#838/1158 ●連載 *** コメント #837 ***
★タイトル (sab ) 10/04/16 11:29 ( 61)
ひっきー日記28 ぴんちょ
★内容
自分が死んでも子供が死んでも秩序を守りたい場合がある
とヨーコさんが言った。
私の母は、世の中はちゃんとしていると思っていたの。世
の中というのは税務署とか銀行みたいな感じだけれども。
だから勿論そんな世の中に自分が参加出来る訳がないと思っ
ていて、それで歌舞伎町などで働いていたの。そこに私が
生まれたんだけれども、当然、こんな娘が世の中に通用す
る訳がない、だって世の中はちゃんとしているのだから、
と思っていた訳。
で、私が高校の頃に家で飼っていた犬がフェラリアにかかっ
たのね。その時に来た獣医がすごいいい加減で、午前中に
来て注射を打って午後に来て又打って、今度は2、3日来
なかったり、又立て続けに来たりして、おかしいんじゃな
いのか、と思って私は注射を打った回数と請求書をチェッ
クして「おかしいんじゃないの、これ」と文句を言ったの
ね。玄関先で。そうしたら奥から母親が顔を出して、「ど
うもすみませんねぇ、うちの娘が生意気を言って」
「何言ってんの、お母さん、私は家を代表して文句を言っ
ているんだよ」
「お医者さんにそんな事を言うもんじゃありません」
みたいな感じ。その犬はほとんど、のたうち回って苦しん
でいたので私としてはどこか別の動物病院に連れていって
安楽死させた方がいいんじゃないか、と思ったのだけれど
も、「そんな事したら世間様に相手にされなくなる」とか
言う。
今度は、その母親が病気になったんだけれども、大きい病
院に入院して、回診に来た医者の背中に手を合わせる訳。
何でそんな事するんだろう。治療は全然上手く行っていな
いし苦しむばかりなのに。私としては、もっと小さいクリ
ニックで緩和ケア中心にやってもらえばいいのに、と思っ
たのだけれども、「そんな事をしたら野垂れ死にする」と
か言うの。
なんでうちの母がこういう発想をするのかというと彼女の
脳内はこういう意識になっているんじゃないかと思った。
原理−執行者−受け手
聖書−司祭 −信者
法律−法律家−被告
医学−医者 −患者
うちの母親は原理主義者だからこの左側のものが好きな訳。
これは例えば血圧計とか体温計みたいなものでしょう。そ
こにもし執行者が現れて人間的な計らいをすると原理が台
無しになると思うんだよ。だからペインクリニックで安楽
死するよりかは意味の無い延命手術を承諾する事になる訳。
フロイトですら『快感原則の彼岸』なんて書いていながら
自分の手術となると、「外科医らしく冷たく接する様に」
なんて言ったんだって。
多分そういう感じで赤紙が来たら戦争にやるんじゃないの?