AWC 発想の癖についてとりとめなく   永山


        
#5634/9229 ◇フレッシュボイス過去ログ
★タイトル (AZA     )  09/07/26  23:03  ( 44)
発想の癖についてとりとめなく   永山
★内容
※主にミステリの筋やトリックを考えるとき限定

 今手元にないのですが、『推理日記』(佐野洋 講談社文庫)の何巻目かで、
佐野洋が自身と土屋隆夫とで、その着目点の違いが興味深い云々と記していま
した。確か、ある推理小説を取り上げての感想で、どちらかが犯人の行動に、
もう一人は被害者の行動(を推理する探偵)に関して不自然さを指摘したんだ
ったかな? その上で、こういう着目点の違いは、それぞれの推理小説観や発
想の違いに通じているんじゃないかという趣旨でした。
 この回のエッセイ、佐野が、詳細な分析はまたいずれとの旨を記して結んで
おり、読んだ土屋が佐野に、重要なことだからいずれと言わずにすぐにでも書
いてくれないかと求めたとか。でもこのときの佐野は他に書くことが決まって
いるからと断り、結局、続きは今日に至るまで書かれていないような。読者た
る私もがっかり(苦笑)。

 私、ミステリ関連のエッセイを本格的に読み始めたのは高校生の頃で、その
とっかかりが上記『推理日記』でした。ために、小説作法や発想の仕方も、意
識するしないに拘わらず、佐野洋の影響を受けているのは間違いありません。
 これまた本が手元にないので記憶に頼りますが、佐野が他の作家から「した
たかな常識人であることが作家としての武器になっている」と評されたのを受
け、「自分は常識を破れないことが弱点にもなっていると思う」と感想を漏ら
したはず。横溝賞をとった某作を例に挙げ、碁石を口いっぱいに詰めた死体と
その真相に対し、「自分にはとても思い付けない」と。
 私も、発想の限界を感じることが割とありますが、そういうときってまず、
自身の常識に縛られていたんだなとあとから思い知らされます。思い込みって
怖い。

 広い意味でのセルフつっこみは、物語を創る人には必須ですよね。ストーリ
ーの磨き上げ・ブラッシングそのもの。トリックそのものの磨き上げも本来必
要なんでしょうが、アイディアが浮かんだその瞬間、嬉しさのあまり、「この
素晴らしいトリックをいち早く作品にしなければ! でないと先を越される恐
れがある」なんて考えてしまうと、駆け足の作品化になってしまうのかも。
 思い付いたトリックの内、いくつかを「こいつは行けそうだから、練りに練
ってから作品に使おう」「これに合うストーリーを思い付いたら使おう」とメ
モしただけでいる推理作家は、プロアマ問わず大勢いるでしょう。かくいう私
も同様。ごく希に、商業作品にそっくり同じトリックを見つけることも。先を
越されることは、確かにあり得る(笑)。尤も私の場合は大ネタで被ることは
なく、ミステリ初心者の頃に考えついた、ありがちなものばかりでしたが。

「本のページ隅に毒を少しずつ塗っておけば、唾を着けてページをめくる人を
毒殺できる。その場所が鍵の掛かった部屋なら密室殺人だ!」という思い付き
に喜び、興奮できていた小学六年の自分が微笑ましくも羨ましい、そして懐か
しい。

 ではでは。




 続き #5674 ご無沙汰亀レス・守屋
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