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★タイトル (AZA ) 12/09/28 21:48 ( 27)
本の感想>『手焼き煎餅の密室』 永山
★内容
・『手焼き煎餅の密室』(谷原秋桜子 創元推理文庫)13/3451
旧体育館に今春から幽霊の声が聞こえるようになったとの噂が流れる。調べ
てみようと言い出した先輩に付き合って、夜の体育館に忍び込んだまではよか
ったが、ほんの少し目を放した隙に先輩が襲われ、犯人は一瞬にして姿をくら
ます(「旧体育館の幽霊」)。親友の祖母の家を訪ねると、そこには見知らぬ
少年が忍び込んでおり、煎餅の入った紙袋を盗もうとしていた。追い込まれた
少年は何故か煎餅を粉々に踏み砕いて逃亡。一体何のために(「手焼き煎餅の
密室」)。美術室に飾られている曰く付きの翁の面を見に行こうと先輩に誘わ
れ、またもや夜、雪にもめげずに教室に忍び込むと、室内は荒らされ、問題の
面は暗幕の上にちょこんと置かれていた。近付こうとした途端、面は幕ごと起
き上がり、身長二メートルはあろうかという大男?になる。かと思うと抜け殻
になったかのように突然平たく潰れてしまった(「熊の面、翁の面」)。
美波の事件簿シリーズ長編三作に先立つ前日譚。
同シリーズの長編ほどには凝った謎ではないし、ロジックも比較的薄味。提
示された不可思議な出来事に対して、探偵役が意外な真相を推理して語る形が
取られているのですが、その推理が直感とまでは言えないにしても、唯一の解
とは思えない、という意味で物足りなかった。ただまあ、それなりに盲点を突
いた答を示してくれるので、それなりの満足感はあります。あ、表題作のあの
内容で、密室と銘打つのは勇み足な気がしましたが。
個々の作品のミステリ度よりも、シリーズキャラクター達の過去や出会いを
描くのがメインなんでしょう。実際、シリーズのファンにはとても楽しめる内
容だと思います。一冊の短編集としても趣向を凝らしており、作者の本格ミス
テリ心を再確認できる作品。
できればもうちょっとこってりした短編も読みたいな。
ではでは。