#215/569 ●短編
★タイトル (dan ) 04/11/10 04:43 ( 37)
写真アルバム 談知
★内容
昔の写真を撮りだして眺めていた。昔の分厚くて大きなアルバム、
写真屋でくれる紙のアルバムなど、全部で30冊くらいあるだろう
か。懐かしい写真が貼り付けてある。
人生とは過去の記憶である。という言葉がある。自分の人生とい
っても、それは過去にこういうことをおこなってきたという記憶で
あるということ。記憶でしかないということでもある。記憶という
ことになると、やはり写真かな。まあ今ではビデオなんかもあるわ
けだが、しかしワタシたちの若いころの記録だとビデオはない。写
真だけだ。
本棚に並んでいる30冊ばかりのアルバム。それがワタシの人生
というわけだ。たったこれだけ、という感じもする。ワタシの人生
って、こんだけに集約されるわけか。という感じもする。でもやは
りそれだけなんだね。
アルバムのページをめくってみると、懐かしい顔、風景。思い出
す、あの頃のこと。昔の記憶がそこにある。昔が一気によみがえる。
確かに写真を撮るときは面倒と思ったりする。旅にでるときも、
カメラなんか持たなかったらどんなに楽だろうとか思ったりもした。
でも、やっぱり撮っておいてよかったと思う。あちこちいったあの
旅さえ、こうして写真になっているから思い出せるのだ。その記憶
がよみがえらなければ、それこそ旅したかどうかさえあやふやにな
る。
ときおり、昔の写真を全部捨ててしまうというようなひとがでる。
まあ芸術家などにときおりいるようであるが。つまり過去の自分と
断絶したい。過去を振り返るより未来を見たい。というような趣旨
からだろう。でもそんなことするときっと後悔するね。未来をみる
ことと過去を振り返ることは矛盾しないのだ。むしろ過去をしっか
り知ることが未来をみる土台になったりする。ひとは過去とは断絶
できない。なぜなら過去が今を作り、今が未来を作るからだ。過去
と未来はつながっているのだ。だから過去を否定したところで、そ
れは未来をみることにつながらない。
しかし、そういった理屈より、過去を懐かしむことは、最高の癒
しではなかろうか。過去を振り返り、何か甘酸っぱいような思いを
いだかないひとはいないと思う。あの頃の記憶が次々よみがえり、
なつかしむ。それこそ、心が癒される瞬間なのではないか。
アルバムを開けば、懐かしいひとがいる、懐かしい風景がある。
思い出す、あの頃のこと。30冊のアルバムこそワタシの過去、ワ
タシの人生。