AWC 占いなんて 4   名古山珠代


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#3358/5495 長編
★タイトル (AZA     )  96/ 8/16   0:20  (146)
占いなんて 4   名古山珠代
★内容

 放課後、図書室に向かった。
 とんでもない状況にあっても、とりあえずは彼−−江上君にも会っておかな
いと。江上君とは会話を交わしたことも少ないので、本当は保子や理梨香に着
いて来てもらいたい心境だったけど、フェアでないような気がしたから、やっ
ぱり一人にした。
 図書室の戸をそろりと開け、中に入る。
 少し背伸び気味に、江上君を探す。
 あれ? 記憶にある顔がない。
 焦っていると、背中に声をかけられた。
「島川さん」
「はいっ?」
 大声を出しそうになって、両手で口を覆う。
 振り返ると、江上君がいた。でも、眼鏡をしていない……。
「あ、江上君」
「僕のこと、覚えてくれていたんですか」
 びっくり目をしている江上君。久しぶりに話す彼は、丁寧語を使ってきた。
「もちろん、覚えてるわよ。一年のときは同じクラスだったじゃない」
「よかった。覚えてくれていて」
「あの、眼鏡はどうしたの? コンタクトにしたの?」
「はい。素顔の方が格好よく見えると言われ、変えてみたんですが」
 眼鏡をしているときも充分、ルックスよかったけど、今の江上君はさらに三
割り増しだ。取っつきにくい印象は薄れ、人なつっこい笑みを浮かべている。
「おかしい?」
「ううん。今の方がいい」
「よかった。そ、それで……返事は……」
 一転して、おずおずとした態度になる彼。一年生のときには見られなかった、
江上君の別の面。
 私、思わず、オーケーを出してしまいそうになった。首を振って、舞い上が
りかけの気持ちを元に戻す。
「それがね、おかしなことになってて……」
 事情を説明する。考えてみると、告白してきてくれた人に今の事情を話すの
は、江上君が初めてなんだ。
「島川さん」
 説明し終わると、何故か江上君は悲しそうに眉を下げた。
「断るのだったら、はっきり言ってください」
「ち、違うわ。本当のことよ」
 慌てて両手を振る。
「信じにくい話かもしれない。私自身、そうだから。でも、本当。江上君さえ
よければ、これから他の三人にあってほしいんだけど」
「え?」
「勝手を言うようだけれど、私、四人みんなと付き合ってみたい。その上で、
決めたい訳。だから、江上君達にも事情を知ってもらって、それでもいいって
いう約束がほしいの」
「……分かりました」
 大きくうなずく江上君。前髪が揺れた。
「僕はかまいません」

 先に話しておいた江上君はともかく、他の三人は変な顔してる。無理ない。
「部活の途中で席を外してくれなんて言うから、何事かと思ったら」
 先輩、怒ってる?
「普通なら、二年生の連中に担がれたと判断するところだ」
「何も知らねえって」
 幸村は先輩にも、いつもの調子で口を利いてる。何てことするのよぅ。
「こっちだって、『狐につままれた』状態だぜ」
「あの朝、島川さんの様子がおかしいと思ったら、君がそんなことを言ってた
訳だ」
 佐々木君までも、いつもより言葉遣いが荒れている。みんなをご対面させる
のは、やっぱりまずかったかしら……。
「あのなあ、佐々木。俺だっていい迷惑。折角、いいチャンスだと思って打ち
明けたのに、ちっともうまくない」
「そっくり、同じ台詞を返す」
「二年のくせに、ませてるんだよ、おまえら」
 収拾がつかなくなる前に、止めなきゃ。
「やめてよ。喧嘩する人、嫌いだから」
 恥ずかしいのを我慢して言ってみたこの台詞、効果あったみたい。全員、静
かになった。
 調子に乗って、続ける。
「偶然で、こういうことになったんですけど、私の気持ちは、とにかくみんな
のこと、先輩のこと、よく知りたい。だから、順番に付き合ってみたいんです。
そういうやり方が嫌な人は、外れてください」
 ちょっと変わった空気が流れる。
 ……ほっ。誰も出て行かなかった。
 安堵する反面、みんな本気なんだと感じ取れて、緊張。安易に決められない。
「早速、決めようじゃないか。明日は誰だ?」
 荻原先輩がせわしなく言った。
 わいわいがやがや、なかなかまとまらなかったけど、まずはテストケースと
して、今週の残り四日を四人に割り振ることになった。
 さらに細かな話し合いの結果、明日、水曜は荻原先輩、木曜が幸村、金曜が
佐々木君、そして土曜が江上君に決定。
 その際、厳しい条件が付けられた。割り当てられた日以外は、私に話しかけ
てはだめ、というもの。もちろん、学校に関係することや緊急を要する件は別。
 それにしたって、凄いルールを決めるものね。割り当てられた日に、他の三
人に邪魔されたくない気持ちは分からなくもないけど。
「じゃあ、最初は俺が相手だから、よろしく」
 荻原先輩と握手。
 他の三人からの視線が痛いんだよね。

