#704/1850 CFM「空中分解」
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新リレーA>第9回 PTAの争い開始! メガネ
★内容
「なんだ? 直美の奴、涙なんか流して…。何かあったのかな?」
義彦は痛む腰をかばいながら立ち上がって、スボンのホコリを払った。
ちょっと舌打ちをしながら校舎の角を曲ろうとすると、何と鈴木と神月がい
る。義彦は慌ててバックした。
「な、なんで奴らがあんな所に?」
義彦の目はすっかり点になってしまった。
……しばらく黙って二人の話を聞いてみると…
「何!? 鈴木はそんなに尻軽だったのか…何て奴だ! 何人もの女に手を
かけやがって。今度は深雪が犠牲者になるかも…」
義彦は何故か怒りを覚えていた。
「奴にいい気はさせないぞ!」
そう意気込むと義彦は何か思い付いたらしく、さっさと帰ってしまった。
☆
場面は変って深雪の教室。
直美が教室に入って来た。深雪は今度は直美に攻撃の矛先をかえた。
「直美ちゃん、おはよー。もう1時間目は終ったのよ。勉強はいいのかしら
?」
直美は黙ったまま席についた。深雪は攻撃をゆるめない。
「あらあら。どうやら勉強する気がお有りなのかしら? それなら遅刻もし
ない方がいいわねー」
直美はうつむいたまま何もしゃべらない。流石の深雪も直美の妙な様子に気
が付いた。
「な、直美、御免なさい…その…ちょっと昨日変な事があったもんで………
……御免なさい…」
深雪は直美の肩に触れながら謝った…。
「いいの…私が悪いんだから…」
「そんな事ないわよ! 私達は深雪の事を考えて見守りに行っただけなんだ
から!」
祥子が横から口をはさむ。全く現状を把握していない。
「静かにしてよ祥子! 今は直美と話てるんだからぁ!」
「なにさ! 深雪のバカ!!」
☆
その頃、鈴木の母親が近くの図書館を借りきってPTA会議をしていた。鈴
木ママは深雪達の通っている中学のPTA親玉である。
図書館にはそうそうたるメンバー達の顔がずらりとならんでいる。鈴木の母
を筆頭に、深雪・祥子・義彦・古沢の母、直美・神月の父等々。
鈴木ママが話始めた。
「深雪さんの奥さま、昨日の事をどの様に考えていらっしゃいます?」
「えぇ? 別に。宜しい事では御座居ませんの?」
「まっ! 子が子なら親も親ですわねぇ。いやだわホホホ。未だ健作は中3
、深雪ちゃんに至っては中2で御座居ますでしょう? 深雪ちゃんは未だいい
のかも知れませんで御座居ますけど、健作は高校受験を控えている大事な時で
御座居ますのよ。こういう事があっては健作の足を引っ張る事になるんで御座
居ますのよ? お判りになられまして?」
皮肉たっぷりだ。
「でも、二人できちんと節度を持って行動するのなら、大丈夫だと思います
けれど。奥様のとりこし苦労ではありません?」
「あらあらあらあら。ほんとに判らない人ですのねぇ。たくの息子は奥様の
うちの様な甘い仕付けはしていませんで御座居ますの」
「あら。うちも奥様のとこの様な曲った仕付けはしていませんのよ」
深雪ママもやり返す。
「まあ…おお、嘆かわしい…なんという事。おお、やだやだ」
他の親達は暇なだけである。話は深雪ママと健作ママの二人だけで進行して
いる。只々、二人の言葉にハラハラしながら話を聞くだけである。
後日、神月パパに聞いてみると…
「ああ、あの時は怖かったよ。死霊のはらわたなんて目じゃなかったね」
子供の争いに親まで加わった訳である。
<続く>