#369/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (QDA ) 87/10/ 1 17: 5 ( 29)
無題(3) アンゴラ
★内容
ツンと鼻をつくような臭いは、死体の臭い。この闇で、ペガサスが時々踏む
ものは、道端に転がった誰かの死体。「「この地に来て3日。まだ、生きた
人間には会っていない。初めてこの光景を見たとき、僕はゾッとした。
悲しいくらい、その光景は惨めだった。不自然に折れ曲がった死体の手。
乾いて赤茶色になって、石畳にこびりついた血。どれをとっても、悲しいものだ。
「「「ここが・・・どこだか知っているか?」
不意に、たすくが尋ねた。知るもんか。勝手にここに、連れてこられたんだ。
(作者談:恩知らずなヤローだぜ。)
「いいや。知らないけど。」
たすくは、その端正な顔に悲しみの色を漂わせて、低い声で言った。一言、
「オレの故郷だよ」と。
「君の?」
僕はびっくりしてたすくに問い返した。けれど、たすくは・・・もう何も
言わなかった。
僕は、たすくの悲しみがわかったような気がした。少しだけ。
「どうして、こんなになったんだ?」
僕は、残酷な質問だと自覚しつつ、聞いた。
「ここは・・・闘いの国だよ。生まれたときから、絶えずその手を血で
汚し・・・。畝を朱に染め・・・。そうやって生きることが、正しいと、
信じている。どれだけ、その手を血で染めたか・・・どれだけ、たくさんの
人間を殺したか・・・。ここでは、それだけで人間の価値が決まる。」
淡々と語る、たすくの口調が余計涙を誘った。気が付くと、僕は・・・
泣いていた。ペガサスのウィンクルも濡れた瞳をしながら走っていた。
「だから・・・。オレは・・・。!?」
たすくは、突然ウィンクルに走るのをやめさせた。
「どうした?」
「誰かが、しげみに潜んでいる!!」
「エ?」
(続く)