#590/598 ●長編
★タイトル (sab ) 22/11/11 11:39 (299)
あるトラニーチェイサーの死1 朝霧三郎
★内容
(作者コメント。未校正です。使い回しが多いです)。
登場人物一覧
小川浩二 警備員。佐藤浩市似。30歳。
大川 警備員。柄本時生似。32歳。アニメオタク。
蛯原 マンション管理員。立川志の輔似。60歳。
北野 警備員。62歳。
石松美也子 コンシェルジュ。藤谷美和子似。28歳。趣味はサーフィン。
小林達也 池袋署の巡査部長。江口洋介似。35歳。
加藤凡平 池袋署の巡査部長。高木ブー似。33歳。
佐伯明子 池袋署の巡査。渡辺満里奈似。私立大学(院)で心理学を専攻していた。
25歳。
アリス。ニューハーフ風俗のシーメール。目元が蒼井優似。20歳。
マキコ。ニューハーフ風俗の受け付け。マツコ・デラックス似。28歳。
【本編スタート】
小川が警備員をやっている池袋のマンションは、24時間友人管理だのコンシェ
ルジュが居るだのと、マンション管理のクオリティの高さを売りにしていたが、中
身的には、去年竣工したばかりで、管理会社は施主の子会社(本通リビング)の更
に下請けの清掃会社に丸投げされていて、管理員もコンシェルジュも、その清掃会
社がかき集めてきたパートにすぎなかった。
小川ら24時間警備員も、マンションの新築工事の時に交通誘導警備をやってい
た人間が、そのままスライドしてきてマンション警備員になっただけで、施設警備
に関しては全くの素人で、火災報知器の消し方も防犯カメラのデータの巻き戻し方
も知らなかった。
ただ、下請けの清掃会社に言われた通り、定時巡回をする程度だった。
もっとも、夜中の2時、丑三つ時に、自走式駐車場の壁面緑化の為に、駐車場の
壁面のU字溝に仕込まれている砂漠でも枯れない草、が入ったビニール袋につなが
ったビニールチューブ、に水を流す為に、駐車場一階の水道の元栓を開けに行かな
ければならないという面倒な作業もあったのだが。
しかし、このバカバカしい水やりも、居住者の車は濡らすわ手間ばかりかかるわ
で、撤去する事になっていて、昨日もその足場を業者が来て組んで行ったのだった
。しかし、安普請の足場の為か、すぐに一回崩れて、再度組み直したものの、今は
、赤いカラーコーンとトラ柄のバーで、立ち入り禁止になっていた。
今宵も、小川が、このバカバカしい水やりが終わって、管理室に戻ってくると、
時刻は3時だった。キンコンと管理室内のアイホンのチャイムが鳴った。防犯カメ
ラのモニタを見ると、新聞屋だった。モニタの隣にある盤の中にあるスイッチを押
して正面玄関の自動ドアを開けて入れてやる。新聞屋は朝日、読売、産経、毎日と
4人通さなければならなかった。
新聞屋を通してしまうと、やっと人心地ついた感じで、小川は管理員室の真ん中
に置いてあるデスクの椅子に座ると、がーっとのびをした。
(これで朝までは何もないだろう)
考えてみると、深夜の管理員室はまったりする。
家電量販店並の明るさ。右手に玄関ポーチに続く鉄扉、左手にカウンターに続く
鉄扉がある。正面に監視カメラのモニタや防災盤があって、そっち側からファンの
音が響いてくる。後ろにはNTTの盤が並んでいる。右側にホワイトボードがあっ
て1ケ月分のスケジュールが書かれている。左奥がキッチンになっていて、冷蔵庫
だの電子レンジだのがあるのだが、パーテーションで隠されていて見えない。
デスクの上にはネットの使えるPCが1台あった。
小川は、加熱式たばこをふかしながらyoutubeで「ゆず」などを再生した。
(まったりするわー)
突然「キンコン、キンコン、キンコーン」とアイホンのチャイムが鳴り響いた。
