AWC 南総里見八犬伝本文外資料1


        
#105/598 ●長編
★タイトル (hir     )  02/12/04  01:25  (446)
南総里見八犬伝本文外資料1
★内容
 本資料の作成に当たっては、杏庫之介さんから多大な御教示を戴いた。底本は、岩波
文庫新版である。
 場所・回・回タイトル・挿絵タイトル・登場人物名(挿絵に表記分)の順。漢文の場
合は、原文と登場人物名の間に書き下し文を附した。★が筆者註、▲は表記外漢字、■
は伏せ字、●は不明部分である。

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八犬士伝序
初里見氏之興於安房也徳誼以率衆英略以摧堅平呑二総伝之于十世威服八州良為百将冠当
是時有勇臣八人各以犬為姓因称之八犬士雖其賢不如虞舜八元忠魂義胆宜与楠家八臣同年
談也惜哉載筆者希於当時唯坊闌R記及槙氏字考僅足識其姓名至今無由見其顛末予嘗憾之
敢欲攻残珪自是常畋猟旧記不已然猶無有考据一日低迷思寝▲(黙のレンガが目)▲(目
に徳)之際有脚自南総来語次及八犬士事実其説与軍記所伝者不同敲之則曰曾出于里老口
碑敢請主人識之予曰諾吾将広異聞客喜而退予送之于柴門下有臥狗在門傍予忙乎踏其尾苦
声倏発于足下愕然覚来則南柯一夢也回頭覧四下茅茨無客柴門無狗吠言熟〃思客談雖夢寐
不可捨且録之既而忘失過半莫奈之何竊取唐山故事撮合以綴之如源礼部弁竜根于王丹麓竜
経如霊鴿伝書於滝城擬張九齢飛奴如伏姫嫁八房倣高辛氏以其女妻槃瓠其他不遑毛挙数月
而草五巻僅述其濫觴未創八士列伝雖然書肆豪奪登諸梨棗刻成又乞其書名予漫然不敢辞即
以八犬士伝命之
  文化十一年甲戌秋九月十九日 洗筆於著作堂下紫鴦池
                              蓑笠陳人解撰
はじめ里見氏の安房に興るや、徳誼を以て衆を率い、英略を以て堅を摧き、二総を平呑
して之(これ)を十世に伝う。八州を威服して、よく百将の冠たり。この時に当たりて
勇臣八人あり。おのおの犬を以て姓とす。よりて之を八犬士と称す。その賢は虞舜の八
元に如かずといえども、忠魂義胆は、よろしく楠家の八臣と年を同じうして談ずべし。
惜しいかな、筆に載せる者、当時において希(すくな)し。ただ坊闌R記および槙氏が
字考の、僅かにその姓名を識るに足る。今に至りて、その顛末を見る由なし。予、かつ
て之を憾(うら)む。あえて残珪を攻めんとす。これより常に旧記を畋猟して已(や)
まず。しかるもなお、考据あるはなし。一日低迷して寝を思う。▲(黙のレンガが目)
▲(目に徳)の際、客の南総より来るあり。語を次ぎて八犬士の事実に及ぶ。その説は
軍記に伝うる所と同じからず。之を敲けば則ち曰く、かつて里老の口碑に出たり。あえ
て請う、主人が之を識(しる)せよ。予曰く、諾と。吾まさに異聞を広げんとす。客は
喜びて退く。予、之を柴門の下に送る。臥狗ありて門傍に在り。予が忙乎として、その
尾を踏めば、苦声倏(たちま)ち足下に発(おこ)る。愕然として覚め来れば則ち、南
柯の一夢なり。頭を回して四下(あたり)を覧れば、茅茨に客なく、柴門に狗吠なし。
ここに熟々(つくづく)客の談を思えば、夢寐といえども捨つべからず。まさに之を録
せんとす。既にして忘失するもの半ばに過ぐ。之をいかんせんとするに、いかんともせ
んすべなし。竊(ひそか)に唐山の故事を取りて、撮合し以て之を綴る。源礼部が竜を
弁ずるがごときは、王丹麓が竜経に根(もとづ)く。霊鴿の書を滝城に伝うるがごとき
は、張九齢の飛奴に擬す。伏姫の八房に嫁するがごときは、高辛氏の以てその女を槃瓠
に妻するに倣えり。その他にも毛挙に遑あらず。数月にして五巻を草す。僅かにその濫
觴を述べて、いまだ八士列伝を創せず。しかりといえども書肆は豪奪して諸を梨棗に登
す。刻成りてまた、その書名を乞う。予は漫然として、あえて辞せず。即ち八犬士伝を
以て之に命(なづ)く。
  文化十一年甲戌秋九月十九日 筆を著作堂下の紫鴦池に洗う
                            蓑笠陳人解きて撰す

