#2010/3577 ◇フレッシュボイス2
★タイトル (AZA ) 21/11/21 21:30 ( 38)
本の感想>『混沌の王』 永山
★内容
・『混沌の王』(ポール・アルテ 著/平岡敦 訳 行舟文化)15/6441
(以下のあらすじは出版社による紹介文を引用しました)
夜、白い仮面を目にし、鈴の音を耳にしたら用心せよ――
芸術家を目指す青年アキレス・ストックは、ロンドンで友人になった自称・名探偵
オーウェン・バーンズから厄介な頼みを押しつけられる。自分の代役として、名門マン
スフィールド家にまつわる呪いの調査をしてほしいというのだ。それも、依頼人の婚約
者に成りすまして。
長女の婚約を巡って愛憎渦巻くマンスフィールド家に集まるのは、やり手の貿易商と
その腹心の部下、美しき夢遊病患者に高名な霊媒師……と、一癖も二癖もある面々。そ
して彼らは一様に、毎年の聖夜に現れて一族の誰かの命を奪うという白面の亡霊「混沌
の王」の影に怯えていた。それはいにしえの伝承でなく、三年前のクリスマスにも当主
の息子エドウィンが、完全な密室の中で殺されたのだという。
そして「混沌の王」を呼び出し鎮めるための交霊会が開かれた夜、新たな殺人事件が
発生し――過去と現在の二つの「雪密室殺人」が交差する、奇想と幻影の不可能犯罪ミ
ステリ!
――ここまで――
名探偵オーウェン・バーンズシリーズの第一作である長編に、短編「怪狼フェンリ
ル」を別冊子として封入。
感想は一応、ネタバレ注意です。そのものずばりではないですが、謎解きのヒントに
なる表現をしていると思いますから。
謎の設定はとても魅力的でわくわくさせられるんですが、解決がちょっとねえ。私、
そこそこ無茶な謎解きでも受け入れるタイプの読者だと時分で思っているんですが、本
書のこれは、部分的にやや芸がないかなあ。同じ理由付け(同じトリックにあらず)を
繰り返し使っており、何でもかんでもそれかい!って思ってしまう。正直言って、一番
謎めいたところを簡単に片付けられてしまって、がっかりした感はあります。※あらす
じを引用で済ませたのも、謎について魅力的に綴ろうとするとどうもフェアじゃなくな
る気がしたもので。
あるトリック及び犯人の正体について、それにつながる記述が出て来たときに、う
ん?もしかしてこれか?と思ったんですが、そのあとに出て来る不可思議現象の記述を
読むと、やっぱりこれじゃないよなあと思い直した。にもかかわらず、上述のようなが
っくり来る種明かしだったので、評価がだいぶマイナスになった次第。読んでいる間の
期待感はもっと高得点だったから、ハードルを知らぬ間に上げすぎていたかも。
別冊の短編「怪狼フェンリル」の方は密室もので、トリックはじきに分かる人が多い
んじゃないかと。でもシンプルで面白かった。
ではでは。