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★タイトル (AZA ) 13/09/03 21:02 ( 34)
本の感想>「宇宙倶楽部へようこそ!」 永山
★内容
えー、正確には雑誌掲載の短編の感想です。東京創元社のミステリ雑誌「ミ
ステリーズ!vol.60」所収、「宇宙倶楽部へようこそ!」(鵜林伸也)です。
星嫌いの男子高校生が、文化系部室棟に足を踏み入れ、宇宙倶楽部という名
の天文部を訪ねたのには、もちろん理由がある。謎の差出人からのメールとそ
れに添付されていた一枚の写真のため。
写真には、海辺から臨む星の日周運動が収められており、メールには、あと
一時間すればこれと同じ風景が見えるはずという旨が書かれていたが、どう考
えてもそんな風景は見られる訳がない?
年末に本格デビューを控えた新鋭による天文部ミステリ、開幕。
うーん、何というか……この作者に期待しているのとはちょっと違う。ミス
テリ読みなら、この物語のおおよその着地点は想像が付くはず。いくつかの手
掛かりというか伏線があったし。
ただ、それらは決め手にはならない、暗示のようなものばかり。そこからど
うロジックで詰めてみせるかに注目して読み進めていたのですが、結局、こと
が実際に起きてからの答合わせ、みたいな感じで風呂敷を畳まれて、もやもや。
あと、物語の日付を2011年の4月18日に設定した意図が、よく分から
ず。その日に実際に、作中のような出来事が起きたのかと思い、調べてみたけ
れど、出来事自体さほど珍しくはなく、割と頻繁に起こっているようですし。
むしろ、マイナスの効果しか生んでないような。というのも、2011年と
特記したがために、読者の多くはあの震災を思い越したのではないか? 震災
が起きて一ヶ月あまりの時点に設定したからには、物語は震災と何らかの関係
があるのではないかと予想するも、触れられることすらなく終わる。
読者とは勝手なもので、予想が外れると、登場人物達に対して「こいつら震
災からまだ日が浅いのに何暢気にやってんだ」等といちゃもんを付けたくなる
もの(汗)。真面目な話、震災から一ヶ月後の時点で、“日本人初の国際宇宙
ステーション長期滞在”が始まったとして、“世間で”“持ちきり”なんてこ
とがあるだろうか?
それとも、この物語は全くのフィクションであると宣言する狙いで、敢えて
2011年の話としたのかしらん。
まあ、シリーズ物としての伏線かもしれず、続きに期待しますです。
ではでは。