★面倒だから原則として序には註を付けない。ただ今回は、特別に「虞舜八元」を取り
上げる。虞舜は古代中国の伝説的な帝王だ。「史記」の「五帝本紀」巻一に、「黄帝居
軒轅之丘而娶於西陵之女是為▲女に螺のツクリ/祖▲女に螺のツクリ/祖黄帝正妃生二
子其後皆有天下其一曰玄囂是為青陽降居江水其二曰昌意降居若水昌意娶蜀山氏女曰昌僕
生高陽有聖徳焉帝崩葬橋山孫昌意之子高陽立是為帝▲瑞のツクリにオオガイ/▲王にオ
オガイ/也……中略……而玄囂之孫高辛立是為帝▲學の子が告/帝▲學の子が告/者高
辛者黄帝之曾孫也……中略……高辛生而神霊自言其名施利物不於其身聡以知遠明以察微
順天之義知民之急仁而信修身而天下服取地之財而節用之撫教万民而利誨之暦月日而迎送
之明鬼神而敬事之……中略……而摯代立帝摯立不善崩而弟放立是為帝尭……中略……
富而不驕賢而不舒黄収純衣▲丹に影のツクリ/車乗白馬能明馴徳……中略……尭曰蹉四
獄朕在位七十載汝能庸命践朕位獄応曰鄙徳忝帝位尭曰悉挙舅戚及疎遠隠匿者衆皆言於尭
曰有矜在民間曰虞舜……中略……舜受終於文祖文祖者尭大祖也……中略……尭知子丹朱
之不肖……中略……尭崩三年之喪畢舜譲辟丹朱於南河之南諸侯朝観者不之丹朱而之舜獄
訟者不之丹朱而之舜謳歌者不謳歌丹朱而謳歌舜舜曰天也夫而後之中国践天子位焉是為帝
舜虞舜者名曰重華……中略……於是尭乃試舜五典百官皆治昔高陽氏才子八人世得其利謂
之八▲リッシンベンに豈/高辛氏有才子八人世謂之八元〈賈逵曰元善也索隠曰左伝高辛
氏有才子八人伯旧仲堪叔献季仲伯虎仲熊叔豹季狸〉此十六族者世済其美不隕其名至於尭
尭未能挙舜挙八▲リッシンベンに豈/使主后土以揆百事莫不時序挙八元使布五教于四
方」。長々と引用したけれども、「八元」が登場する条は最後の数行だけだ。モノには
文脈というものがあるから、こうなってしまった。ご容赦いただきたい。要するに、傑
物であった帝尭は不肖の息子に位を譲らずに民間から舜を起用した。舜は一旦は承知す
るものの、いざ帝位を嗣ぐべき時が来ると尭の息子に位を譲ってしまう。しかし人々は
舜のもとに集まり、尭の息子を見放した。舜は漸く天命を悟って、帝位に就くを潔くす
る。帝位への抜擢に先立ち尭は、舜の才能を確認するために見習いとして官を務めさせ
た。このとき舜は優れた十六人の人物を任用した。うち八人が高辛氏の子である「八
元」だった。八元の職掌は「布五教于四方」とあるが、別に宣教師になったり学校の先
生になったりしたのではあるまい。他の八人が「主后土以揆百事」であるから徴税など
の実務を担当したと思われるので、一方の八元は典礼や朝廷内の各種調整を行ったか。
八犬伝流に解釈すれば、「婦幼のねふりを覚す」ことが務めであったか。また、尭の治
世態度を述べた部分で自分は贅沢をせず倹約したと述べているが、それを「白馬に乗ら
なかった」ことなどで表現している。白馬に乗ることを、驕慢の典型としているのだ。
八犬伝序盤で、白馬は「白妙の人喰い馬」山下定包の驕慢を示す。そして何より興味深
いことは、八元が高辛氏の子供たちであった点だ。八元の父・高辛氏は、敵に攻めら苦
し紛れに口走った「敵将を討ち取った者を婿とする」との約束を果たさざるを得ず、遂
に娘を犬に娶せた帝である、とは此の序末尾近くで明かされている。勿論、里見義実を
高辛氏とイコールだと言うのではない。義実はもとより八犬伝の登場人物は多種多様な
過去の物語を背負っている。多面体たる義実にとって高辛氏は、一側面に過ぎない。因
みに高/辛/氏に擬せられた義実は此の序文中で源礼部と表現されており、礼部は治部
省の唐名だけれども、史料中で里見義実は刑部なんだが、太平記なんかの見出しに現れ
る治部大輔は、既に「MockingBird」で書いたように足利高氏なんだけれど
も、まぁ、此処では深く考えないようにしよう。ところで筆者の手元にある「史記」
は、上総鶴牧藩校修来館が作った増訂史記評林の影印本だから〈……〉で示した註は、
其れに拠る

