#382/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (TZJ ) 87/10/10 6:10 ( 91)
リレーA>第14回 大団円、何かいいこと T−BELL
★内容
かの事件は、「超能力者」という存在を、しいてはホッパーを世間に認めさせる
またとない機会であった。それも「悪」の組織ホッパーにとって実に好都合な結果
に終わった。計算通りに。
何といっても「自由超能力者」達は政府の施設を襲った(襲ってくれた)のであ
る。持ち前の「力」を使って。それも兵器工場、超能力者養成所だ。今となっては
彼らは無言であり、何をたくらんでいたか、第3者に想像出来るものは、只一つだ。
そんな訳で政府の超能力者養成も公となったが、13人の超能力テロリストの犠
牲(?)によりすんなりと受け入れられることとなったのである。それも正しい超
能力者達として。
これまでの戦いは、どちらにとっても聖戦であった。さて、どちらが「正義」な
のか。それは、後世の歴史家の判断を待つよりないのであろうか(戦争というのは
「勝てば官軍、負ければ賊軍」というのが、かなり本質を言い当てているような気
がするが…。ま、続きをどうぞ)。
つづいて、首都では政府要人の暗殺が相次いだ。また各地で、数カ月にわたって
役人が被害者の血腥い事件も起きていた。
どれも尋常な殺られかたではなく、白昼に急に血しぶきをあげ爆発するなど、超
自然のものとしか思われない「力」によって消されてゆくのであった。言うまでも
なくホッパーの所業だ。操るより消すほうが簡単なのだろう。
これらの事件に、なぜか政府は全く反応を見せず、巷には色々な噂が流れていた
が、戒厳令、そのほかの統制など一切行われないのである。
そうして半年ほどたった頃、思いだしたように政府声明が発表された。
「現政権は揺るぎ無いものではあるが、もう一つの政権の存在も認め並立政権と
する。ただし第2の政権については詳細の発表を現在は控えておく」という不思議
なものであった。
この時、国会や地方議会はもう機能していなかった。ほとんど無政府状態といっ
てもいい。
そんなときに出た「もと政府」のメッセージに「何をいまさら」と声高に非難する
バカな評論家もいたが、行政のサービスはちゃんと行われているので、一般市民は
気にもとめていない。政府は、ぼろぼろなのに暮らしむきは悪くなってはいないの
だ。かえってよくなっているのである。とっくに第2の政府の存在をうすうすなが
らも、感じていたのである。それもかなり好意的にである。
「正義の味方」というろくでもない自由超能力者どもがいなくなった今では、国
権の機関でもあるホッパーにより易々と社会の変革が行われていった。
政治が変るのは勿論のこと、産業が変ってゆく。政治機構の上の方がどうなって
も一般市民には関係ない。下部機構が生きていれば問題ないのだ。だが、産業が変
わるとなると、これは問題である。
まずは、なんといったってロボット化なのだ。サイボーグを造る技術があるので
ある。作業ロボットなぞ、簡単なものである。ついでに家事に使う擬似人間、ヒュ
ーマノイドもたくさん造っちゃうのだ。もちろん造るならウーマンタイプと相場が
決まっている。たくさんということは安くということだから、どんどん家庭に普及
していくのである(楽しい用途、その他詳細を記述すると止まらなくなるので、こ
こは涙をのんで割愛させていただく。む、無念!)。
ともかく、多くの労働者は職場を去らざるをえなくなった。街には失業者があふ
れ、職を求める暴動も各地で起きはしたが、わずかのあいだで自然と混乱は収まっ
てしまった。
政治機構、社会機構が、きわめて簡略化されたいま、社会の富を社会の発展に有
効利用できるようになり、急速に人々は豊かになっていった。働きたくなければ働
かずとも、楽に暮らしてゆけるのである。そもそも、労働とは社会を豊かにするた
めの手段である。
豊かになった今では、不用のものなのだ。もともとそれなりに豊かだったのである。
使わなくてよい金を、おかしな所に今まではたっぷり使っていただけなのだ。
もう働く必要はないのだと理解できない者を除いて、人はこれまでの労働に費や
してきた時間のいかに膨大かつ徒労かを知った。今や機械でもできることをわざわ
ざ人間が行うことはないのだ。
労働に充てていた時間を、人々は自分の為に使う。そこは、芸術が花開く世界で
ある。その中で、快楽のみに浸りきって日々を送る連中も多数いるが、それでもい
わゆる理想郷ではなかろうか。
かくして、人類の夢が僅かな時間で実現してしまったのだ。超人類の成せる偉業
であった。
世の中が変われば人の感覚、常識も変わってゆく。原始社会のようにタブーのあ
る旧社会は、葬り去られ完全な言論の自由、表現の自由が当然のこととして受け入
れられていった(ナニヌネノはただのナニヌネノであり、ポルポルはポルポルでし
かなくなったのだ。 −でもそうなるのもちょっと寂しい気もするな…)。
「もとの」政府はとうの昔に消えていた。世界もいつのまにか同じ流れの中にあ
る。自由な世の中で科学者、技術者は、研究にいそしむ。武器は、世界に人間が二
人以上いるなら必要だ。だから、どんな世の中になっても兵器研究は続く。使われ
る日を夢みて。
科学の進歩は加速度的だ。それに工業力が伴うと無茶苦茶なものを作り出す。
でも核兵器ってどこで使うのかしら?
平穏な世界がそう長続きする訳が無い。世の中が豊か、平穏になっても凶悪な連
中が消えることはない。幾らでも、どこにでもいる。わずかな歴史を顧みてもそう
だろう?。現状を不満とする偏執的な生き残りの自由超能力者もいる。
そのうちに戦争が始まり高性能兵器をぼかすか使う…そんなに使わないうちに数
発で地球は吹っ飛び、人類そのほか一巻のおわり...。
しかし、粉々になった地球は宇宙をさまよい、その後数十億年たって再び別の太
陽の惑星として蘇ることになる。微生物が生まれ、植物が繁茂し哺乳類が生まれ…
歴史は繰り返す。めでたしめでたし。
リレーA これにて <<完>>
by T−BELL