監視カメラのモニタで見ると誰かがエントランスの自動ドアに寄りかかっている。
フロント側から出て行って、自動ドアの内側に立つと、ドアが開いた。
「いやー、酔っぱらっちゃって、鍵をどっかにやっちゃったんだよ。ナルソックを
呼んでくんない? マスターキーみたいなの、持ってないの?」スーツを着た酔っ
払いが酒臭い息を吹きかけてきた。
「管理室の壁にナルソックしか開けられないキーボックスが埋め込んであるんです
よ」
「それはお前らは開けられないの?」
「そりゃあ、ホームセキュリティーの契約をしているのは、居住者様とナルソック
ですから」
「じゃあ、お前はなんだよ。ただのカカシか。カラスでも追っ払う」
「でも、ナルソックだって、管理室に入るには私らが付いていないと駄目なんです
けどね」
「なに言っていやがんだ。いいから早くナルソック呼べ」
言うと、フロントのカウンターにもたれかかってタバコを吸いだした。
10分でナルソックが到着すると、免許証で本人確認を行う。
小川はナルソックを管理室に入れてやった。
ナルソック隊員は、ホワイトボードの後ろの壁に埋め込まれたキーボックスの前
に行くと、磁気カードをかざした。ブーっと音がして、赤いランプが点滅する。素
早くキーボックスの扉を開けて、鍵を取り出すと、扉を閉める。もう一回ブーっと
音がして、ガシャンと扉が施錠される音がした。
ナルソック隊員と酔っ払いサラリーマンを、二重オートロックの2つめを通して
やる。
「すみませんねえ、酔っぱらっちゃって」と、酔っ払いも、ナルソックには全然態
度が違っていた。
ほんの10分でナルソックが帰ってきた。
「あの居住者、鍵、持ってましたよ」
「あ、そう。じゃあ、眠いからさっさと帰って」
「ちょっとすみません、作業がありますんで」と言うとナルソック隊員は、なにや
ら作業を開始した。
使用した合鍵の先端部をビニールで覆い、その上を10桁の数字の書かれたシー
ルで封印し、シールの半券を封印台帳に貼り付けてアタッシュケースにしまう。封
印された合鍵は、再度キーボックスを磁気カードで開けると、そこにしまう。
そういう作業の間にも、例えばアタッシュケースを開ける為に腰に付いているキ
ーホルダーに手を伸ばすなど、隊員が体をよじっただけで、防弾チョッキの様なダ
ウンベストにぶら下がっている特殊警棒だの無線機だのががさがさ音を立てるのだ
が、(あれは何か「ロボコップ」のオムニ社の隊員の様で、クールじゃないか)。
小川も紺の上下の制服を着ているが、どっちかというと菜っ葉服っぽい。
小川の眼差しは羨望の眼差しに変わっていた。
「お前なんてどうせナルソックの正社員じゃないんだろ」と小川は言った。
「そりゃあ、雇用形態は色々ありますけれども、ナルソックの隊員です」
「どうせどっかのアパートで待機していて連絡があると出向いてくるんだろう。つ
ーか、俺の事、キーボックスも開けられないパートだと思ってバカにしてない?」
「していませんよぉ」
「しているよ。ぜってー。見下している」
などというどうでもいいやりとりがあって、ナルソック隊員は引き上げて行った。
結局その日は朝まで一睡も出来なかった。
8時になって次の24時間警備員の福山が出勤してきた。
着くなり、警備員にあてがわれている一番上の引き出しから太田胃散を出すと一
匙口に含んで、キッチンコーナーに駆け込む。これは、夜勤明けと同時にアニメを
見ながら次の出勤まで酒を飲むという生活をしているので二日酔いなのであった。
「福ちゃん、着替えたら見せたいものがあるから来て」
「んー」と寝ぼけた顔でこっちを見ながら、福山は、フロント側のドアから出て行
った。ラウンジから裏口に続く廊下の途中に半地下のボイラー室があって、そこが
