AWC お題>「おんがく」ぼく、ドザえもん……パパ


        
#15/569 ●短編
★タイトル (paz     )  02/03/17  01:37  (114)
お題>「おんがく」ぼく、ドザえもん……パパ
★内容
「ぼく、ドザえもん。23世紀の未来からやってきたネコ型ロボット。しぶ太の
お世話をするために、しぶ太の孫の孫のシワシに送りこまれてきたんだ」
「ドザえも〜ん。なに独り言いってるの?」
 と、しぶ太が勉強部屋で身体を横にしたまま尋ねた。
「アレ、ぼく何かいったかなあ?」
 と、ドザえもんが青い頭を掻きながら答える。丸い手でよくかけるものだと、
しぶ太は感心した。
「ドザちゃん、しぶ太、おやつの時間ですよ〜」
 階下からしぶ太のママの声がする。
「は〜い」
 二人の声がハモルのと、しぶ太が枕がわりにした座布団を広げたのは同時だ
った。二人は競い合うように階段をおり、居間へと向かう。
「ドザちゃんには、ドザ焼き。しぶ太には渋柿とシブ〜イお茶よ」
 テーブルにジュースの入ったマグカップと湯飲み茶碗、それにおやつの盛ら
れたお盆を置き、ママは「忙しい、忙しい」と言いながら台所に向かう。
「しぶ太くんは年寄りみたいだねえ」
「ドザえもんには、この渋さが分からないのさ。平家静香ちゃんも、ぼくの渋
さに惚れて、将来はお嫁さん!」
「どうだか……宿題はしない。昼寝するのに0.93秒の速度。勉強もスポーツも
だ一い嫌い。そんなしぶ太くんじゃ、静香ちゃんも考えを変えるんじゃないの」
 シブ太は鼻で笑い、
「結婚できなかったら、ドザえもんの道具が役立たずだって証拠になるだけさ。
ひ孫のシワシも、もっと役に立つロボットを送ればよかったのに」
「ひど〜い。それじゃあ、まるでボクが役立たずみたいじゃないか……」
 ドザえもんは短い両腕を振り回して抗議する。しぶ太はお茶をすすってから、
「それじゃあ、ドザえもんが役に立っているみたいな言い方じゃないか。おか
しいの」
「ひどい、ひどい! もう怒った。家出する!」
「勝手にすれば……いてもいなくても何も変わらないし。あ、そうだ。食費が
浮くからママは喜ぶかも。家計が黒字になるかもしれないからね」
 ドザえもんがしぶ太を睨みつける。しぶ太は黙って渋柿をほおばった。
「二度と帰らないからな!」
 ドザえもんはドアを開け、外へと飛び出した。ドザえもんの目に涙が浮かび、
グーしか出せない手でぬぐう。
「いつもしぶ太くんのために頑張ってきたのに……鬼〜」
 ドザえもんは近所の空き地で足を止め、空き箱に腰をかけて空を見上げた。
 もう何も聞きたくない――ドザえもんはつぶやき、ポケットから耳栓シール
をだして、外界の音声を閉じた。外界が無音になった代わりに、心の中で自分
の言葉だけが反響している。
(もう何もかもイヤだ。シブ太くんの面倒なんか見たくない。ネズミより嫌い
だ。大嫌いだ!)
 強い衝動でドザえもんは、ポケットから道具を取り出した。
(殺気!)
 人の気配を感じて道具をあわてて空き箱の中に隠す。
「よう、ドザえもん。なに泣きそうな顔してるんだあ。そんなときは俺の歌を
聞くと元気になるんだ。嘘じゃないぜ」 
 近づいてきた強田猛が歌い出す。強田猛、通称はシャイアン。彼の歌声は80
ホンの騒音ですら遮断する耳栓シールをかろうじてでも突破し、シールの機能
を無効化した。
「さすが魔界星の魔物を歌声でやっつけるだけはある……」
 ドザえもんは頭を抱えながら、無理矢理笑顔をつくった。
「そんなに褒めるなよ〜照れるじゃないか。そうだ、俺の歌を理解してくれて
いるドザえもんにお願いがあるんだ」
「いいよ。なんでも言っておくれ」
「さすが、心の友よ。俺の歌声の素晴らしさを世界中の人間に分かってもらえ
るような道具を貸してくれよ」
「それはダメだよ。未来の道具はおもちゃじゃないんだ」