世にいふ里見の八犬士は犬山道節{乳名道松}犬塚信乃{乳名志之}犬坂上野{乳名毛
野}犬飼見八{乳名玄吉}犬川荘佐犬江親兵衛{乳名真平}犬村大角{乳名角太郎}犬
田▲(サンズイに文)吾{乳名小文吾}則是なり。その名軍記に粗見えて本貫終始を審
にせず。いと惜むべき事ならずや。よりて唐山高辛氏の皇女槃瓠{犬の名なり}に嫁し
たる故事に倣ふて個小説を作設因を推果を説て婦幼のねふりを覚すものなり。
肇輯五巻は里見氏の安房に起れるよしを演亦是唐山演義の書その趣に擬したれば軍記と
大同小異あり。且狂言綺語をもてし或は俗語俚諺をまじへいと烏呼しげに綴れるは固よ
り翫物なればなり。
この書第八回堀内蔵人貞行が犬懸の里に雛狗を獲たる条より第十回義実の息女伏姫が富
山の奥に入る条までこれ全体の発端なり。しかれども首尾具足して全体を闕ことなし。
二輯三輯に及ては八人ンおのおの列伝あり。来ん春毎に嗣出して全本になさんこと両三
年の程になん。
                                  蓑笠陳人再
識

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第一輯口絵 
浪中得上龍門去 不歎江河歳月深 
浪中、龍門を上り去るを得。歎ぜず、江河歳月の深きを。 
里見治部大輔義実 

からうすに つきおしてるや なにわえの はたれもからし かにかくによは 著作堂 
金碗八郎孝吉 

★万葉集巻第十五由縁有る雑歌「蟹のために痛みを述べて作る」(角川文庫版三九〇
八。従来三八八六)を元にしている。天皇の宴会に呼び出された蟹が宮に行き縛り上げ
られ、楡の葉を搗いたものと塩汁を塗りたくられ目にも擦り込まれ、美味い旨いと食わ
れる様を蟹の側から歌ったものだ。万葉集には此の手の歌も多い。幼稚純朴な笑いが其
処にあったか、何かの事件の被害者側の気持ちを蟹に仮託して代弁したものだととるか
は、読者の精神状態に依る。いつも鬱屈している筆者は後者だ。馬琴も自分の歌で下の
句、「世知辛いものだ、色々あって世の中は」と換えて歌っているから、後者の立場だ
ろう。また、第四回、全身漆で爛れた孝吉に蟹の汁を塗り服用させ、治癒に成功する里
見義実のエピソードを暗示してもいる

周公恐懼流言日 王莽謙恭下士時 若使当年身便死 至今真偽有誰知 白居易読史詩 
周公、流言を恐懼するの日。王莽、下士に謙恭する時。もし当年にして身、便ち死なし
めば、今に至り、真偽を誰か知る有り。 
山下柵左衛門尉定包・神余長挟介光弘が嬖妾玉梓 

何事をおもひけりともしられしな ゑミのうちにもかたなやハなき 衣笠内府 
堀内蔵人貞行・朴平・無垢三・杉倉木曽介氏元・安西三郎大夫景連・麻呂小五郎信時 

★夫木和歌抄巻第三十二雑部十四の一五一〇五にあり。ただし新撰和歌六帖第五帖一八
二六「なにごとをおもひけりともしられしなゑみのうちにもかたなやはなき」。ちなみ
に本稿で歌の後に附記している番号は、特に断らない限り角川の国歌大鑑に拠る。衣笠
内府は藤原定家の門弟である衣笠家良。藤原氏近衛流。正二位大納言忠良の男で母は大
納言藤原定能女。大納言基良の弟に当たる。新撰和歌六帖第五帖の選者の一人 
深宮飽食恣▲(ケモノヘンに争)獰 臥毯眠氈慣不驚 却被捲簾人放出 宜男花下吠新
晴 元貢性之詩 
深宮に飽食の▲(ケモノヘンに争)獰を恣にす。毯に臥し氈に眠り、慣れて驚かず。却
って簾を捲かれ、人に放り出さる。わすれ草のもと、新晴に吠ゆる。 
伏姫・里見義実の愛犬八房 

