#6255/9229 ◇フレッシュボイス過去ログ
★タイトル (mor ) 10/09/03 12:22 ( 29)
映画感想>「茶々 天涯の貴妃」・守屋
★内容
秀頼について調べたので、参考になるかと思いレンタル。しかし、史実無視の荒唐無
稽な展開で、歴史ファンにはついていけないかも……。
井上靖の小説「淀どの日記」を原作としてクレジットしてはいるものの、小説ファン
にも納得のいかないシーンが多々あり、製作者の狙いが見えない。いったい誰を観客と
して想定したのだろう?
元々、井上靖の歴史小説は史実を知る役には立たないが、小説としてはまとまってい
るそれらの設定をも無視して、意味不明なエピソードを並べ、主人公はもちろん、周辺
人物の性格も破綻させてしまっている。
主人公の淀殿はまるで「極道の妻たち」。どすのきいた声で武将らを叱咤するシーン
は、そのままヤクザ映画になりそうだ。上品さのかけらもないのは、和央ようかの演技
が悪いのではなく、監督らの演技指導に責任がある。組長の跡目争いを描かせれば、さ
まになってよかったのかもしれない。
侍女おきくが暴れまくるシーンがなぜ必要だったのか。しかも、彼女はラストまで老
けメイクなし。作品内では淀殿と同世代なのだから(史実では大阪落城時に20歳。淀殿
は49歳)、血まみれで、なおかつ元気な顔を大きく見せる意味がわからない。
監督や演出家らがストーリーの整合性そっちのけで、ひたすら画面上のインパクトを
追求した感あり。多額の予算を使えるとあって力が入ったのかもしれないが、力を入れ
る方向を間違えたとしか思えない。
井上靖の文学性や上品さを粉砕する大量の血しぶき。そんなものに予算をかけました
と胸を張られてもなあ……。スポンサーやプロデューサーもわかっていなかったのだろ
うか。
キャストにも無理があった。徳川家康役が中村獅童で、その息子の嫁役が寺島しのぶ
では違和感ありまくり。ただ、このふたりの演技が光る。無理すぎる話でもプロ意識を
発揮し、それなりに画面をまとめた両者の演技力は高く評価されるだろう。
ただ、和央ようかの次回作には疑問符がついたと思われる。舞台栄えはしても、映画
やテレビ用の演技はまだ、ということだろうか。