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★タイトル (AZA ) 16/08/17 18:22 ( 25)
本の感想>『猫柳十一弦の失敗』 永山
★内容
・『猫柳十一弦の失敗』(北山猛邦 講談社ノベルス)15/4461
探偵の猫柳十一弦は、大学の探偵助手学部で、君橋と月々の二人をゼミに迎え、指導
している。が、前回の事件を経て、しばらく引き籠もり状態に。
その間、君橋と月々は、同じ大学の知人から相談を持ち掛けられた。山奥深い稲木村
では名家として知られる後鑑家のお嬢様宛に、脅迫状が届いたという。事件を解決しよ
うと乗り出した彼らは、探偵助手としてもまだ半人前だが、意外な手段によって、不安
は取り除かれたように思われた。
しかし、話を聞いた猫柳は、まだ完全には解決していない、新たな事件に発展すると
推理し、稲木村に急行する。
有名でない名探偵・猫柳十一弦の奮闘を描いたシリーズ第二弾。
前作『猫柳十一弦の後悔』に引き続いて、猫柳が大活躍します。と言っても、基本的
に隠密行動なので、派手さはほとんどなし。ただ、とにかく犠牲者を出さないことを最
大の目標に行動するというのは名探偵像として、ユニークで面白い。
今回は倒叙ミステリの趣が強く、犯人が誰かという謎は、ほぼないと言っていいでし
ょう。一風変わっているのは、犯行前かつ探偵側からのみ描いた倒叙物だという点。量
産できるスタイルじゃないでしょうが、非常に興味深い試みだと思いました。そもそ
も、極力犠牲者を出さないミステリというのが、かなり変わっていて(構築するのが)
難しいスタイルと言えますが。
第一作と違って、真相(動機等)は見えにくくなっているけれど、代わりに猫柳の推
理が神がかっているような。特に、トリックを見破る想像力が。その辺に不満を感じた
ものの、細かい暗示やキャラクター小説としての側面で魅せくれたので、充分に補われ
たかな。癖のあるミステリですが、一読の価値はあるかと。
ではでは。