AWC 『暗闇と酒と女のひとり言』−秋本 87・10・18


        
#397/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (FXG     )  87/10/18  11:16  ( 69)
『暗闇と酒と女のひとり言』−秋本 87・10・18
★内容
もう
だめ。
へんな感じ。
うん、酔ってる。
うん、へん。
ちきしょう!女は強いんだからな。
莫迦にするなよ。
そんな女々しいおんなだと思ったら大まちがいだから。きっと。
わたしはそんな女じゃないんだからな。
おおお、この酒辛い。
お酒か−お酒、お酒、あなたはいつだってお友達
あなたはけっして裏切らないのよね。
くそ−酔ってやる。今日は酔ってやるぞぉ。みてろ加代子のこころいき−
なにが、男だ。莫迦にすな。これでもあたいはいいおんな。目はぱっちりで。色は
白いし、歯ならび極上。化粧は薄くて素肌の美人なんだから。
そうだよ。そう、加代子は一等の美人なんだからな。世の中の男がほっとかないんだ。
街を歩くでしょう。するといつだって誰かが振り向く。ライトブルーのワンピース。
輝いてるんだから。
笑顔だって素敵なんだから、誰だって参るんだから。うそじゃないのよ、お酒さん
あいつだって、そうだった。そうよ。うそじゃない。云ったもん。
云ったじゃないか。ステキダヨって。
云ったよなあ。品川の駅の12番線ホームでいきなり。
びっくりして、でも、聞こえないふりをして。もう一度云ってくれるかなって。
でも、しらんぷりしちゃって。くそう。莫迦やろう!
なんだったんだ。あれは、これは。みんな嘘かでたらめか。バカヤロウ。
もう一杯飲んでやる。お酒さん、お酒さんっと。世界でいちばん莫迦なのはあたしなの
それとも、あいつ。
ああ、からい。へん。頭がぼーっと。ぼーうっと。なってきた。
お酒さんお酒さん、あなたはなんて素敵なの。わたしの願いをかなえてくれる。
忘れましょう。わすれましょう。あなたと一緒にわすれましょうあいつのことはー。
いっく!
酔ってまいりましたよ。酔ってきました。加代子さん。世界のうちでお前こそお
あゆみののろいものはないーどーしーてそんなーにのろいーのかあああああっと。
ばかみたい。ばかの加代子。かあよおこっと。
女は強いんだからなあ。ふられたってぇ、てやんで−。こちとら静岡っ子だい。
だい、だい、だい。
電話で
どうして電話でなんてー
ちょくせつ会えないくらいいやになったの
もう見たくもないというそんな意味があったの
いい加減にしろ。わたしはそれだけの女だったの
たった一言云ってそれでおわり?一巻のおわり?
ちきしょう。今にみてろ。わたしは負けない、女は強いということをみせてやるの
唄だってうたえるんだから
もっし、もっし、かーめよー。かーめさーんよーっ。せーかいーのうーち
いけない涙がとまらない
しっかりしろ!どうした加代子。
しっかりしろ、加代子
はいっ!白石加代子がんばりまっす。
白石加代子24才がんばります
がんばります白石加代子大井町小田急デパートよん階かあてん売り場担当、独身!
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「ちょっとぉ、いたの加代子。どうしたのよ部屋の電気もつけないで
 加代子あんた。泣いてるの?」
「ウン」
「うんじゃないわよ。どうしたの。なにがあったのー」
「ウン」
「云いなさいよ。彼氏とのこと?黙ってちゃ、わからないでしょ。
 ねっ、こんな時の友達じゃない。加代子!」
「ウン」
「もうっ!うんばかり云ってぇ素直じゃないんだから
 うんの後を云いなさい。ねっ・・・」
「・・・ウンコ」
「ばかっ!」
        *ああ、この一言を云いたいばっかしに長々と*秋本




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