#2507/3687 ◇フレッシュボイス2
★タイトル (AZA ) 22/12/06 21:56 ( 51)
柴崎演じる柴田 永山
★内容
WOWOWのドラマ「両刃の斧」全六回をWOWOW公式配信で視聴。ネタバレ注意
です。
原作は大門剛明による同名小説、未読です。
タイトルになっている“両刃の斧”という表現、初耳でした。調べずに、「諸刃の
剣」の類語だろうなと想像していましたが、作中で説明が出て来て、だいぶ違っていた
ことが判明。(^^; というか正式にある表現ではないのかな。辞書にはない気がするの
ですが、どうなんでしょう? 作中で出て来た説明では、「目の前の相手を打ち倒そう
と振り上げた斧が、自分の背後にいる人に当たって傷つけることがある」、つまり「よ
かれと信じて取った行動が、思いも寄らぬ人物を傷つける」ってな風になっていまし
た。
それはさておき、内容。
推理物のジャンルは色々あって、またジャンルの分け方自体もいくつか考えられると
思うのですが、その一つに感動系ミステリがあると思うのです。読者の感動を呼び起こ
すことに主眼を置いたミステリ(ただし、作者がどの程度「感動させてやる!」と企図
した結果なのか、読み手には判断できませんが)。読者の共感を得ることが必須でしょ
うから、社会派と呼ばれるタイプのミステリに多いと思われます。身近な問題、想像し
やすい世界を描くので。当然、読者の現在の立ち位置によって変わってくるものでもあ
りますから、学校を舞台にしたライトミステリが感動系ミステリになることもあるでし
ょうし、スポーツ物が感動系ミステリになることだってないとは言えない。
で、本作はそんな感動系ミステリの本道、社会派推理の感動系になります。被害者家
族の問題を主題の一つとし、警察内部の腐敗を少し絡めながら、一級のミステリに仕上
がっている。以下、序盤の粗筋。
退職した刑事の柴崎は、十五年前、独り暮らしの長女・曜子を亡くしていた。自宅ア
パートで喉を掻ききられるという事件は、目撃証言があったものの迷宮入りしていた。
そして現在、未解決事件を洗い直す専従捜査班が起ち上げられたことで、再び捜査が始
まる。柴崎の後輩・川澄が調べていくと、程なくしてある男が浮上する。その男、森下
は叔父である彌冨署捜査一課長のおかげで警察官になれたものの、ストーカー行為や危
険運転など問題を度々起こし、今は退職していた。本来であれば目撃証言から真っ先に
上がりそうなところを、捜査一課長が隠蔽に走ったらしい。
川澄は柴崎を尊敬しているが、今や部外者となった柴崎に捜査情報を漏らす訳に行か
ず、伏せたまま捜査を続ける。が、しかし、柴崎の携帯電話にボイスチェンジャーを通
した声で、電話が掛かってくる。「娘を殺した犯人を知っている」と。
それからしばらくして、森下が公園で刺殺体となって見付かる。付近の部半カメラを
チェックすると、柴崎の姿が。それも手には刃物を持ち、服には血痕らしき赤い色があ
った。
――で、逮捕された柴崎(柴田恭兵)と川澄(井浦新)が、取調室で対峙するのです
が、柴崎は完全黙秘を通す。ドラマでは二回分ほど。その間、台詞は皆無なのですが、
それでも存在感ある役柄、演技が凄い。老けメイクも自然で、柴田恭兵、ここまで演じ
られる役者だったのかと再認識しました。次女も白血病で亡くし、今また妻も難病に冒
されて入院という元刑事のキャラクターを、しっかり体現していた。
ストーリーは、終盤に来て、ああやっぱりねという意外な犯人候補が浮かび上がるの
ですが、ところがどっこい(笑)、すべては作者の罠でした。この手のドラマによくあ
る構図と見せ掛けるべく、エサをちょこんちょこんと撒いてました。物語としては当
然、そこからさらに一捻りがある訳で、多少強引ながらも見事にひっくり返してくれま
した。
一つだけ疑問というか、引っ掛かった箇所を挙げると、柴崎に“犯人”が接触してき
た時期が、どうしてあのタイミングになったのかが分からない。もっと早い段階だと、
“犯人”自身に捜査の手が及ぶとでも考え、ほとぼりが冷めるのを待ったのかなあ?
危険度に差があるようには感じられませんでしたが……。
ではでは。