警備員の更衣室になっていた。といっても、プラの収納ボックスが一個ずつあるだ
けだが。
福山が、警備服風作業着に着替えてくると、小川は彼を連れて玄関側の鉄扉から
ポーチに出た。
空模様はところどころ青空が透けて見えるものの全体としては雨雲に覆われてい
た。
「もう梅雨だな」と小川。
「うん」
左に旋回して、ゴミ箱置き場と自走式駐車場の入り口のシャッターを見やりなが
ら、裏エントランスに通じる通路に入る。10メートル程度、駐輪ラックが設置し
てあって、その先は駐車場の壁面が露出していた。壁面緑化の効果は全く不十分で
、砂漠でも枯れない草は、あちこちぼぞぼぞと生えている程度だった。壁面には足
場が組んであって、下部には赤いカラーコーンとトラ柄のバーがあって、立ち入り
禁止になっている。
「福ちゃん、ここ絶対に入らないでよ。一回倒壊して作業員がケガしているから。
又何時崩れてくるか分からないからね」
「うん」
「分かったのかよ」
「分かったよ。でも、居住者は大丈夫なの?」
「だから、このトラ柄のバーで立ち入り禁止になっているんだよ。まあ、すぐに、
あの緑化の草が撤去になって、足場もなくなるけれどもな」
「あの草なくなるんだ」
「ああ」
「じゃあもう水やりは無くなるね」
「ああ、仕事が減っていいや。しかしその前に」と言うと小川は足場に手をかけた
。ぐらついて、カンカンと鉄パイプのぶつかる音が聞こえてくる。「俺が、足場の
下敷きになって死ぬかもな」
「何で?」
「俺、死んでもいいやと思ってんだよ。お前、そう思う事ない?」
「ある訳ないじゃん」
「俺は時々思うよ。殉職するのは恰好いいとか。ずーっと「太陽にほえろ!」のマカ
ロニの殉職の回を見ていたけど、夕べナルソックがきて思ったんだけど、オムニ社
のロボコップみたいに、こういう鉄骨の下敷きになって死ぬのも恰好いいかなあと
思って。つーか「ロボコップ」に似たシーンがあるんだよ」
「止めてくれよ。やるんだったら、俺のいない時にやってくれよ」
「まぁ、お前には迷惑かけないから」
管理室に帰ると、コンシェルジュの石松が3人前コーヒーを入れていた。福山の
と小川のと自分のと。
主任管理員のは入れてあげない。意地悪からか。それとも、そもそもコーヒーな
んて自分で勝手に入れるものだから、たまたま福山と小川が居るから一緒に入れた
だけで、主任管理員のはまだ出勤していないから入れないだけか。
(でも、何で俺にも入れてくれるんだろう。無視している癖に。福山と二人分じゃ
あ露骨すぎるからか)
石松は、コーヒーをスチールデスクの上に置きながら「おはようございます」と
こっちに微笑してきた。
しかしあの微笑は福山にであって自分は無視されている、と小川は思っていた。
(今日こそシカトの動かぬ証拠を掴んでやる)
3人でコーヒーを飲むと、なんとなく世間話をする感じになった。
小川は見えない様に、手で隠しつつ、Apple WatchのボイスメモAppを開いてボタ
ンをタップした。
「だんだん梅雨っぽくなってきたけれども、洗濯とかどうしてます?」と小川。
「福山さんは、洗濯、どうしているの?」と石松。
「部屋干しだな」
「IKKOが「おったまげー」とか言っているのが凄いらしいよ。でも梅雨なんてすぐ
終わるよ。すぐに夏本番だよ。石松さん、サーフィンとか行くの?」
「福山さんは、オタクの夏休みは?」
「夏はコミケだよ」
「コミケに似ているけれども、レインボープライドっていうLGBTのイベントが
あって、もうすぐ終わるって、ニュースでやっていた」と小川。
「「マツコの知らない世界」で、オタクが経済支えてるって言っていたわよ。「ら
き☆すた」の聖地巡礼で経済効果30億円とか」と石松。
