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★タイトル (AZA ) 13/02/26 22:58 ( 24)
本の感想>『縛り首の塔の館』 永山
★内容 13/02/27 02:05 修正 第2版
・『縛り首の塔の館』(加賀美雅之 講談社ノベルス)16/6451
自称霊能力者と彼を詐欺師扱いした老人が対決する。霊能力者は地下室に閉
じこもり、扉の覗き窓から定期的に監視させる中、用意した短剣で、三十マイ
ル離れた屋敷にいる老人を殺す。ところが霊能力者もまた、老人が手にしてい
た銃で撃たれ、地下室にて死亡。互いに空間を超越して殺し合ったのか(「縛
り首の塔の館」)。屋敷で刺殺された女性。現場は密室。犯行の瞬間に目撃さ
れた人影は、およそ二百年前に魔女として縛り首に処されたルクソール夫人な
のか(「妖女の島」)。
パリ警視庁の腕利き予審判事、シャルル・ベルトランが数々の怪事件に挑む。
謎の設定はぴかいち。ただ、収録された五編の内、二編がディクスン・カー
の名作に挑戦する形なので、独創性をちょっと割り引いて(それでも)六点満
点に。
それ以外の面では、やや難が目に着くかな。この作家の長編は、翻訳調の文
章のせいか、どうしても硬質で読みづらい印象が強いのですが、短編だとそれ
が弱まっています。その意味では短編という形式はプラスになっているのです
が、反面、怪奇趣味の装飾が物足りなくなっているような。この手の不可能犯
罪物は、下手をすると「いい年した大人が魔法だの怪物だのの可能性を真面目
に取り上げるなんて……」てな印象を、読者に持たれかねない。そこをカバー
するおどろおどろしい味付けが、長編だと充分に行き届くのに対し、短編だと
足りない。そのため、真相も見えやすくなった気がします。
とはいえ、魅力的な謎を堪能できる短編集であることは、間違いありません。
ではでは。