#395/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (BMD ) 87/10/15 7:50 ( 67)
ネットワークに死す ・COLOR
★内容
「提督Z」・・・この名前を聞いた事が無いだろうか? いや、正確に言えば名前で
はない。これは「彼」のパソコン通信のハンドル・ネームなのだ。
そして彼は、かつてはこの「NG−NET」の創設時に活躍していた人物であり、一
時期はSYSOPに「このネットでSYSOPよりも名の通る男」と言わしめた最初で
最後の人間であった。なんと彼は1日に5時間もNG−NETの為に使っているといた
という噂もあった。だが、そんな彼も・・・
彼はあまりにも攻撃的だった。許容の範囲を超えてしまうほどに。そのためにNG−
NETを辞めてしまう人も少なくはなかった。しかし彼は気にも止めなかった。他の常
連からの苦情のメールが1日に数十枚を超えてる日も数多くあったが、彼は返事も書か
ずに、電子掲示板に
「人は人、俺は俺だ。出て行きたい奴は勝手に出て行くがいい! By提督Z」
とだけ書き込んだ。
それから1ケ月後、ついに彼宛のメールは1通もこなくなっていた。彼は勝ち誇って
また電子掲示板に勝利の言葉を書き込んだ。
「NG−NETを制圧せり、我、ここに敵無し! By提督Z」
そしてさらに1ケ月、今度NG−NETにCHATシステムが導入される事になった。
さっそく彼はその日のうちにNG−NETのCHATにアクセスし、ハン
ドルを「総統Z」と直して常連や新人いびりに熱中した。
彼を中心に話題は盛り上がりついにNG−NETは黒字決算を出す結果になった。
だが、彼の栄光もここまでだった。CHATを始めてからまた増え始めた文句のメー
ルもピタっとこなくなり、彼がCHATに入り込むと他の人が一斉にチャンネルを移る
という現象が日常茶飯事となってきた。彼は仕方無しに電子掲示板に書いた。
「正義は我にあり。有志よ、今こそたちあがれ By総統Z」
その日からまたCHATが盛り上がった。ディスプレイに字が映しだされる。彼は
それに見向きもしないで、自分の言いたい事を打ち込んでいった。だから彼は自分の
言葉に対するレスポンスが一つもない事にはしばらく気付かなかった。
ある日、彼は突然消えた。彼のメッセージは全て消去されており彼のメールボックス
も無くなっていた。不信に思った常連がSYSOPにメールで問いただしたところ次の
ような返事が帰って来た。
「前略 ID・XYZ413/総統Zさんに関する質問にお答します。総統Zさんはこ
の度他のネットへ移るとの連絡がありましたので、メールボックスを閉じさせていただ
きました。メッセージの方はシステムが消したのではなく、総統Zさんが自分で消した
と思われます。なお総統Kさんがどのネットに移ったのかはこちらでは判りかねます。
後、彼の最後のメッセージがこちらに届いてますので彼の希望通りに電子掲示板にて
公開させて頂きます。 草々 NG−NET/SYSOP」
そして1ケ月後、彼の最後のメッセージがUPされていた。
「やっぱり、俺、独りでは会話は成り立たないな。総統Zはここから消える」
NG−NETのメンバーは喜びのメッセージを次々に電子掲示板に書き込んだ。
「無血革命なる。すべては全員の協力があったから」
「総統は国外逃亡した、今こそ本当のNG−NETをつくりだそう。」
「総統Zは自由革命によって滅び去った」
ちょっとオーバーなようだが、彼らは「自分達の力で総統を追い出した」事実に酔っ
ているようであった。 その様子を見て微笑んでいる人物が1名いた。
「ふん、まったく一人追い出しただけでこの騒ぎだ。でも今回の騒ぎで書き込みは増え
たしROMもいなくなったし・・・言う事無しだな!」
とNG−NETのSYSOPは言った。彼の机の上には、もう使われる事の無いであ
ろう彼個人のID「XYZ413」がポツンと置いてあった。
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