★読本「七・七バランス」シリーズで述べたように、挿絵は本文にない隠微な情報を隠
し持っている。八犬伝の本文外で馬琴が言っているように、絵師には女性とあれば美人
に描く習性があるらしい。また、絵師によって理想とする美人は微妙に差があるもの
の、総べて〈引目鉤鼻〉の伝統から大きくは逸脱していない。八犬伝の挿絵も絵師によ
って女性の顔立ちは異なるが、大雑把な年齢階層による類型化こそあれ、個々人の描き
分けは顕著ではない。近世後期、肖像画こそ、かなり写実的になってはいたが、挿絵に
就いては、絵師の裡なる女性像に強く拘束されるものであるからして、仕方のないこと
だ。例えば現在の漫画でも、さほど顕著に個々の登場人物を描き分けてはいないであろ
う。事情は同じである。しかしさて、着物の模様となれば、より描き分けは容易だ。牡
丹・桜・梅・麻花・青海波・千鳥格子などなど、八犬伝の挿絵に登場する文様は、かな
り詳細かつ多様に描かれている。筆者の趣味は写真なのだが、カラー写真なら色で誤魔
化せるので人の目を惹くことがより容易なのだが、黒白写真となれば構図/文様センス
がモノを言う。一色刷が原則である挿絵では、構図と文様でこそ、読者の目を楽しませ
なければならない。八犬伝挿絵でも、文様は等閑視できなかったであろう。まるで歌舞
伎役者の如く趣向を凝らした衣装を纏う八犬伝の登場人物たちだが、特に女性に注目し
たい。筆者は女好きなのである。さて、第一輯口絵に於いて指摘せねばならぬ事は、伏
姫・信乃・玉梓が、共に桜模様の衣装を身に着けている点だ。馬琴自ら、伏姫と信乃が
共に犬に乗る場面は、両者の繋がりを示すものだと語っている。二人には、共通点があ
る。此の事を口絵は、着物の模様で示していると考えられる。ならば、伏姫と玉梓が共
に桜模様の着物を身に着けていることは、二人が深い関係にあることを示していなけれ
ばならない。但し、二枚の着物は、対称的でもある。即ち、伏姫の着物は白く、玉梓の
着物は薄墨をかけて黒くなっている。共に桜模様でありながら、白/陽と黒/陰なの
だ。同じ表象/桜を持ちながら、対称的である。此の関係は、取りも直さず、伏姫と玉
梓の位置関係を物語っているだろう。共通し且つ対称。此の様な関係は、戸山妙真と八
百比丘尼妙椿の間にも見られる。妙真は在家の烏婆夷であり、妙椿は剃髪した比丘尼
だ。共通し且つ対称である。「真」はマコトであるが、本質/natureから直截に
表現されるモノ、ぐらいの意味だ。「椿」は植物……ではなく「椿説弓張月」の「椿」
であって「珍」に庶い。「椿事(ちんじ)」)とは、天然自然が順調に運行しておれば
起こり得ぬことが起こったことをいう。本質/nature/自然から逸脱した現象を
指す。「真」と「椿」は、対称であって、しかも、シンとチンで音が通じている。共通
かつ対称である両者は、或る登場人物に深く関係していく。妙真は孫の親兵衛を溺愛
し、妙椿は親兵衛に祟り且つ親兵衛に滅ぼされる。筆者は「七・七バランス」シリーズ
で、妙真と妙椿の共通・対称性に着目し、〈母なる者の両義性〉に思いを至らせた。妙
真は親兵衛にとって一般的もしくは〈善い母親/祖母〉(但し、ちょっと甘め)だ。一
方、妙椿は親兵衛にとって〈悪しき母親/祖母〉である。〈常識的〉な方々から感情的
な反論を受けそうだから具体的かつ詳細に書いたりはしないが、「五行大義」にも、母
は凶、と明記している。母は子を、拘束するからだ。親兵衛は、大人への加入儀礼、言
い換えれば子供世界からの脱出儀礼として、拘束する者即ち〈母なる者〉を滅ぼさねば
ならなかった。犬士の尊属で、生き残っていた者は妙真だけだ。他は殺されたり病死し
たり行き倒れたりしている。唯一残った妙真は、他ならぬ親兵衛に滅ぼされなければな
らない。ただ、そうなると色々と差し支えがある。読者の大きな支持は得られないだろ
う。故に、妙真から悪しき側面を分離、悪役・妙椿として登場させ、親兵衛と敵対させ
たのだ。そもそも妙真は親兵衛にとって実世界に於ける祖母だが、犬士の父たる八房の
乳母は玉面嬢/妙椿であるので、両者の親兵衛に対する身等関係は庶い。また此と似た
ような関係に、政木狐と箙大刀自の対比があるが、長くなるので、また今度。とにか
く、伏姫と玉梓が〈共通し且つ対称〉の関係ならば、妙真・妙椿の関係が大いに参考と
なる。有り体に言えば、「共通し且つ対称」の関係にあるとは、根を同一にしつつ分化
した複数の存在、だ。陽も陰も、混沌から分化したものだ。伏姫と玉梓は……と、口絵
に目を転ずれば、伏姫の足下には牡丹形の模様が付いた巨犬・八房、玉梓の足下には牡
丹模様の衣装を着けた山下定包がいる。「闇からの発生」で「人」と「犬」が対語の関
係にあることを示したが、対語とは〈対称の関係〉である。同じく牡丹を身に纏う、人
と犬とは、「共通し且つ対称」の関係である。八房と定包もまた、「共通し且つ対称」
の存在であることが解る。同一なる者から分化した、共通かつ対称の存在が並び置か
れ、読者に提示される。此の口絵を前提として、八犬伝は幕を開ける

