AWC 本の感想>『神の名のもとに』   永山


        
#2960/9229 ◇フレッシュボイス過去ログ
★タイトル (AZA     )  05/07/06  19:17  ( 28)
本の感想>『神の名のもとに』   永山
★内容
・『神の名のもとに』(メアリー・W・ウォーカー 作/矢沢聖子 訳 講談社
文庫)16/2662
 小学生を乗せたスクールバスが武装集団に襲われ、児童十一人と運転手が連
れ去られた。彼らは、カルト教団として知られる“ジェズリールの家”の敷地
内に運ばれ、納屋の地下に掘った穴に監禁される。教団の主宰者であるモーデ
ィカイは、自らを最後の完璧な殉教者と称し、人質達は滅びの日に備え、生け
贄として浄化のための五十日間を過ごすのだという。FBIが交渉に乗り出す
が、一向にらちが明かないまま、四十六日が過ぎ去った。
 かつてモーディカイのインタビュー記事を書いた記者のモリーは、この事件
を取材することに嫌悪感を覚えつつも、自身の大いなる飛躍のためと捉え、調
べ始める。それは彼女の身を危険に晒し、信念を揺るがしかねない状況へと追
い込む一歩となる。

 本格ミステリ基準なので、十六点になりましたが、実質ほぼ満点と言っても
いいです。リーダビリティが素晴らしい。じっくり読み返したら穴があるのか
もしれないけれど、それを感じさせません。
 粗筋や惹句を読んだ限りでは、カルトのトップが無茶苦茶やって、小さい子
を次々と殺害するのを主眼とした、どちらかというとスプラッター的なものを
イメージしていましたが、全然違いました。交渉とモーディカイの動機がメイ
ンの、ちゃんとしたミステリです。
 運転手がベトナム帰りという設定に出くわしたときは、よくあるパターンか
と思ったのですが、少なくともお気楽・お手軽なヒーローにせず、人間らしさ
を丹念に描いてあって、好感が持てます。
 後半、やや慌ただしくなってしまったことと、肝心な場面での台詞に人名の
記述ミスと思しき箇所(訳者ではなく、作者のミスと考えられる)があったこ
とはマイナスですが、些細な瑕疵に過ぎないでしょう。

 ではでは。私は泣けたよ(苦笑)。





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