#3044/3577 ◇フレッシュボイス2
★タイトル (AZA ) 24/04/14 13:03 ( 53)
先が見えた!かもしれない 永山
★内容
フジテレビ系で放送のドラマ「イップス」初回十五分拡大を録画視聴。ネタバレ注意
です。
イップスに罹って書けなくなったミステリー作家と、検挙率が急落している刑事がバ
ディになって事件を解決する、という事前情報で視聴を決めました。主演の一人がバカ
リズムと聞いて脚本にもタッチしているのかなと思いましたが、どうやら本作は違うよ
うで。
序盤を見ていて、熱波アイドルが反社の元彼を呼び止めた時点で、「あ、これもしか
して倒叙型?」と思ったらその通りでした。知らなかったんですが、第二回以降もこの
形式で行くみたい。
倒叙ミステリを味わう(あるいは書く場合も)ポイントとしては、三つの基本がある
と思っています。まず、非他殺(事故死や自殺、病死など)の様相を呈しているのであ
あれば、どこで他殺を疑うようになったのか。次に、犯人に容疑を向けるきっかけは何
か。そして最後は、犯人を追い詰める物(証拠やロジックなど)は何か。以上三点で、
優れたアイディアが使ってあれば、おのずとよい倒叙ミステリになっているでしょう。
今回のエピソードはどうだったか。一つ目の、ヒートショックからの溺死と見なされ
ていたのを他殺と判断するに至るきっかけは、スマートウォッチがショートしていたこ
と。これ自体は別にいいんですが、犯人は被害者が防水機能付きスマートウォッチを付
けたままでいることに思い至らなかったのかな。気付かなかった理由が明示されていれ
ば尚よかった。
二つ目の、犯人を疑うきっかけ。これは犯人がまだ何の説明も受けない内から、被害
者が溺死だと思っていたことが主で、被害者と元から顔見知りだったというのは補強。
疑うきっかけとしては文句ないですけど、使い古されており陳腐かな。そもそも、犯人
が口を滑らせるというのは、ミステリのテクニック的には凡庸と言わざるを得ない(で
も、使わざるを得ない場面があるのも事実 ^^;)。
三つ目、決め手は純水を継続的かつ大量に買い込んでいたこと。現場であるサウナ店
の近所の薬局で購入していたというのは、よほどトリックに自信があったんだな。それ
でもやっぱり、迂闊だなという評価になるわなぁ。
てな具合で、三点とも及第点である一方で、突出した物もなかった感じ。強いて言う
なら、トリックそのものはよかった。
ストーリーは、最初に記した主人公二人の設定がユニーク。今後、症状が改善してい
き、やがて全快するのかな。ただ、二人がコンビを組む動機がちょっと弱いか。今のと
ころ、篠原涼子演じる作家の方がぐいぐい来るから、強引にコンビ成立してるけれど
も。
だからキャラクターの面で言うと、ぐいぐい来る作家が鬱陶しいと感じる視聴者は結
構いるかも。演技がオーバーにならざるを得ないし、ある意味、演者からすれば美味し
くない役。それでも二人の掛け合いは面白く聞けたし、よほど不評でない限り、このキ
ャラは固定でお願いします。
さて今回殊更に気になったのは、作家の弟で人権派弁護士の登場。今回の事件の犯人
に対して、きっと助けになってくれるからと作家が紹介する形で名前が出、次いでラス
トに姉(作家)のところに報告がてら姿を見せるという流れで、それ自体は自然だったの
ですが……「こいつ、殺人犯なのでは?」と直感で思ってしまったのです。(^^;メチャクチャヤ
ガナ
というのも、そのラストシーン、交互して挟む形で、バカリズム演じる刑事が作家の
デビュー作を読んでいるカットが入り、書籍のあちこちに赤線を引いたり書き込みをし
たりしている。単なる熱心な読者というのではなく、そこに描かれた物語が実際に起き
た殺人事件(未解決)を彷彿とさせるものであり、刑事は必死になって読み解き、もし
かしたら解決の糸口を掴めるのではないかともがいた痕跡なのでは。仮に当たっている
としたら、犯人は誰か。物語を書いた作家が犯人ではストレートに過ぎる。デビュー作
のネタを作家に示唆したのは弟の弁護士だったとしたら? 弟はその殺人の犯人だった
となるのが一番盛り上がる顛末なのではないか……と妄想した次第。
外れていたら、自分の作品の捨てトリックとして使えるかな。
ではでは。