AWC 本の感想>『玩具店の英雄』 永山


        
#9089/9229 ◇フレッシュボイス過去ログ
★タイトル (AZA     )  16/11/04  22:42  ( 27)
本の感想>『玩具店の英雄』 永山
★内容
・『玩具店の英雄』(石持浅海 光文社)16/5551
 失言からのイメージ回復を図る国会議員が同郷の画家のギャラリーを出たところを、
ヤスで刺されて殺される。犯人は警備の網をかいくぐって、傘に隠していた凶器を用い
たのだが(「傘の花」)。怪我で野球部を辞め、不良になっていた男子生徒は、交番指
導員の力添えで立ち直りかけていた。だが、交番の前で野球部員と遭遇したことがきっ
かけで、凶行に走ってしまう(「襲撃の準備」)。娘連れで玩具店を訪れた非番の警
官。突如現れた包丁男に腰が引けた彼を、知り合いの男が身を挺して助けた。英雄視さ
れたその男は、過剰防衛で包丁男を死なせたことも執行猶予が付いたが(「玩具店の英
雄」)。
 科学警察研究所で働く津久井操は、事件を未然に防ぐことの可否を探るため、過去の
失敗例を集め、分析しているが、なかなか捗らない。そんな折、警視正の大迫から紹介
された彼“座間味くん”に事例について話すと、“座間味くん”は不自然さを指摘し、
事件そのものをひっくり返す。論理と倫理のアクロバットが交錯する短編集。

 難しい縛りを設定しておいて、七編をものにしたことにまず感嘆。中には強引さの目
立つ話もありますが、それでもこのレベルで揃えるのは並大抵の力じゃできないでしょ
う。第一作から七作目まで、三年以上を要しているのは、単に適当な発表の場がなかっ
ただけではないと想像します。
 書くのは大変しんどいだろうなと思う一方で、読者の立場に立つと、じっくり考えれ
ば不自然さを見つけ出し、真相に当たりを付けることは充分に可能で、楽しめる。ミス
テリとして簡単に感じるケースさえあるでしょう。そういう意味、作家にとって損なシ
リーズかも(苦笑)。
 編中のベストを選ぶのは難しいのですが、強いて二つまでに絞ると……第一作の「傘
の花」と最後を飾る「警察の幸運」かなあ。前者はミステリ的、後者は物語的に優れて
るってことで。

 ではでは。





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