AWC シャドーマンとカゲマン   永山


        
#3284/3572 ◇フレッシュボイス2
★タイトル (AZA     )  24/11/16  01:57  ( 46)
シャドーマンとカゲマン   永山
★内容
 おっと、早めに書き込みに来たつもりでしたが、祭さんが早かった。(^^;
 内容に重なる部分はありますが、とりあえずそのままカキコします。
 

 乱歩の『影男』、青空文庫にあったので該当箇所をざっと読んでみました。昔、読ん
だ覚えがあるようなないような。(^^; まあ私の記憶力はともかくとして。


   ※以下、『容疑者Xの献身』『影男』両作のネタバレ注意です。


 まず、『容疑者Xの献身』『影男』に共通するトリックを部分的に取り出してみま
す。簡潔に表現すると、

 人物Aを殺害。Aが翌日も生きていたかのように見せ掛け、その間、犯人はアリバイ
を確保する

 といった感じでしょうか。
 これだけを見ると、そもそもさほど新奇なトリックではなく、昔からあり、諸作で繰
り返し使われてきたものなんじゃないかと思えてきます。いくつか発表されているアリ
バイトリック分類に従えば、「犯行時刻に錯誤がある場合」に該当します。ポピュラー
なアイディアだと言えましょう。
 次に、『容疑者Xの献身』を読むと、上のトリックを用いるに当たって、色んな工夫
が施されていると分かります。一括して言えば、人物入れ替え――被害者に関する偽装
を組み合わせたのがポイント。工夫により、本来、犯人が仕組んだのは人物入れ替えト
リックであるのに、アリバイトリックであるかのように登場人物及び読者に思い込ませ
る効果が生じています。
 この「アリバイトリックと見せ掛けて、実は人物入れ替えトリックだった」というの
が、『容疑者Xの献身』のトリックの肝であると断言できます。作中に「幾何の問題と
見せ掛けて、実は関数の問題」という旨の台詞が登場するので。

 という訳で、私の解釈では『容疑者Xの献身』のトリックは、基本となる原理の一部
は先行作品に見られた物と同じだが、他の原理と組み合わせており、見せ方そのもので
新たな面白さをプラスしている――となります。もちろん、私はこれをパクリとは呼ば
ない。古くからあったシンプルなトリックを補強したと言える訳で、その上で(繰り返
しになりますが)新たな面白さを生み出している、イコール新たなトリックを生み出し
たと評価していいかと。

 ただ、一部の読者が「似ている」「パクリ?」と感じる感覚も理解できなくはないで
す(共感はしませんが)。というのも、それぞれのシチュエーションに共通点が複数ある
(質問箱の人も触れていました)ため。これは後発作品の印象を悪くしてしまうでしょう
ね。偶然なのか知っていて敢えて似せたのかは分かりませんが、もしも後者であるな
ら、はっきりオマージュと分かるような書き方をするのがよかったのかもしれません。
でも多分、偶然なんだろうな〜。

 ではでは。





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