「でも、オタクが聖地に殺到するのって、ウザいって言われているんだよね」と福
山。
「旅行だって、LGBTの市場規模は20兆円とか言われているんだよね。LGB
Tにフレンドリーになれば、LGBTインバウンドが増えるよ」と小川。
「アキバのオタクツアーのインバウンドがすごいんですってね」と石松。
「あんまりグローバル化されても荒らされちゃうよ」と福山。
「そんな事ないよ。サンフランシスコみたいにオープンになればいいんだよ。あそ
ここそLGBTの聖地だからなあ。♪夏には愛の集いがあるでしょう…」
「夏になったら、コミケだものね。コミケに行く人って、みんな単身者なの? 家
族連れもいるの?」
「コミケなんてみんな独り者だよ」
「最近、Eテレの「バリバラ」でLGBTが好きな人と好きな場所で暮らしたいと
かやっていたけれども、そういう系の番組が多いよ」と小川。
「福山さんは家族はいらないの? 生涯未婚だと67歳で死んじゃうんだよ。やっ
ぱちゃんと家族をもった方がいいんじゃないの? 今度紹介してあげようか。ねえ
、どう? その気ない?」
ここまで話したところで、主任管理員の蛯原が登場した。
真っ黒に日焼けしていて、肝臓でも悪いんじゃないかと思えるぐらいだ。
髪の毛がイノシシ並に濃くて、自分でカットするから、毛足が豚毛歯ブラシみた
いになっている。
Yシャツのボタンを3つぐらい外して、ネクタイをぶら下げて、ニットのベスト
を全開にして、開店前のスナックのマスターみたいないでたち。
まずデスクにスマホとタバコを置く。俺の領土、みたいに。
石松と福山は監視カメラのモニタの下へ、小川はフロントへ、と、蜘蛛の子を散
らす様に離れて行った。
蛯原は、キッチンコーナーでインスタントコーヒーを入れると持ってきて、タバ
コの横にどんと置いた。
(こぼさないかなあ)と小川は思った。(こぼせばいいのに。そうすればPCの裏
から吸い込んでおシャカになる)
蛯原はスチールデスクに半けつを乗せると、ばさっと新聞を広げた。
(ありゃ何気取りだ)カウンターから眺めつつ小川は思う。(デカ部屋の刑事コジ
ャックみたいな積もり? しかもタンソクだからつま先しか床に付いていないし)
「早く引き継ぎ、やってよ」と福山。
「じゃ、やっちゃいましょう」ネクタイを締めながら蛯原が集合を掛ける。
「おはようございます」と蛯原。「じゃあ、まず、コンシェルジュの石松さん、何
かありますか」
「何もありませーん」
「じゃあ、警備員の小川さんは」
「何もありませーん」
「じゃあ、私の方から。まず大ニュース。本通リビングのフロントから連絡があっ
て、管理会社が変わるかも知れないって」
「えっ。じゃあ俺らは」と福山
「まあまあ、経緯から聞いて。
管理組合に山田というマンション管理士が入り込んでいたろう。
あれが、管理会社を変えれば管理費が70%に抑えられるから、かわりに節約で
きた分の1年分の半分をよこせ、という提案をしていて、それを管理組合がのんだ
らしいんだよね。
それで、多分、本通リビングから四菱地所コミュニティというところに変わるら
しい。
もっとも、四菱地所コミュニティだって正社員に管理員やコンシェルジュをやら
せる訳じゃないので、どうせ派遣社員を採用するなら、今の主任管理員とコンシェ
ルジュ、私と石松さんを採用するかも、っていう話です」
「警備員は?」と福山。
「それが、四菱地所コミュニティは西武系の警備会社を使っているっていうんだよ
ねえ。だから、四菱地所コミュニティの口利きで、その西武系の警備会社のパート
にでもなれれば、警備員も雇ってもらえるかも」
「ずりーな。管理員とコンシェルジュだけスライドして、警備員はお払い箱かよ」
