#730/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (TZJ ) 88/ 2/ 3 1:47 ( 97)
リレーA>第13回 大空は危険よ!? T−BELL
★内容
「せーんーぱーいぃー...」
具合いが悪くなっているところに持ってきて、またまた走らされるのですから、
深雪ちゃんも、たまりません。
健作くんに引きずられるように、よたよたと走ってはいますが、あとどれだけ
もつか。
健作くんにしろ、陸上部とはいえ、一人で走っているのと違って、女の子を引
っ張りながらですから、こちらもそれなりに、しんどい。でも、”おとこ”です
から、そんなことはおくびにも出さず、走り続ける訳ですな。
そんなところが、深雪ちゃんには、頼もしい。遠くから見てる分には、です。
自分も一緒に、自分の為に走っているとなると、話が変わってきます。
やっぱり、”ギブアップ”なんて言いにくい。ま、そこんとこ、健作くん、慣れ
ておりますから...
◇
走りに走った二人。でも、もう深雪ちゃんの限界。
仕方なく止まる健作。観念したの?健作。追手が迫っているというのに。
若い二人の未来や如何に。では、この続きは次回に...いや、まだ続く模様
です。
◇
「ふう」
「先輩、あたし...ごめんなさい」
「いいんだ...そうだ、ぼくがおんぶしよう! さあ」
「えーっ、あたし、いやぁっ。そんなの。恥ずかしいっ...ごめんなさい」
「そう...仕方ないな」
「ごめんなさい...でも...」
二人は捕らえられ、なぶり殺し?となってしまうのか?ああ、かわいそうな深
雪ちゃん。何としても、逃げのびねば。でも。
「...いや、心配はいらないよ」
「だって、もう逃げられない...」
おっ、健作くん、何か思いついたのかな。どうせ、ろくな考えではないでしょ
うけど、さてさて。
少し、言いにくそうなのが、気がかり。
「......空が、あるだろ。いいかい、飛ぶんだよ!」
「えっ?」
「飛ぶんだよ、深雪さん!」
「見上げてごらん↑、あんなに広い空が広がってる←↑→じゃないか。行こう、
空へ。自由な空へ。どこまでも→→→。僕らの未来もあそこにあるんだ。
ああ、きっとある」
「ええっ、どうやって??」
「簡単さ。さあ飛ぼう、って思うだけでいいんだ」
「...先輩...大丈夫ですか...??」
「そうだね、信じられないよね。ぼくもそうだった。でも、でも、飛べるんだ。
君ももう昨日までの君じゃない。はやく大空へ飛び出すんだ!」
「...?」
「そうか、君は初めてだものね。恐いことは、何も無いんだ。
いいかい、ぼくが10数える。そのとき、君も目をつぶって、10数えるんだ。
声には出さないで。次は、いいかい、大事なことだ。
数えながら、空の真ん中にぽっかり浮かんでいる姿を思い浮かべるんだ。君の
まわりは、そう、何もない。青い空の真ん中に君が居る。でも、なぜか安心出
来る、ってね。ぼくと一緒なら何も心配ないだろ?
信じるんだ。大空は素晴らしい。信じるんだ。大空へ!。他の事は考えちゃい
けない。
空に浮かんでいることだけ、考えるんだ。そのあとは、ぼくにまかせて!」
「はあ...」
「いいかい」
「え、あ、はい」
「ほんとに、いいかい?じゃ、始めるよ、いいね。目をつぶって! 大空へ!」
「おおぞらへ...」
「ひとつ!、ふたつ!、...」(ひとつ?、ふたつ?、...???)
「とお!」(とお??)
数え終わるや、深雪の後ろに回り込んだ健作くん。
「やっ!!」
とばかり、かけ声を発したかとおもうと深雪の後頭部を力まかせに。
(どごけきっつ − 鈍い音です)
「きゃっ」
とカワイく、吹っ飛ぶ深雪ちゃん。
「なっ、飛べたろ」
(バカいってんじゃねえヨ)
動かなくなった深雪ちゃんを、ヨイショと背負って、再び走り出す陸上野郎で
した(何考えてんでしょうね。みぞおちくらいにすりゃいいものを)。
《つづく》