「あっ、そう。――でも俺知ってるんだ。ドザえもんの弱点」
 シャイアンがドザえもんの赤い珠がついた尻尾を引っ張る。
「ギュルギュルギュル」
 ドザえもんからきしむような異音が響き、動きが停止する。
「ふふふ、俺にはこのポケットさえあればいいんだよ」
 シャイアンがドザえもんの腹部からポケットを剥がし、自分の服に貼り付け
る。右手でポケットの中をまさぐり、電話ボックスを取り出した。
「知ってるぞ、これを使えばバッチリさ」
 シャイアンが電話ボックスの扉を開き、中に入る。扉を閉めてから受話器を
上げ、「もしもし」といった。向こう側から「もしもし」と返答がくる。シャ
イアンが「もしもし」というと、向こうも同じ事を言う。それを7度繰り返す。
 もしもしボックス!
 気がついたシャイアンの鉄拳で電話ボックスは破壊された。
「俺としたことが……これよ、これ。もちもボックス〜」
 ポケットから取り出したのは、先ほどと同型の電話ボックスだった。ただガ
ラスのところに「もちもボックス」とシールが貼ってある点が異なった。
 気をとりなおして、受話器をとり「もしもし」と言う。「もちもち」という
返答がきてから「もちも、俺の歌を聴いて〜俺の歌声でキャアキャア言われた
い」と、シャイアンがいった。
 ボックスを出ると静香が空き地に顔を見せた。
「これからバイオリン教室なの」と静香。
「それはよかったね〜。俺の歌を聴いてくれ〜。お〜れは、シャイアン。ガキ
大将! 天下無双の男だぜ〜」
 シャイアンは気持ちよさそうに声を張り上げる。
 静香は「キャア! キャア!」と、言いながら空き地から駆けだした。
「おいらが〜歌えばああ〜あの子もこの子も〜ふりかえるう〜」
 シャイアンは歌いながら追いかけていく。すれ違い様、シャイアンの歌声を
きいたカミナリさんも「キャア、キャア」叫びながら逃げていく。
「違う〜。キャアの意味が違うだろ〜」
 普通に喋りたくても、歌ってしまう。スーパーの前で出会ったスネ丸は「キ
ャアキャア」言ったので、シャイアンに殴られた。スネ丸の目に大きな涙がひ
とつぶ浮かぶ。かすんだ視線の先に小さくなったシャイアンの背中がうつる。
「シャイアンのは音楽じゃないだもん。楽しい音が音楽であって、苦しい音は
……音が苦だもんなあ……にてるなあ。あはははっ」
 スネ丸は震える声で笑ってから、大きく溜息をついた。
 春のうららかな陽気も群れなす雲に打ち消され、強い風が吹き始める。 
 シャイアンが空き地に戻ってきたとき、怒りで顔が赤く燃えていた。
「ドザえも〜ん。道具の恨みは〜道具で晴らさせてもらうぜぇ〜覚悟〜しろよ」
 シャイアンは指を組み、ポキポキと鳴らす。ドザえもんは停止したまま身動
きひとつしない。
「先ずは役立たずの道具を壊させて〜もらう〜ぜ〜」
 といって、もちもボックスを破壊する。シャイアンの顔に黒ずんだ笑顔が浮
かぶ。
「じゃ〜ん。万能ペンキ剥がし液〜」
 ポケットから出した瓶の液体をドザえもんの身体にかけると、表面のコーテ
ィングがとけ青い色がはげ落ちた。
「そして〜どこでも扉〜」
 ポスターのような扉の絵を塀に貼り、扉を開く。その向こう側は海だった。
 シャイアンは、ドザえもんを海に放り投げる。ドザえもんのからだが沈んで
いく。
「これで錆びて使い物に〜ならない〜でしょう〜。サヨウナラ〜ドザえもん〜」
 歌を聴いた野良犬が「キャアン、キャアン」と、吠えながら逃げていく。
「やっぱり道具は〜使い〜よ〜う〜」
 と、シャイアンが歌ったとき、ドザえもんが最後に出した道具が作動した。
 その道具の名前は「地球はかいばくだん」だった。
 
「終わり」





前のメッセージ 次のメッセージ 
「●短編」一覧 パパの作品
修正・削除する コメントを書く 


オプション検索 利用者登録 アドレス・ハンドル変更
TOP PAGE