 小泉樹輝也は、およそ三年ぶりに戻って来た街を、懐かしく感じていた。
(高校に行けば、昔の友達とも再会できるかもな)
 特に気にかかっていた友達が、彼にはあった。
(島川さん、どこの高校に行ったんだろう? 同じ高校だったらラッキーなん
だけどなあ)
 明日から始まる新しい生活に、彼は思いを馳せていた。


−−今週の運勢−−   by オリヴィエ 玖珂
 ……

☆獅子座(7/24〜8/23)
<全体運>
 先週に引き続き、低迷はいよいよ深まってしまいそう。面倒ごとや頼まれご
とには、なるべく首を突っ込まない方がマシ。どうしても避けられない場合は、
開き直ること。中途半端に関わると、ずるずる行っちゃうから気を付けて。
<恋愛運>
 恋愛運はマル。最高潮と言っていいほど乗ってるから、自信持って。全体運
の悪さに関わらず、どんな奇跡でも起こりそう。昔憧れていた人と再会したり、
理想のタイプが現れたり。でも、焦りは禁物。じっくり接近するのが効果的。

 ……


 昨日買った少女雑誌の今週号を学校まで持って行き、占いのコーナーを読み
返していると、目の前に影が差した。
 やば、先生? そう思って、恐る恐る上目遣いをすると、違った。
「やっほ。何、見てんの」
「何だ、えりりんか」
 理梨香がきょとんとして立っていた。安心して、大きく息をついちゃう。
「あ、これ? 例の占いって」
「うん」
「今週も当たってそう?」
「さあ、どうかしら。何だか、もっともらしくもあり、矛盾しているようでも
ありってところ」
 私は雑誌を閉じ、鞄の奧に押し込んだ。そろそろ隠しておかないと、本当に
見つかって没収されかねない。
 理梨香が続けて話しかけてくる。
「転校生が来るって、聞いた?」
「え? 初耳。女、男、どっち?」
「お・と・こ。名前は分からないけど、噂ではかなりハンサム」
「またまたぁ。どこからそんな噂が立つのよ」
「ま、ショウには関係ないよねえ。四人と付き合い始めたんだってね?」
「そうだけど……疲れそう」
「うふふ。今日は誰と?」
「平日はパスさせてもらうことにしたわ。先週、試してみて、へとへとになっ
ちゃったもん。デートは基本的に日曜だけって」
「うらやましいね、このっ。一度でいいから、そんな贅沢、言ってみたいよ」
 そこまで会話が弾んだところで、チャイムが鳴った。みんな、慌てて自分の
席に着く。静かになる教室内。
 やがて先生の足音が聞こえてきた。普通なら一時間目を受け持つ先生一人だ
けど、今朝は転校生が来るのだから、他に転校生当人とクラス担任を合わせて
三人分の足音がする。
 扉のすぐ外で、声がする。
 そして扉が開けられた。
 転校生、どんな子かな−−。

−−終わり




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