AWC 夕日と拳銃  談知


        
#192/569 ●短編
★タイトル (dan     )  04/10/19  05:10  ( 28)
夕日と拳銃  談知
★内容
 昔、タイのバンコクに住んでいたといっていいほど滞在していた
ころ、タイ陸軍の射撃練習場へいって拳銃を撃っていたことがあっ
た。かなり広めの建物で、紙の的がワイヤーで前後できるようにな
っていた。その的めがけて拳銃を撃つ。拳銃は38口径くらいだっ
たろうか。ずっしりと重く何か不気味な感じがある。いかにも凶器
という雰囲気である。こんなものをひとに向けてぽんと撃ったら、
ひとが死ぬのだなと思うと、何か不思議な感じがした。
 拳銃を撃ってみて、ワタシが一番意外に感じたのは、その引き金
の軽さだった。フェザータッチなのだ。そっと触れただけで撃てて
しまうのである。子供のおもちゃの拳銃から来ているのか、何とな
く、引き金をぐっと引くと、やがて固い部分に来て、それをなお引
くと発射するみたいな感じを持っていた。違うのである。引き金に
触れただけで弾は発射してしまうのである。
 よく漫画なんかに、拳銃を突きつけられて、それを蹴り上げて殴
るとかいう描写があるが、それは不可能だなと思った。蹴り上げる
動作をしようとした瞬間に、もう弾はでている。はっとして引き金
に触れた瞬間にもう撃っている。そんな軽さの引き金である。
 的を10メーターくらいに離して撃ってみると、結構当たる。こ
りゃもう拳銃突きつけられたら、おとなしくいうことをきくしかな
いなと思った。拳銃を奪おうとするのはむろん、逃げるのも危ない。
まず大抵撃たれてしまう。金が目的なら、すなおに金を渡したほう
がいいと思った。
 毎日毎日、射撃の練習にいった。何にもすることがなくて退屈し
ていたということもあるかもしれないが、やはり何か鬱屈するもの
があって、それを拳銃を撃つことで晴らしていたのかな。拳銃を撃
って帰ると、何かすーとした気分になったことを覚えている。いい
気晴らし、という以上の感覚があったように思う。
それも今では遠い昔の話になったが。





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