AWC 「これ、僕はいいけど、“エイキチ”が何て言うかな」   永山


        
#2428/3586 ◇フレッシュボイス2
★タイトル (AZA     )  22/10/04  17:38  ( 40)
「これ、僕はいいけど、“エイキチ”が何て言うかな」   永山
★内容
 WOWOWのドラマ「鵜頭川村事件」全六回を録画視聴。ネタバレ注意です。
 原作は櫛木理宇による同名小説だそうで、未読です。
 粗筋を書こうと思ったのですが、アンフェアな記述をせざるを得ない感じ……省略し
たいところですが、頑張って記してみます。(^^;
 妻の仁美が家からいなくなって数日後。医師の岩森は、仁美宛の手紙を見て、幼い娘
を連れて妻の故郷・長野県は鵜頭川村に出向く。村ではちょうど、土着の神を崇める十
二年に一度のエイキチ祭が催される頃合いとあって活気づいていたが、その一方で、矢
萩家と降谷家の両派に分かれての権力争いでぎすぎすしてもいた。「妻を探しに来た」
と伝えた岩森に、しかし具体的な情報はもたらされない。折しも天候が激変。村への人
の出入りは不可能になり、閉じ込められる。電気はストップし、電話も通じない。矢萩
は非常食を備蓄庫からすべて運び出して、村内を牛耳りに掛かる。
 翌朝、仁美のことで話があると岩森が待ち合わせしていた若者、降谷敬一が瀕死の状
態で見付かる。彼は「エイキチが来た」と言い残し、死亡した。降谷の者達は矢萩の仕
業だとして、一触即発の雰囲気に。
 事態が悪化する中、村の駐在が意を決して山越えを試みるが、翌日、川に転落して死
亡しているのが見付かった。
 ――以上が三分の一辺りまで。ジャパニーズホラーあるいはパニック物の定番といっ
た感じで、物語は進みます。このあとも両家の小競り合いもしくは明確な衝突が繰り返
され、その合間に殺人が起きる。村の祭に関する因習――外部に漏らしてはならない恥
ずべき習わしが示唆され、村を覆う何とも言えぬ空気の実態が、徐々に見えてくる。
 そして最終盤に来て意外な事実が明かされ、犯人も判明。決して「めでたしめでた
し」ではない結末で終わり。
 とまあ、このように書くとそれなりに面白い気もするのですが、ドラマを観た分で言
えば、定番から外れることなく展開して、いまいちだったかなあという感想になるか
と。意外な真相も犯人の正体も、途中で漠然と思い描く想像の一つで、あまり意外に感
じられなかったのが大きい。加えて、主人公・岩森を演じる松田龍平が、役に合ってな
いのか、物凄く下手に映った。覇気がなくて弱々しいし、台詞は棒読みに近い。ところ
が村一番の大男で暴れ者との喧嘩では、いきなり強くなって違和感が大。ただ――ここ
から盛大なネタバレになります――「『妻を探しに来た男』を演じた男」を演じたのだ
と捉えれば、あの演技で当たりだと言えなくもないのかなあ。そこを割り引いても、や
っぱり上手じゃなかったと思う。
 他にも不満は多数ありますが、ミステリ的に一番の不満は、粗筋で記した「エイキチ
が来た」という言葉の意味が、明かされないままというかスルーされたような状態で終
わったこと。どんな理由があって、「エイキチが来た」と言い残したのか分からない。
 原作に当たれば分かるのかなと調べてみたところ、そもそも原作からは大幅に変更さ
れているらしい。時代設定が違ったり、原作にはいない妻の妹がいたりするのはいいと
して、主人公が村を訪れる背景が違う、犯人や動機まで異なるというんだから、最早こ
れは別作品なのでは?

 ではでは。





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