正夢と起き行く鹿や照射山 東岡舎羅文 
金鞠大輔孝徳 

★列子卷第三周穆王篇「前略……鄭人有薪於野者偶駭鹿御而撃之斃之恐人見之也。遽而
藏諸隍中覆之以蕉不勝其喜俄而遺其所藏之處遂以為夢焉順塗而詠其事傍人有聞者用其言
而取之。既歸告其室人曰向薪者夢得鹿而不知其處吾今得之彼直真夢矣。室人曰若將是夢
見薪者之得鹿邪▲(ゴンベンに巨)有薪者邪今真得鹿是若之夢真邪。夫曰吾據得鹿何用
知彼夢我夢邪。薪者之歸不厭失鹿。其夜真夢藏之之處又夢得之之主。爽旦案所夢而尋得
之。遂訟而爭之歸之士師。士師曰若初真得鹿妄謂之夢真夢得鹿妄謂之實彼真取若鹿而與
若爭鹿室人又謂夢仞人鹿無人得鹿今據有此鹿請二分之、以聞鄭君。鄭君曰▲(クチヘン
に喜)士師將復夢分人鹿乎、訪之國相。國相曰夢與不夢臣所不能辨也欲辨覺夢唯黄帝孔
丘今亡黄帝孔丘孰辨之哉且恂士師之言可也……後略」。これは老荘思想の得意技、〈夢
だと思っていた感覚が本当に夢だったのか、それとも目覚めている筈の現在の感覚が夢
なのか〉とのドグラマグラだ。樵(きこり)が木を伐りに行き鹿を得た。樵は鹿を芭蕉
葉で隠し帰ってきたが、自分では其れを夢だと思った。夢ならば鹿は得られておらず、
得られていないから失うこともない。樵は経緯を詞にして歌い歩いていた。歌を聞いた
者が山に行き、芭蕉葉で隠した鹿を得た。樵は、得た筈の鹿が歌を聞いた者に奪われた
夢を見て、取り返しに向かう……。無限に続く〈夢〉のループ、合わせ鏡の無間地獄。
しかし考えてみれば、天/陽も地/陰も、共に混沌から生まれた。夢と現ウツツ、峻別
する必要が抑もあろうか

八犬士髻歳白地蔵之図
平居勿恃(悖カ)汝青年趁此青年好勉旃
平居、恃むなかれ汝が青年。此の青年に趁りて好く努めよや 
犬塚信乃・犬江真平・犬村角太郎・犬坂毛野・犬田小文吾・犬川荘介・犬飼玄吉・犬山
道松・ 
あげまきのあとだにたゆる庭もせに おのれ結べとしげる夏草 定家卿和歌 
丶大和尚

★漢詩・和歌とも同様趣旨で、「少年時に自ら勉め強くなる」ことを勧めている。直前
の挿絵では老荘的な達観が描かれていたために夢幻の狭間に遊んだ読者は、急に世俗的
な教訓歌で現実に引き戻される。哲学/夢想と世智/現実を急に移動した読者は、改め
て夢想と現実の差が紙一重だと気付く。だって、一瞬にして移動できる〈距離〉しかな
いのだ。さて、挿絵背景で歌われた教訓歌だが、此は何も現在に於けるような〈勉強〉
は勧めていないだろう。第一、挿絵自体は犬士が勢揃いして丶大と遊んでいるのだ。丶
大の目つきが何だかエロくイヤラシイが、誰が狙われているかと言えば、当然、美少女
信乃だ。信乃に決まっている。何故なら、筆者だったら当然、信乃か毛野を狙うから
だ。河童頭の現八は絶対ヤだ。……いや、そうではない。挿絵タイトルには「白地蔵」
いはばカクレンボ/とあるが、挿絵自体は「子とろ子とろ」いはば数珠繋ぎオニゴッコ
/の様子を描いている。幼少期、喧嘩とか戦争ごっこと並び、カクレンボ・オニゴッコ
は主要な遊戯だ。関東各所に潜在している犬士たちを、鬼である丶大が見つけて回るス
トーリーは、カクレンボだ。だから口絵のタイトルは「白地蔵」になったんだろう。し
かし絵は「子とろ子とろ」だ。簡単にルールを説明すると、一人の鬼が、その他の子供
を追う。その他の子供は各々前の子供にしがみつき、数珠繋ぎになる。先頭の子供は親
だ。鬼は最後尾の子供を捕まえようと走り回る。先頭の「親」は最後尾を取られまいと
鬼の前に立ちはだかる。後ろの子供達は「親」の背後に急いで回り込んで鬼から逃れよ
うとする。だから丶大は当然、最後尾の信乃を狙っているのだ。別に桜模様の着物を剥
ぎ取ってアンナことやソンナことをしようとの、不純な動機ではない。別にイヤラシイ
下心なんてない。しかし、何故に筆者は毛野をも狙うのか? 何故なら、丶大も狙って
いるかもしれないからだ。だって、男の子よりも美少女の方が好いだろう。……いやい
や、そうではなく、毛野も最後尾なのだ。此の「子とろ子とろ」は如何やら変則らし
く、道節を先頭に現八・荘介・小文吾・角太郎・親兵衛・信乃の順で繋がっているのだ
が、毛野一人だけが横から角太郎の辺に接続している。一列になっていないのである。
女メが一人交じる北斗の七つ星、童女ワラワメ添いて具足するらん。北斗七星は近くに
見える輔星と併せて八星として認識されてもいた。毛野が、他の七人とは稍異なる性格
を帯びていると考える論者は従来からいる。筆者にとっても毛野は〈特別な存在〉だ
が、「他の七人とは稍異なる性格を帯びている」事情を、口絵は視覚化しているか

