#310/3622 ◇フレッシュボイス2
★タイトル (AZA ) 17/12/24 20:44 ( 51)
壁を破れない想像力 永山
★内容
WOWOWのドラマ「名刺ゲーム」最終回を録画視聴。ネタバレ注意です。
神田がゲームをクリアしたことで、娘の美奈は解放されたかのように思えたが、当の
美奈が、父親に問う。「私の名刺、見付けられる?」――という前回の流れを受けて、
何も答えられない神田。美奈は、「やっぱり覚えてないんだ」と、諦めの表情で、フェ
ンス内の名刺をじっと見ていき、やがて一枚を示して「それよ」と言う。娘が指差した
のは、田神奈美と書かれた、デザインに意匠を凝らした手作りの名刺だった。神田はす
っかり忘れていたが、娘が学校の授業で作り、誉められた物で、確かに神田は受け取っ
ていた。だが、翌日にはチェストの上に放り出されており、それを見付けた美奈は何と
も言えない顔をしていた。
かつて、美奈は父親のことが大好きだった。テレビ局に勤める父親は自慢だったし、
場組製作に携わるようになった父親を応援し、小学生のとき、父親の作った番組を面白
くないと言われたときは、その同級生に掴み掛かったことすらあった。やがて「ミステ
リースパイ」の大ヒットで、父・神田は多忙を極めるようになり、妻は浮気。それを知
った美奈は、別れてくださいと母親に言う。程なくして離婚が成立し、美奈は父親をま
るで奥さんのようにかいがいしく面倒を見た。しかし、神田は忙しくなる一方で、家に
帰れない日も。その上、独り身の寂しさからか女性の影がちらつくようになる。一方で
娘は高校の先輩と恋人付き合いをするようになり、家庭のことが徐々に疎かになる。そ
して先輩と肉体関係を持った美奈は意に沿わぬ妊娠をしてしまい、先輩とも破局。こう
なったのは元々、父親のせいだと言い放ち、気持ちが離れる。折しも、「ミステリース
パイ」のやらせ問題が発覚し、ネット上では番組を作った神田にも疑惑の声と悪口が渦
巻いていた。そんなタイミングで、中学時代の担任教師だった薄井忍と再会する。薄井
こそが後の“謎の男X”であった。
薄井は、大学時代にクイズ研究会に所属し、テレビ場組のクイズ作家になることが夢
だった。教師になった今はあきらめていたが、受け持った神田美奈から夢を問われた際
に、ふと思い出す。その後の同窓会で、自分よりも才能のない奴がクイズ番組の製作会
社で成功しているのを目の当たりにし、夢を再び追うと決心する。新人のクイズ作家と
して、初めて会議に出席できたのが、人気番組「ミステリースパイ」。この幸運に加
え、プロデューサーの神田とは、その娘を担任した縁がある。初日の挨拶の際、神田に
そのことを言おうとした薄井だったが、神田はさっさと仕事に入ってしまった。神田の
仕事のやり方は、薄井の理想にはほど遠く、嫌な印象しか受けない。加えて、薄井がど
んなによいアイディアを出しても、全く採用せず、取り巻きの男からのありふれたネタ
を優先する。ある日我慢できなくなって、つまらなさを指摘したところ、神田の逆鱗に
触れてあっさり解雇。そうしたタイミングで、かつて担任を受け持った神田美奈と再会
する。
薄井は美奈から神田が父親としてもどんなにひどい男か聞かされ、さらにネットでの
悪評や、やらせの責任を被ってテレビ界を追放された片山から真実を聞き、神田を許せ
ない思いが募る。そのとき、脳内に閃いたのが「名刺ゲーム」だった。
――長くなったので、粗筋はここで切り上げます。一応、どんでん返しがあります。
ただし、視聴者が真っ先に思い浮かべるであろうどんでん返しですので、驚きは少ない
です。というか、これまでの感想に書いてきた通りです。予想からはみ出すことのない
種明かしでした。
現代のテレビ番組の弱点と、ネット番組の強みを分かり易く見せた感じ。これからは
ネット番組の時代だ!的な空気で終わりますが、虚しい空気も何となく漂ってるよう
な。ネットもいずれ規制が掛かるようになるはずだし、商売をするからにはスポンサー
の意向も多かれ少なかれ絡んでくるでしょうから、いつまでもネットの優位が続くとは
思えない。
一つだけ驚いたのは、前回のラストで、いかにも意味ありげに、裏ボス的な雰囲気で
映った女性が、実はネット番組の一視聴者に過ぎなかった、という叙述トリック。面白
いけど、一回しか使えないのが惜しい。
ではでは。