AWC 本の感想>『眼球堂の殺人』   永山


        
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★タイトル (AZA     )  15/04/01  06:34  ( 35)
本の感想>『眼球堂の殺人』   永山
★内容
・『眼球堂の殺人』(周木律 講談社ノベルス)14/5441
 行き来するのさえ一苦労の山奥に、天才建築家・驫木が建てた眼球堂。その名
の通り、眼球を模したかのような形状の巨大な建物は、数学的な趣向を凝らして
あった。驫木の招きにより、各界の天才と目される男女四人と放浪の数学者・十
和田、その追っかけフリーライター藍子らが眼球堂に集う。そこで驫木が、建築
学は他の全学問の上位に位置するとの持論を改めて展開し、不穏な空気に包まれ
る。翌朝、建物内部に幾本も立つ柱の一つに、驫木らしき人影が突き刺さってい
るのが発見される。だが、事態を確認しようにも、柱まで観に行く方法がない。
しかも眼球堂から外へと通じるドアはロックされ、皆閉じ込められてしまった。
そんな中、さらに続く殺人。果たして犯人は誰で、どんな目的で、いかにして殺
しを遂行しているのか。
 第四十七回メフィスト賞受賞の、王道を行く本格ミステリ。

※ネタバレ注意です
 非常に凝っていて、作り込まれた本格ミステリと言える一方、その良さが十全
に発揮されたとは言い難い出来映えでもある、評価の難しい作品かな。大掛かり
な物理的トリックや眼球と数学に拘った仕掛けが、あまりにも作り物めいていて、
そういう方法をありとするのなら、そこまでやらなくても同じ手口でもっと単純
なやり方があるでしょ、と思わずにはいられない。
 最後の仕掛けも、恣意的な選択をした記述によるもので、アンフェアではない
のだろうけど、必然性に乏しい。
 登場人物達が最初のトラブル発生後、脱出を早々にあきらめるところに違和感
がなくもなし。せめて、人を呼ぶ努力はしようよ。煙を立てるとかして。あー、
大勢出てくる天才達も、さほど天才っぽく描けていないのも気になったです。
 あと、館トリックの見当を付けたあとの、探偵役の行動にも疑問。降りていっ
たタイミングで仕掛けを発動されたら、ひとたまりもなく死んじゃうよ。
 ユニークだと感じたのは、探偵役の態度。“何らかの代案を持ち合わせていな
い限り、人の考え(案)に否定的な意見を述べる資格はない”的な信条は、これ
までの推理小説にありそうでなかった?
 文章は巧い箇所とそうでない箇所との差が割と顕著だった気がします。そこに
叙述トリックが仕掛けてある、という訳でもないし。
 何だかんだ言いつつ、面白く読めました。既存のトリックやキャラクターを一
旦分解し、再構築した感じか。

 ではでは。





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