#1989/3577 ◇フレッシュボイス2
★タイトル (AZA ) 21/11/01 19:35 ( 40)
足跡の問題:何故、足跡を付けてはならないのか? 永山
★内容 21/11/01 20:52 修正 第2版
えー、図書館で借りた本のいくつかは、次の予約をしている方がおり、貸出延長がで
きないため、集中的に読む必要が生じております。
かような訳で、皆様の作品を読む時間を取りにくい状況がしばらく続く見込みでし
て、どうかあしからず。m(__)m
で、その借りてきて読んでいる本の一冊、『名探偵は嘘をつかない』(阿津川辰海
光文社文庫)について。まだ読了には遠いのですが、序盤〜前半で示された“謎”の設
定及び論理展開に、ちょっと首を傾げてしまったのでそのことを書いてみようかなと。
現場は個人宅の離れで、中にいるのは九歳の少女と十四歳の少年の二人だけ(という
ことになっています)。雨がやんで間がないため、周囲の地面はぬかるんでいます。母
屋からは少年の靴による足跡だけが続いており、少女は雨が降っている最中に離れに行
ったので、足跡が残っていない。
少女の父親が帰宅し、第一発見者となります。被害者の少女は刺殺された上に、身体
を各部に切断されています(自殺や事故ではあり得ない)。少年は頭を殴られて気絶
し、そばに倒れていました。こういった密室殺人めいた構図で、犯人と疑われた少年が
己の無実を論理立てて説明し、さらに真犯人が離れをいかに脱出したかの推理を開陳し
ます。
大前提として、真犯人は足跡を残さずに脱出せねばならなかった理由が必要だと思う
のですが、探偵役の少年は「もし痕跡を残すと犯人特定につながるような特徴的な靴を
履いていたのでしょう」としています。うん? おかしくないか? 特定されるような
靴を履いていたのなら、その靴は手に持ち、少年が履いてきた靴を使えばいい。サイズ
が合わずとも突っかけてつま先立ちぐらいできるでしょう。それが無理だとしても、犯
人は自身の靴を履いて、靴底の跡が分からなくなるくらいにぐりぐりと泥にめり込ませ
ながら立ち去れば、特定の材料にはならないはず。
だからここでは少年は、「真犯人は僕(少年)に罪を擦り付けるために足跡を残した
くなかったんでしょう」とでも言うべきだったんじゃないかしらん。
※少年の推理では、真犯人が密室状況に取り残されたあと「どうしよう?」と悩んでい
るときに、少年が離れにやって来たことになっているので、前後関係に多少の差違はあ
りますが、大勢に影響はありません。むしろ、少年がいない時点で足跡を付けずに現場
から脱出しようと考える真犯人の心理が変。
という疑問を覚えたんですが、この推理小説、一筋縄ではいかない構成・キャラ配置
になっているのは、最初からびんびん伝わってくるんですよね。上で記した少年は大人
になって名探偵として活躍しているものの、態度は傲岸不遜で親しい物からの評判は悪
い。その上、事件解決のために新たな犠牲者が出るよう犯人に仕向けたんじゃないかと
いう疑惑があり、初の探偵弾劾裁判に掛けられようとしている。
こんな具合なので、私の感じた疑問が実は真相解明の手掛かりの一つでしたという展
開も充分に考えられる。楽しみと期待がいや増します。
ではでは。