AWC 本の感想>『赤髯王の呪い』   永山


        
#3967/9229 ◇フレッシュボイス過去ログ
★タイトル (AZA     )  07/02/21  22:04  ( 31)
本の感想>『赤髯王の呪い』   永山
★内容
・『赤髯王の呪い』(ポール=アルテ 著/平岡敦 訳 
               ハヤカワポケットミステリ)16/6451
 父親とともに小屋の中にいたのは、十六年前、“赤髯王の呪い”にかかって
両目を潰され殺されたドイツ人少女の亡霊か。少女が不可解な状況で死んだ謎
と、過去から連綿と続く“赤髯王の呪い”を解かんと、高名な犯罪学者・ツイ
スト博士が乗り出す(『赤髯王の呪い』)。封印された納骨堂から笑い声が聞
こえ、中の棺は動かされ、遺骨は折り重なっていた。そして床に散らばるのは、
放蕩の限りを尽くして死んだ女お気に入りの首飾りの玉(「死者は真夜中に踊
る」)。婚約祝いの宴の帰り道、男は薄氷の張った湖へと向かい、死んだ。ロ
ーレライの歌声に惑わされたのか(「ローレライの呼び声」)。“犯罪の魔術
師”からの脅迫を受け、塔に立てこもった男が毒殺される。彼が電話口で言い
残した「猫が魚を持って来た」の意味とは(「コニャック殺人事件」)。
 名探偵ツイスト博士シリーズ、真の第一作を含む作品集。

 現代外国人作家の中で、数少ない本格ミステリ書きであるアルテの面目躍如
たる作品集と言えましょう。
 白眉はやはり表題作で、これでもかと列挙される不可能状況のオンパレード
とその秘密、さらにそこから広がる展開……。一歩間違えれば肩透かしのぐだ
ぐだになるであろうところを踏みとどまり、本格ミステリに仕上げています。
 「死者は真夜中に踊る」は、棺を動かすトリックは優れている一方で、犯人
限定のロジックはやや弱いかと。もう少し長くして、怪奇趣味を横溢させた作
品に仕立てれば、また違っていたかも。
 「ローレライの呼び声」は途中で、こうじゃないかなと考え、もし違ってい
たら自作に使おうと目論んだのですが、当たってしまいました(苦笑)。でも、
この短編は道具立てが素晴らしい。伏線もきちんと張ってあって、見事です。
 「コニャック殺人事件」は、手品でいう改めが少し甘い感じ。他の可能性を
潰してみせてからこの真相を示してくれたのなら、もっと驚けたかもしれませ
ん。あと、犯人がこのトリックを用いる意味合いが薄い気がしないでもないが、
本格ミステリでその辺をつつくと自分に返ってくるので、言わない(笑)。

 ではでは。





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