と福山。
「だから、警備員もスライドして採用されるかも、って」
「どうだか」
「とにかく、近々連絡があるって言っていたよ」
「ふん。又交通整理のバイトかなあ。あれ、夏場にやるとゴキブリみたいに焼けち
ゃうんだよなあ」
小川がボイラー室に着替えに行くと、これから1回目の定期巡回に行く福山もつ
いてきた。
「やっぱり、石松はシカトこいていたな。今日は動かぬ証拠をつかんだから、お前
にも聞かせてやるよ」
左腕を付き出してApple Watchを袖から露出させると、ボイスメモAppを操作して
再生する。
「「だんだん梅雨っぽくなってきたけれども、洗濯とかどうしてます?」と俺が問
いかけているだろう。だけれども無視してお前に、
「福山さんは、洗濯、どうしているの?」と聞く。
「IKKOが「おったまげー」とか言っているのが凄いらしいよ。でも梅雨なんてすぐ
終わるよ。すぐに夏本番だよ。石松さん、サーフィンとか行くの?」
「福山さんは、オタクの夏休みは?」
な。俺が石松に問いかけているのに、シカトして、お前に話しかけているだろう」
「そんなの偶然だよ」
「偶然じゃない。」
更に再生。
「「サンフランシスコみたいにオープンになればいいんだよ。あそここそLGBT
の聖地だからなあ。♪夏には愛の集いがあるでしょう…」
「夏になったら、コミケだものね。コミケに行く人って、みんな単身者なの? 家
族連れもいるの?」
ほらな、俺が石松に問いかけているのにシカトしてお前に言うだろう」
「それはお前が、LGBTとか言うからだよ。そんなのセクハラだよ」
「あー、俺、LGBTになっちゃおうかなあ。そうすれば、職場での人間関係も、
性的マイノリティの悩みであって、オスの悩みじゃないから、女々しくはない感じ
にならない?」
「へぇ?」
「お前、西武系の警備会社の話はどうするんだ」
「俺は、西武になるなら行くよ。ナルソックに威張れるかも知れないじゃない」
「俺は嫌だね。高校の時に居たんだよ、西武なんとか台に住んでいて、親が西武線
で西武の会社に通っていて、買い物は西武で、野球も西武、休日の行楽は西武園、
みたいなやつ。何でそこまで社畜にならないといけないのかって思っていたけど。
俺は実家が西武ひばりヶ丘だから、そんなのが多くてね。
あー、俺、警察官になればよかったな。桜田門なら西武より格上だろう?」
「分からないよ。でも、山口県の方には民間委託の刑務所もあるっていうし、その
内ナルソックとかが警察を兼ねるんじゃないの? オムニ社みたいに」
「自衛隊はどうなんだよ。ワグネルとかになるんじゃないの」
「もう除隊したし」
「自衛隊にはLGBTっているのかよ」
「いないよ」
「韓国の軍隊でトランスジェンダーが自殺したよな。あれは可愛そうだと思ったよ
。泣きながら記者会見する彼女を見て。それで思ったんだけど、ナショナリズムよ
りもLGBTの連帯の方が優先されるんだなーって。普段嫌韓、ネトウヨでも、L
GBTなら連帯出来るんだよ。つまり、トラニーになれば、もう、石松は勿論、西
武とも戦わなくていいってことだ。だって韓国と戦わなくていいんだから」
「トラニー?」
「お前、トラニーって知らないの?。女より可愛いんだぜ」
小川はスマホ取り出すと、porntubeで、Ellahollywood(エラハリウッド)の動画
を見せてやった。
「すげーだろう。上半身はエマワトソン、そして下半身には白っぽいペニスが生え
ていて、いいと思わない?」
「…」
「お前には無理かもな。自衛隊員だものな。
あー。いっそのこと、女性ホルモンを飲むかな。トラニーになればもう戦わなく
ていいから。
でも、これトラニーに言うとすげー怒るんだよな。ホルモンを遊びに使うなって」