AWC 伏線とか考察とか   永山


        
#2542/3693 ◇フレッシュボイス2
★タイトル (AZA     )  23/01/08  20:09  ( 51)
伏線とか考察とか   永山
★内容
 先日、民放テレビ局でやっていたバラエティ番組で、芸能人が考えた裏のある物語を
映像化し、それを見ながら伏線を読み取って考察をし、隠された真実を当てよう的なの
をやっていました。司会は劇団ひとりで、絞殺委員長、もとい、考察委員長という肩書
き。
 作られた映像作品は二本で、その内の一つ、あとに流された方がいまいち腑に落ちな
い手法だったなと。

※以下、ネタバレになります。こういった番組を録画したけどまだ観てないなという心
当たりのある方は、ご注意ください。(^^;

 足の骨折で入院し,車椅子生活を余儀なくされている若い女性が、落とし物を拾って
もらったことがきっかけで、同じ入院患者の若い男性と親しくなり、互いに惹かれ合
う。が、あるとき突然、女性が危篤状態に陥る。驚いて駆け付ける男性。医師の説明に
よると、女性の入院は骨折だけではなく、難病に冒されていたせいでもある。そのこと
を打ち明けられないでいたという。三日後、女性は奇跡的に回復。目を覚ますと、危な
いときに駆け付けてくれた男性のことが朧気ながら記憶にある。男性の姿を求める女性
だが、見付けられない。医師が「男性は今朝、急逝しました」と告げる。
 この辺りまでが出題編と言えます。次が解答編。
 男は実は高齢者で、いつ亡くなってもさほど不思議ではなかった。そして女性の方も
同じように年老いている。恋をして昔のような気持ちになっていたから、お互いに若く
見えていたのだ。
 ――ってな具合でした。
 スタジオの参加者は感心していたようですが、こっちは全然納得できなかった。
 男性と女性がお互いを若く見えているというのは、まあありとしましょう。ほんとは
それぞれの主観描写のときのみにすべきですが、そこは大目に見ます。ただ、視聴者に
は一切まともな手掛かりがなかった。一応、「女性が最初に着ていた寝間着がダサくて
若者の服には見えなかった」「女性から男性に渡った手紙が自筆のきれいな文字で縦書
きだった。今どきの若い女性らしくない」だから高齢者だ、という説明がありましたけ
れども、そんなどうとでも取れるような手掛かりは、かえってマイナスの評価にしかな
らないような。
 放送後にネット配信による未公開解説があるというので、そこで何か決定的なネタが
明かされるのかと期待して観てみると、「女性が『星の王子さま』を落としたのは男性
が死ぬことを暗示」「年齢の上下は関係ないという台詞は高齢者だからこそ」「湯飲み
が古い」「音楽をラジカセで聴いてる」「演歌のCD」……だめだこりゃ。
 いや、別にかまわないんです、上記のネタを伏線として入れることは。ただし、傍証
として。一つでいいから決定的な伏線があって、それを回りから補強する形で使うのが
妥当でしょう。たとえば免許証に記載の生年月日が昭和だと、ちらっと写っているだけ
でもいい(ずるいけど)。
 傍証にしても、弱めのばかり揃っている感じがしないでもなし。歌曲を出すのなら、
初めて買ったのは?という定番のシチュエーションがあるのに。他にも、やたらと聞き
返す場面がある(耳が遠い)とか、固い食べ物が苦手(入れ歯仕様)、洗面所で手元ば
かり何かゴシゴシやっている(入れ歯を手洗いしている)といったシーンがある方が、
よほど説得力が出せるはず。
 そして何よりも看過しがたいのは、男性と女性の他に第三者がいる場面でも、二人が
若いままだった点。これでは何でもありと変わりがない。宇宙人だった、幽霊だった、
狐と狸だったなんて設定でも簡単にできてしまう。
 本来、小説やラジオドラマなど“絵”のない媒体でこそ成り立つ叙述トリックを、た
いしたアイディアなしに映像でやろうとしたことが間違いなんじゃないかと思わざるを
得ません。

 ではでは。





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