう‥‥‥。」
一人の老婆がボソリと言った。それは確信に近い何かを感じていたのかも知れない。
「リーナス様。どうぞ神殿の中へ‥‥。」
ラーラは、リーナスを神殿へ招き入れた。
「うむ。しかし、祭りの途中ではないか。」
「えぇ。でも大事なお話が‥‥。」
「わかった、中で聞こう。私も話があるのだ。」
リーナスは真紅の絨毯の上をゆっくりと歩いた。後ろからラーラがついてくる。
「よし!リーナス様も無事帰ってこられ、ラーラ様も誕生日を迎えられた。こんな
にメデタイことはない。さぁ!お祭りを再開しようではないか!」
「おぉ!!」
酔った中年の男が上機嫌で叫ぶ、回りの人々もこの幸福感に酔いしれていた。
そんなお祭り騒ぎを後にリーナス等は神殿の中の白く輝く大理石の廊下を歩いていた。
ラーラはリーナスの厳しく引き締まった横顔を見て言った。
「リーナス様、他の国の戦況はどうなっているのでしょう。」
先程の司祭者のときのセリフとは変わって、リーナスに敬語を使っていた。それは殿
方に対しての『リミルガ』の礼儀なのだ。
「ラーラ。恐らく『ズマーサ』がここに進軍してくるのも、もはや時間の問題だろ
う‥‥。」
「ズマーサ‥‥!」
ラーラは顔色を変えた。そう、『ズマーサ』とはこの戦乱の時代の二大勢力の一つな
のだ。そして、もう一つの軍団『ラキュナーガ』と対立している完壁な戦闘集団だっ
た。この『リミルガ』に来るということは伝説の中に眠る『騎甲神』の謎を求めてい
る。いや、そのものを奪取すべくやってくることを彼女は直感的に感じとったのだ。
「リーナス様。ズマーサが来るということはラキュナーガまでやって来ます!もし、
‥‥もしそうなったら、この都はおろか『騎甲神』の伝説までも‥‥。」
「‥‥破壊、される。」
リーナスが静かにそして無表情に言った。
「そのときは、この俺が『超剣士』の命に賭けて、そしてこの『ガミシス』に賭け
て騎甲神を目覚めさせよう。」
彼の腰に掛かっている長剣は『聖剣ガミシス』である。失われた『アースラント』
の秘宝である。柄の部分は龍を型どったもので緑色に光っている。つばは翼のように
広がっている。なんにしても神秘的なシロモノに相違ない。
「でも!騎甲神にマスターはいません。彼は私の呼びかけにも応えてくれないので
す。いったい、どうしたらよいのか‥‥。」
ラーラは涙を溜めて続けた。
「彼は、この世界の存在と騎甲神に選ばれたことを忘れてしまったのでしょうか?
騎甲神といえども現在あるのは『ナイザー』のみ、とてもズマーサ軍には…。」
「なんとかなる。マスターなしでも四百年前も立派に戦った記録もある。それに、
間に合わない場合でもその分は俺がカバーすれば守るだけでも‥‥。」
リーナスは思い出すように言った。
「おじい様の話ですか?それは私も聞いたことがあります。でも、昔と今の戦力で
はかなりの差があります。それに、いくらリーナス様でもお一人では‥‥。」
ラーラは歩みを止めてリーナスを見上げた。その涙を溜めた哀しみをこめた表情は、
男のなにかをくすぐるような。そして思わず抱きしめてしまいたいような(そんな美
少女っているだろ?)。オジサンのスケベ心を妙に刺激した。
「‥‥彼女を呼んである。」
リーナスは前を睨みつけ歩きだした。(どこまでも硬派である。)
「えっ?」
ラーラはリーナスについて行く。
「ま、まさか、女騎士を?」
「そうだ、『砂漠のワルキューレ』を呼んだ。」
「で、でも、彼女まで巻き込んでは‥‥。それにあの人は‥‥。」
「‥‥‥」
「そのために『魔の砂漠』へ‥‥。」
「‥‥彼女もアースラントの血を引く者。呼ばなかったとしても血族として、いや、
アースラントの騎士として勝手に現れるさ。それが宿命だ‥‥。」
奥の広間に出る。そこはラーラのための祈祷場になっていた。ちょうど中心あたり
に巨大な石柱が浮かんでいた。それの中に伝説の騎甲神が眠っていると言う。広間の
中は大理石の不思議な光りによって明るくなっていた。壁際の祭壇にラーラは向かっ
た。そしておもむろに両手を広げて呪文を唱えた。すると、眼前に白いモヤが現れ、
そこに何かが写しだされた。しばらくして二人の顔色がハッと変わりラーラの身体が
ワナワナと震えた。リーナスの両手がこれでもか!というようにギリギリと音を立て
て握り締められた。
「あ、あぁ、とうとうズマーサが‥‥。」
ラーラが膝を付きガックリとうなだれる。
「ラーラ、すまんが騎甲神を目覚めさせることは出来そうにない。俺は出る!この
都の人々を護るために。」
マントをひるがえして走りだす。雄々しく金髪をなびかせながら‥‥。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−<つづく>−
いやぁ、やっと序章が終わったぁ!次から本編に突入かなっ?
ここまでの提供は SMB96724/ふぉろんくん でした。後もつづくよぉ。