AWC ききちがいじゃが仕方がない   永山


        
#9106/9229 ◇フレッシュボイス過去ログ
★タイトル (AZA     )  16/11/21  20:49  ( 36)
ききちがいじゃが仕方がない   永山
★内容
 NHKBSプレミアで放送の二時間ドラマ「獄門島」を録画視聴。ネタバレ注意!
 今の時代にまた横溝正史、金田一耕助、『獄門島』を映像化するのなら、何らかの拘
りがあるんだろうなと思って見ていたら、戦争のトラウマをクローズアップしていた。
もちろん、今までの横溝正史ドラマでも戦争のトラウマを描いたものはあったと思うけ
れど、金田一耕助自身のトラウマとなると、目新しいのか。
 良くも悪くも一番印象に残るのは、金田一が真相を突き止め、犯人を前に推理を話す
シーンでしょう。取り憑かれたように語り、犯人に敗北感を強く与え、高笑いし、ぶっ
倒れる。これまでにない金田一耕助像を示した。二枚目の天才型名探偵に寄せつつ、狂
気を纏った探偵。素朴で柔らかなイメージは消え去ったが、明智小五郎やシャーロッ
ク・ホームズとも違うキャラクターの造形に、一応成功してる。この脚本があったから
金田一耕助役に長谷川博己を起用したのか、長谷川博己が金田一耕助役に決まったから
この脚本にしたのかってぐらい。
 ただ、長谷川の叫び方って、時々、お笑い芸人の小峠の「何て日だ!」に似てしまう
ようで、そこだけは酷く気になった。
 気になったと言えば、さほど大きくない島のお寺にしては、やけに立派な建物だった
なあ。供出した鐘のサイズと釣り合うには、あれぐらい大きくないといけないのかしら
ん。
 事件の骨格そのものに関しては、結構原作に忠実だったのでは。少なくとも、他の映
像化された「獄門島」よりは。手紙が二通存在することになる件にしても、説明されず
にスルー。説明できるのに、敢えてしていない感が。
 あと、ミステリの文法というか作法に照らすと、本作は見立て殺人だと分かるのが遅
いと思うんですが、いかがでしょう? 見立て殺人は何らかの物事になぞらえて殺しを
重ねていくことで、関係者の恐怖を煽ると言うのが表向きで、その実、見立てを隠れ蓑
にして巧妙なトリックを仕掛けていたというのが定番です。なのに、本作では、三人が
次々とけったいな殺され方をして、そのあとになって見立てに気付く。そこからさらに
真相に思い至るという道筋を通ってる。仮に見立てに気付くくだりがなくても、ミステ
リとして成り立ってしまう、何だか不思議な作りをしてると思うのです。
 ラストで、金田一が受け取った電報に「アクマガキタリテフエヲフク」の文字が。続
編作る気満々というやつでしょうか。

 「きちがいじゃが仕方がない」で有名な本作、実際に和尚が言ったのは「キがちがっ
ているが仕方がない」で、金田一が勝手に「きちがい」と解釈してたとのくだりが原作
小説にはあるとか。すっかり、忘却の彼方でしたが、本ドラマをきっかけに検索して、
ふと目にとまった次第。

 ではでは。





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