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第一回 
「季基訓を遺して節に死す 白竜雲を挟みて南に帰く」 
義実三浦に白龍を見る 
里見よしざね・杉倉木曽之介氏元・堀内蔵人貞行 

★龍の一部が見えている。本文には「契あれば卯の葉葺ける浜屋にも竜の宮媛かよひて
しかな」仲正家集/勿論、背景には八幡神話が存在している。日本武尊の孫にして神功
皇后の息子である応神天皇が八幡であるとは、馬琴の時代には常識であった。里見義実
は八犬伝冒頭で、執拗なほど源頼朝に擬せられている。八幡は源家の氏神であり八犬伝
中、義実にも八幡神の擁護がある。「八幡愚童訓」などで応神の母・神功皇后は、朝鮮
半島を侵略する際に、美人の妹を龍宮に遣わして海の干満を自在に起こす双玉を借り
た。引き替えに胎内に在る子を、龍王の婿もしくは愛人として差し出す約束をした。干
満の玉を使って日本軍は大勝し、神功皇后は降伏した相手の王を「ほほほほほっ、お前
は犬よ、犬なのよぉぉぉっっ。はぁはぁ、じょっ女王様と、お呼びぃぃっっ」と罵りつ
つハイヒールで踏みにじった。いや、ハイヒールは嘘だが、朝鮮王を犬呼ばわりして貶
めたとは、愚童訓ほかに書いている。鎌倉武士の遊び/訓練であった、「犬追物」逃げ
る犬を騎射するゲームは、犬を朝鮮軍に擬したものといぅ説も近世には流布していた。
干満の玉を借りる代わりに応神を龍王に差し出す「契り」が貞行の歌である。龍王の娘
が海辺の白屋に訪ねて来て、応神を姦した状況を歌っている。即ち此処で義実は、頼朝
を飛び越えて八幡神/応神に擬せられている。だったら貞行と義実は……とまでは気を
回さなくても良い。いや、半分は気を回しても良いかもしれない。義実が応神なら、貞
行は龍に関係していると考えても面白い。しかし貞行と氏元が「股肱の臣」なら、どち
らかが「股の臣」となるが、うぅむ、「股の臣」とは何をする家来なのか……とまで考
える必要は全くない。ところで八幡は、伊勢と並んで「二祖宗廟」とされ最高の格式を
以て朝廷に遇された。実は真の初代天皇は応神であるとの説は古くからあった。だいた
い、干満の呪文を操り兄の海彦を服従せしめた山彦が龍宮の姫と姦して出来た子と、其
の姫の妹すなわち叔母が交合した結果が、神武天皇だ。日本の建国には「龍宮」との交
渉が重要な意味合いを持っているのだが、応神も龍宮と深い関係に陥っている。応神の
祖父・日本武尊は、死に結果する東国侵略の途中、安房洲崎沖辺りで海神の怒りに触れ
難破しそうになったが、嬬である弟橘姫が犠牲として没した為に、漸く難を逃れた。海
を制御するため水底に沈んだ弟橘姫と、海を制御する龍宮の干満双玉は、無関係だろう
か。リフレイン、照応や伏線や下染めが好きな馬琴が日本神話を書いたとしたら、応神
付近の物語を、遙か過去に始点を移動し、応神前史として手を変え品を代え繰り返し描
いたかもしれない。即ち、日本書紀と似たものとなったことだろう

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第二回 
「一箭を飛して侠者白馬を▲(リッシンベンに呉)つ 両郡を奪ふて賊臣朱門に倚る」 
落羽岡に朴平無垢三光弘の近習とたたかふ 
山下定かね・那古ノ七郎・杣木ノぼく平・洲さきのむく蔵・天津ノ兵内 

★背景に地蔵を載せた「供養塔」。七郎の胸の紋は描き込まず

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第三回 
「景連信時暗に義実を阻む 氏元貞行厄に館山に従ふ」 
景連信時義実を威す 
安西かげつら・麻呂のぶ時・里見よしざね・杉倉氏元・堀内貞行 

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第四回 
「小湊に義実義を聚む 笆内に孝吉讐を逐ふ」 
白箸河に釣して義実義士にあふ 
里見よしさね・堀内貞行・杉倉氏元 
金碗孝吉夜里人をあつむ 
金まり八郎 

