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★タイトル (AZA ) 14/05/14 21:27 ( 21)
本の感想>『謎解きの醍醐味』 永山
★内容
・『謎解きの醍醐味』(鮎川哲也 光文社文庫)12/4431
別荘に集まった様々なジャンルの作家達や業界関係者が、雪の上に残る足跡
の謎を話題にした翌朝、別荘近くの一軒家に住む女性作家が姿を見せない。調
べてみると、別荘から彼女の家まで二種類の足跡が認められた。そこから端を
発した“雪の密室殺人”に、推理作家の「わたし」が挑むことになるが(「矛
盾した足跡」)。二週間に渡る日本一周の旅を終え、東京に戻る途中の遊覧船
白鴎丸の中で、殺人事件が発生する。その状況が、乗客の一人が考え、メモに
書いていた推理小説の筋書きとそっくり同じだという(「霧笛」)。
絶版により読むことが難しくなっていた作品から、ノンシリーズ物をセレク
トした短編集。
上に粗筋を記した二編を除くと、本格推理のテイストがやや薄く、タイトル
から受ける期待感はちょっとすかされた気分。決して、他の収録作が本格では
ないとは言いませんが、全体的に地味めな作品が多く、印象に残りにくい。ま
た、決め手となる証拠が、最後に来て取って付けたようにぽこっと現れるのパ
ターンが多い気もしました。物足りないのが正直なところ。
とはいえ、平均点以上のレベルを維持しており、読んで損はしないでしょう。
昔に書かれた割に、時代をあまり感じさせないのも、この作者の特長通り。そ
れだけに、短編集のタイトルをもう少し考えてほしかったです。
ではでは。