#4340/9229 ◇フレッシュボイス過去ログ
★タイトル (AZA ) 07/08/11 21:19 ( 37)
本の感想>『間違いの悲劇』 永山
★内容
本の感想の採点で、私は 合計/ABCD の形式を採用していますが、
A:謎や趣向、意外性を構築する努力 <6点満点>
B:物語る技術。小説としてどうか <6点満点>
C:設定(世界観やキャラクター等) <6点満点>
D:見事に騙された。感動した <2点満点>
これらの内、Dの採点が今まで甘かった気がしています。「とりあえず、そ
こそこ面白かったら1点入れとこう」みたいになってた。
今後は少し厳しく付けてみるつもり。
という訳で今回の感想。
本の感想>『間違いの悲劇』
(エラリー・クイーン/飯城勇三 訳 創元推理文庫)13/4441
エラリー・クイーンが遺した未完長編『間違いの悲劇』の梗概に、単行本未
収録の短編七作を加えた、異色の作品集。
はっきり言って、短編の方は平凡か、あるいは日本語に翻訳するには向いて
いない内容ばかりで、いまいちの感が拭えない。「仲間はずれ」等は意欲的な
試みをしており、面白いものの、如何せん短すぎる。「動機」に出て来る取っ
て付けたような恋愛模様は、クイーンてこの手の描写が苦手だったのかと思わ
されるほど。
一方、『間違いの悲劇』は、“間違いなく”ミステリファン垂涎の代物。あ
くまで梗概なので、多少の読みにくさ・味気なさはあるが、事件が起きてから
の二転三転ぶりには、幻惑させられた。このプロットの凝り様は、クイーンら
しさの一面を示しているのではないかな。
最後のロジックが、クイーンにしてはちょっと弱いのが残念だけれども、梗
概の段階でこれだけの出来映えなのには、驚かされる。もしもちゃんと煮詰め
て、正式な作品として執筆・発表されていたら、どんなミステリに仕上がって
いたのか、夢を見させてくれる。
この梗概を読むことで、共作作家クイーンの創作の内情に触れられるのも、
大きな魅力(ここが項目Dで1点の理由)。かなり具体的に役割分担をしてい
たみたい。できれば、これに肉付けしていく過程も知りたかったなと無い物ね
だり。
ではでは。