笆内に孝吉酷六を撃 
金まり八郎・しへた毛こく六 

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第五回 
「良将策を退て衆兵仁を知る 霊鴿書を伝へて逆賊頭を贈る」 

瀧田の城攻に貞行等妻立戸五郎を追ふ 
里見よしざね・金まり八郎・堀内貞行・妻立戸五郎 

鈍平戸五郎便室に定包を撃 
岩熊どん平・妻立戸五郎・山下定かね 

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第六回 
「倉廩を開きて義実二郡を賑す 君命を奉りて孝吉三賊を誅す」 
賞罰を締にして義実玉梓を誅戮す 
玉つさ・定かねが首級・戸五郎が首級・どん平が首級 

氏元勇を奮て麻呂信時を撃 
杉倉氏元・麻呂信時 

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第七回 
「景連奸計信時を売る 孝吉節義義実に辞す」 
一子を遺して孝吉大義に死す 
杉倉氏元・金まり八郎・里見よしさね・百姓一作・上総の大介・玉つさ怨霊 

★賞を辞して金碗孝徳が唐突に切腹した事件を、「春秋左氏伝」の描く晋文公/重耳説
話に登場する介之推に擬する論者もあるか。「晋侯賞従亡者介之推不言禄禄亦弗及也。
推曰献公之子九人唯君在矣恵懐無親外内棄之天未絶晋必将有主主晋祀者非君而誰天実置
之而二三子以為己力不亦誣乎竊人之財猶謂之盗況貪天之功以為己力乎下義其罪上賞其姦
上下相蒙難与処矣。其母曰盍亦求之以死誰▲對のしたに心/。対曰尤效之罪又甚焉且出
怨言不食其食。其母曰亦便知之若何。対曰言身之文也身将隠焉用文之是求顕也。其母曰
能如是乎与汝偕隠。遂隠而死」/僖公廿四年。実は、この話の前段として、放浪から凱
旋した重耳を幾人かの者が訪ねてくる。旧法を犯してまで苦境にあった重耳を援助した
者達だ。当初は敬遠していた此らの恩人を、遂に重耳は賞する。このように積極的な申
し出を以て賞を得た者たちに続いて、介之推のストイックに過ぎる説話を載す以上、後
者が強調されている。介之推の論理は〈天の意思が重耳を晋公の座に就けたのであり人
為の介在は意味を成さない。故に人為を施したといって賞を求めるは、無価値なものに
よって賞を受け取ることであり、盗みに等しい。重耳も人々も、此の天の理を理解して
いない。だから当然、自分は禄を求めることはしないし、重耳たちと同じ空気を吸うこ
とさえ厭わしいので、世俗から隠れて生きることにする〉ぐらいだろう。実を言えば、
放浪生活の中で重耳は何度か暗殺されかけた。其のうち幾度かは、〈天に愛され晋公に
就くであろう重耳を犯せば重い天罰が降る〉との論理によって暗殺者が思い止まってい
る。重耳を守っていたものは、〈天の意思が重耳を守っている〉との幻想もしくは預言
であった。此の論理は、介之推ら、重耳に忠節を尽くした者達の主張でもあったろう。
そういえば、重耳が晋に帰還する直前、亡命当初から従っていた子犯が袂を分かつて遁
世する。子犯は重耳から預かっていた璧を返して去ろうとするが、重耳は黄河に壁を投
げ捨て子犯の前途を祝福する。実は此の子犯こそ、逃亡当初に重耳が狄でヌクヌクと安
住しようとした折、重耳を酔い潰した挙げ句に拉致して無理遣り逃亡生活を続けさせた
張本人である。従者たちの論理からすれば、重耳の意思に反していようが如何しよう
が、重耳は晋に戻って公とならねば、天の意思に背くことになるのだ。総ての反論、重
耳の意思すら踏みにじって、従者たちは重耳を晋に戻すべく尽力した。天の理を主君に
遵守させることこそ、本来的な忠であり義である。そして、自ら主張していた文脈に、
自らを従属させることは、信である。従者たちは、天の理を強調し続けなければ自らの
主張してきたことを全うできないと、考えてしまったのだろう。だが例えば一旦は重耳
のもとを去った子犯は、いつの間にか舞い戻って上将軍に納まっている。結局、介之推
が死ななければならなかった理由は、〈重耳が介之推のことを忘れていた〉からに尽き
る。積極的に褒賞を求めることは天の理の成果を盗むことになるので出来ない。このこ
とを母に説明する中で、重耳が馬鹿だと悪口を叩いた。当時は君臣関係が、組織への従
属ではなく個人的関係の側面が強い。主君個人を否定することは君臣関係の解除に繋が
る。現在の従属関係とは決定的に異なる点だ。介之推は、故に出奔せねばならず、伯夷
の如く死ななければならなかった。こう考えてくると、里見義実から賞を与えられよう
とする孝徳は、自ら言うように二君に仕えることを潔しとしない潔癖さ故に、切腹した
と解釈したくなる。が、八犬伝に於いて、暗愚の君を見放して良将に雇われ直すことは
是認されている。政木大善をはじめとして、枚挙に遑がない。孝徳は死ななくても良か
ったのだ。孝徳が死ぬためには、〈二君に見えること自体が否定されるべきだ〉との論
理が必要となる。そんなこと言ってたら、道節だって現八だって切腹しなければならな
くなるし、だいたい孝徳自身が、裁きの場で玉梓に対し釈明している。孝徳に切腹しな
ければならない理由は、実はない。にも拘わらず切腹した理由は、挿絵に描かれてい
る。従来は例えば、自らの裡に矛盾を生じた孝徳が切腹するに至り、其の様を何処から
か現れた玉梓怨霊が快さげに眺めている、との解釈があった。しかし、上記の如く、八
犬伝では、登場人物は口先では色々言うけれども、実の所は二君に見えること自体を決
して否定してはいない。孝徳は、〈魔が差して、ついつい切腹しちゃった〉のだ。或い
は、〈一時的に誤った論理に取り憑かれて切腹しちゃった〉のである。「誤った論理」
とは即ち、玉梓の論理だ。玉梓は裁きの場で、〈武士は二君に見えず、女は二夫に見え
ない、と言われているが、孝徳はじめ神余の旧臣たちは里見義実に従うに至り、二君に
見えている。ならば女である自分が神余光弘から山下定包に乗り換え二夫に見えたこと
も、責められるべきではない〉と陳述する。孝徳が説き破った如く、玉梓が責められる
べき罪の中核は、光弘から定包に乗り換えたことではない。しかし、玉梓としては、陳
述したことこそ、自らの違法性棄却事由であった。自分が断罪されるならば、二君に見
えた者も罪せられねばならない。抑も話が食い違っているのだが、其処の所を理解でき
るほど賢明ならば玉梓は元々罪をつくらなくて済んだ。愚かさ故の誤解だが、玉梓は如
何やら、此の誤った論理に孝徳を陥らせることに成功した。如何やったかは分からない
のだが、〈誤った論理に孝徳を陥らせた〉ことは確かだ。何故なら、挿絵では、玉梓怨
霊が、将に割かれた孝徳の腹中から漂い出ているからだ。何処からかやってきて孝徳の
切腹を眺めているのではなく、正に孝徳の腹の中に潜み切腹と同時に漂い出てきたの
だ。挿絵に於いて、明確である。当時、意思は脳ではなく腹に在ると考えられていた。
孝徳の意思に玉梓は入り込んでいたのだ。取り憑かれ意思を狂わされたからこそ孝徳
は、しなくても良い切腹をした。この様な事情を、挿絵は示している。更に云えば、犬
士らには何者も侵入していない。孝徳には隙があったのだろう。少なくとも逃亡先の屋
敷で娘の濃萩を姦するほどには、隙があった

