#845/3572 ◇フレッシュボイス2
★タイトル (AZA ) 19/03/05 19:56 ( 64)
ラスト二話 永山
★内容
WOWOWのドラマ「孤高のメス」第七回を録画視聴。ネタバレ注意です。
当麻の請願と避難も空しく、実川は脳死肝移植手術への協力を拒む。そして教授選に
本腰を入れ、勝つために接待のセッティングを始めた彼の元に知らせが。脳死肝移植を
希望していた女性患者が亡くなったと。
同じ知らせを当麻も受け取っていた。ドナー少年の母親にもこのことが伝えられ、非
常に残念がる。
その数日後、湖水町町長の大川が大量に吐血して倒れ、甦生記念病院に担ぎ込まれ
た。静脈からの出血は収まったが、肝臓の症状はいよいよ悪化しており、臓器移植でな
ければ保たないという。当麻や青木の頭には、脳死状態の続く少年の存在があった。
教授選の開票が行われ、実川が野本らを破って近江大教授に。部屋の移動などで忙し
い実川を、当麻が訪ねる。当麻は先日の非礼を詫び、教授当選を祝う言葉を述べたあ
と、脳死肝移植を甦生記念病院で行うので、手伝ってもらえないかと打診する。実川は
即座に快諾。当麻が大丈夫なのかと念押しするのへ、教授になったのだから誰にも文句
は言わせないと答える。
手術日が決まり、少年が救急車で近江大病院から甦生記念病院へ移送される。その
夜、実川は料亭で徳武と会っていた。徳武は実川に移植研究会の理事の一人に就いても
らいたいと持ち掛ける。それには当然、臓器移植手術を行う場合は事前に研究会に筋を
通すのが必須。実川は脳死移植に着手しようとしていることを言えず、その場は別れ
る。
手術を翌日に控えた朝、当麻を訪ねた実川は、手術の手伝いができなくなったと告
げ、頭を下げる。その理由についても包み隠さず話すと、対する当麻は受け入れ、さら
に当麻自身の非常勤講師の籍を近江大から抜いてくださいという。実川に迷惑が及ばぬ
ようにする精一杯の配慮だった。
教授の座を逃した野本は、親しくしているマスコミ記者の接待を受けた。その席で、
実川が移植手術に踏み切る寸前だったことをこぼす。もしやってくれていれば勝てたも
のを、実川は教授になりたいがために手術しなかった云々。記者はこれを聞き咎め、詳
しく知ろうとする。そして本人は実川に対して面が割れているので、若い記者に命じて
実川の動向を張らせる。若い記者が近江大病院のロビーで実川が現れるのを待っている
と、たまたま後方から声が。それはドナー少年の母が、少年のクラスメイトと交わす会
話で、脳死肝移植を行うことが決まったという内容だった。
若い記者からこのネタを受け取った先輩記者は、野本と改めて会い、探ってくれるよ
うに言う。教授選落選の野本は、もう俺にはそんなことをするメリットがないと言って
渋るが……。カルテのリストを盗み見た野本は、大川町長の症状を知り、これに違いな
いと確信する。大川が亡くならないまでも手術によって職務続行が難しくなれば、議会
は反町長派が主導権を握り、町立病院建設に傾く。そうなった暁に町立病院のトップに
収まるとの野望が野本に芽生えた。
記者らは裏付けを得るため、手術当日に甦生記念病院に乗り込む。一方、当麻は実川
の協力がなくなったため、執刀医として一人でドナーとレシピエント両方の手術に、立
て続けに挑むことに。
――以上が粗筋。例によって、若干前後している場面があります。
実川の葛藤が見ものだった。前回の感想で“暗黒面”に堕ちたと記しましたが、完全
に宗旨替えしたのではないのね。こういうキャラクターは、よりリアルでいい。
ドナー及びレシピエントそれぞれの家族の思い、交流も描かれていて、見応えがあっ
た。粗筋では省いたけれど、以前に移植手術を受けることを拒否していた大川町長が、
今度は移植手術を受けようと決意するまでを割と丹念に追っており、納得の行く流れが
作られていて好感。
次でいよいよ最終回。マスコミここは余計なことすんなって感じで観てるけど、当時
の日本における臓器移植の浸透具合からすれば、移植手術をするのは悪で、それを暴く
のが正義っていう空気に世間がなるのも。
引き続き、WOWOWのドラマ「孤高のメス」最終回を録画視聴。ネタバレ注意で
す。
ラストなので、詳しい粗筋はやめておきますが、まずは大団円と言っていい展開で、
エンターテインメントの王道でした。当麻の信念や行為が報われたかというと疑問符は
付きますが、その後、患者は救われ、実川は順調に登り詰め、国内臓器移植手術は増え
て当たり前のように行われる時代が来て、情報をリークしていた野本は痛い目に遭う。
当麻自身も、地方の病院の院長になって、思うように医療に従事しているみたいだし。
全体を振り返ると、テーマの重さや長さ、物語性に対して、大きな山場に欠けたか
な。所々で盛り上がるんですが、カタルシスを感じるような解決が示されるでもなく、
問題提起の側面が強い。さらに、本ドラマが過去を描いている点も大きいかもしれな
い。仮に、日本での臓器移植手術が始まる前に本ドラマを見たら、違う感想を持つか
も。そもそも、ドラマの作り自体、変わってくる可能性がありそう。
ではでは。