#238/567 ●短編
★タイトル (dan ) 04/12/03 06:20 ( 36)
バスから転落 談知
★内容
もう今から25年以上前のことである。タイのバンコクに住んで
いたといいたくなるほど長く滞在していたときのことだ。
ある日、ワタシはバンコク市内を縦横に走るバスに乗ろうとした。
当時のバンコクのバスは出入り口の扉がない。開きっぱなしで走っ
ている。これはもの凄い混雑のため扉の開け閉めができないためで
はないかと思う。人々は勝手に乗り勝手に降りている。
ワタシもバスが止まったので勝手に乗り込んだ。そしてバスが走
り出しスピードを上げたときだった。何を思ったのか、ワタシはバ
スから降りようとしたのだ。何で降りようとしたのか、もう思い出
せないが、急に用事を思いついたのかもしれない。たいしてスピー
ドもでてないようなので、降りれると思ったのだ。そこでとんと降
りた。降りたつもりだった。しかしそのまま足を取られ転がってし
まった。ぐるぐるぐるぐる、何回も回転した。何とか止まったとき、
あわてて路側帯の植え込みに飛び込んだ。後ろからクルマが来るの
ではと思ったのだ。この動きは我ながら俊敏だったなと思う。実際
あぶないところだった。当時のバンコクも今ほどではないにしろク
ルマでいっぱいである。もしすぐ後ろにクルマが来ていたら完全に
轢かれていたはずである。しかし奇跡的にどういうわけか後ろにク
ルマがいなかった。そのせいで助かったわけである。へたするとバ
ンコクで一巻の終わりという可能性があったわけだ。
植え込みでへたりこんでいたら、クルマが止まった。上品な奥様
風の女性がこっちをみていた。ワタシは大丈夫というふうに手をふ
って合図した。それでその車はいった。何だかんだいっても、ワタ
シがタイが好きなのは、こんな親切さがあるからだ。当時自家用車
に乗っているようなひとはかなりな金持ちだろう。上流階級といっ
ていいようなひとかもしれない。それがバスに乗っているような庶
民のことを気にかけてとまってくれたわけである。これがインドだ
ったら完全無視でいってしまうだろう。庶民と上流階級とは完全に
違う人種なのがインドである。
ワタシも旅でかなりあぶない目にあったことは何回かあるが、こ
のときが最大の危機だったと思う。まったく何を考えてバスから降
りたんだろう。何かエアポケットにはいってしまったように、考え
なしでやってしまったのか。後ろにクルマがいなかったという幸運
のせいで、今こうして生きている。ありがたいことだと思うと同時
に、自分の幸運に感謝したいね。こうしてみると、ワタシって結構
運があるほうなんだな。