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第八回 
「行者の岩窟に翁伏姫を相す 滝田の近邨に狸雛狗を養ふ」 
玉つさ怨霊 
伏姫を相て異人後難を知る 
伏姫 
瀧田の近村に狸狗児を孕む 
堀内貞行 

真野の松原に訥平大輔を逐ふ 
金まり大すけ・かぶ戸とつ平 

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第九回 
「盟誓を破て景連両城を囲む 戯言を信て八房首級を献る」 
戯言を信じて八房敵将の首級を献る 
里見よしさね・杉倉氏元・里見よし成・伏姫 

義実怒て八房を追んとす 
伏姫・八ツ房・里見よしさね 
援引事実 昔高辛氏有犬戎之寇帝患其侵暴而征伐不克乃訪募天下有能得犬戎之将呉将軍
者賜黄金千▲(カネヘンに益)邑万家又妻以少女有畜狗其毛五彩名曰槃瓠下令之後槃瓠
俄頃銜一頭泊闕下群臣怪而診之乃呉将軍首也帝大喜且謂槃瓠不可妻之以女又無封爵之道
議欲報之而未知所宜女聞以為皇帝下令不可違信因請行帝不得已以女妻槃瓠槃瓠得女負而
走入南山石室中険絶人跡不至経三年生六男六女槃瓠因自決妻好色衣服製裁皆有尾其母後
以状白帝於是迎諸子衣裳▲(文に欄のツクリ)斑言語侏▲(ニンベンに離のツクリ)好
入山壑不楽平曠帝順其意賜以名山広沢其後滋蔓号曰蛮夷今長沙武陵蛮是也』又北狗国人
身狗首長毛不衣其妻皆人生男為狗生女為人云見五代史 

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第十回 
「禁を犯して孝徳一婦人を失ふ 腹を裂て伏姫八犬士を走らす」 
一言信を守て伏姫深山に畜生に伴はる 
やつふさ・伏姫 






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