#3286/3570 ◇フレッシュボイス2
★タイトル (AZA ) 24/11/17 17:34 ( 47)
謎とトリック 永山
★内容
ミステリのトリック>
最初に思ったのは、「真にオリジナルなトリック」の定義が意外と難しいのではとい
うこと。シンプルに、“それまでになかった、新しいトリック”でいいのか?
仮にそうだとして。
たとえば、「一見、電気スタンドのように偽装したお掃除ロボットをプログラムで動
かし、部屋のドアの鍵を施錠せしめ、密室を作る」というトリックは、お掃除ロボット
が世に出る前にはなかったのだから、新しいトリックだ……と主張されても、「ちょっ
と違うんだよな〜」という気持ちになります。
新しいトリック=優れたトリック とは限らないので別に上記例のようなものをオリ
ジナルなトリックとして認めてもかまわないのかもしれませんが、感覚的にはやはり違
うなと。針と糸でやっていたことをロボットに置き換えただけ、みたいなタイプは目新
しくはあっても、真にオリジナルな新しいトリックとは認めづらい。
では一気にハードルを上げて、“既存のトリックのいずれにも分類されないもの”と
定義するのはどうか。
この場合、確かに「真にオリジナルなトリックは最早ない」との主張もうなずけるも
のがあります。仮にこの定義に当てはまるものが案出されたとしても、その一つきり
で、広がりのないことになりそう。加えて、あまりに条件が厳しく、これ以外を新しい
トリックと呼ばないようなジャンルだと、活性化の妨げになるというか停滞を呼び込む
恐れが生じる?
読者に提示する“謎”が新しければオリジナルなトリックだ、とする考え方もあるか
と思います。
ミステリの作例を挙げるのはネタバレの範囲が広くなりそうなので避けて、マジック
の分野での逸話を紹介。と言ってもうろ覚えなのですが(^^;、カードマジックの名人と
して知られるプロのAに、アマチュアマジシャンが「僕はカードを当てる方法を百ぐら
い知っています。Aさんはどのくらい知っていますか?」と尋ねた。Aいわく「ほう、
凄いな君。私なんてたったの三つしか知らないよ」と。そのたった三つの方法で、色ん
な見せ方をやってのけるAの凄さが分かる、というもの。
もっと分かりやすい例を挙げると、正式名称かどうか不確かですが「バイツアウトコ
イン」というギミックは、コインをかじってちぎり、また元に戻るという現象を起こす
物として作られました。これを使って別の現象――コインの直径よりも小さな口の容器
にコインを入れる――を演ずることもできます。
で、個人的には、最初の“これまでにないトリック”の内で一定レベル以上の優れた
ものと、三番目の考え方にそれぞれ沿うトリックを、オリジナルなトリック・新しいト
リックと呼ぶのがいいんじゃないかと。ミステリはその名の通り、“謎”があってこそ
の物語であり、“謎”と“トリック”が主客転倒してはいけない。読者に示す“謎”が
新しければ、その現象を起こすためのトリックは従来のものと同じであろうと、改良型
であろうと構わない。注釈を付けるなら、従来のトリックと同じであることを簡単に見
抜かれるようでは駄目、といったところになるかな。
繰り返しになりますが、上の考え方は私見であり、色んな異なる見解を持つ人も大勢
いるはずですし、他の考え方を否定するものではありません。(^^)
ではでは。