AWC コンプレックス  談知


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#267/566 ●短編
★タイトル (dan     )  05/05/05  09:18  (112)
コンプレックス  談知
★内容
 ワタシにはコンプレックスが三つある。
ひとつは身長コンプレックス。二つ目は学歴コンプレックス。三つ
目が歯のコンプレックス。
 ワタシの現在の身長は168センチ。まずまず普通くらいの身長
である。しかし子供のころは背が低かった。今でも覚えているが、
中学に入学したときの身長が139センチで、卒業したときが14
3センチである。一番身長が伸びるという中学時代に4センチしか
伸びなかったのである。もともと139センチだって一番ちびだっ
たのに、周りはどんどん伸びているのに、ワタシはぴたりと止まっ
たままなのだ。
 子供というのものは残酷なもので、身体が小さいとそれだけでい
じめられる。いじめても反撃してこない思われて、いいようにされ
る。ワタシは完全にいじめられっ子だった。このことの影響はずい
ぶん後まで残った。若い頃ワタシが全く自信がもてなかったのは、
明らかにこのいじめの影響だろう。毎日学校へいくのが憂鬱でなら
なかった。今だったら即不登校になっていたろう。でも当時は学校
へいくのが当然という時代だったし、ワタシもまた変に真面目なと
ころがあったから、いじめられるのを承知で無理矢理学校へいって
いた。
 ワタシの身長コンプレックスは、単に背が低いからというだけで
なく、このいじめの影響が残っている。そうでないと168センチ
になったのに、まだコンプレックスを抱えているはずない。
 高校生になって一年に10センチづつ背が伸びて、ワタシは16
8センチになった。ほっとした。背が伸びないまま大人になるので
はないかと不安でならなかったからだ。
 大人になってからも、この身長コンプレックスは続いていた。単
に身長の問題ではなく、いじめられたことからくる心の問題でもあ
ったからだ。たとえばワタシの20代の4人の恋人はそろって背が
高い。一人目が168センチで、次が165センチ、170センチ
ときて、最後が172センチである。これはどうみてもコンプレッ
クスのせいとしか思えない。むやみと背の高い女を求めていたのだ。
背の高い女を従えることで、自分の身長コンプレックスを晴らそう
としていたとしか思えない。
 現在はかなりこのコンプレックスは解消されていると思う。付き
合う女友達も別に高い女ばかりではない。150センチくらいの小
さな女性も多い。それでやはりどこかにコンプレックスは根を張っ
ているのかもしれない。背の高い女性が現れると、それだけでおっ
と思ってしまう自分がいる。他の条件はよくないのに、背が高いと
いうだけで高評価してしまう自分がいる。このみっつのコンプレッ
クスのなかで、最も若いころからのものだけに、深くワタシのここ
ろに入っているのだと思う。
 学歴コンプレックスは、やはりかなりあるね。他のひとの学歴が
気になる。気にしまい、聞くまいと思っていても、誰かが話してい
ると耳がダンボである。
 もちろん表面上は、どこの大学をでてようがどうでもいいではな
いかと思う。人物次第だと思う。でもワタシのなかで、人物として
評価が高いひとが、いい大学をでていると、なるほどな、と思うし、
たいしたことない大学だと、なんでやと思う自分がいる。
 ワタシ自身の大学は近畿大学という大学である。もっとも卒業は
しておらず中退であるが。まあはっきりいって三流どころの大学で
ある。ワタシが受験したころは、テスト用紙に名前さえ書いておけ
ば入学させてくれる、といわれていた。誰かに大学名を聞かれたら、
なかなか胸を張って言えないような大学である。あんまり自分のい
った大学のことを悪くはいいたくないが、まあそんな大学である。
 もう少しいい大学だったら、学歴コンプレックスというのもなく
なるのだろうか。いい大学でも、さらにいい大学があり、それにコ
ンプレックスをいだくこともあるのか。ワタシには分からないが、
胸のなかにいつもこの学歴コンプレックスがあるのは、この程度の
大学しかいけなかったという無力感ゆえだろうか。
 ただ、ワタシのなかにはある種の開き直りもあるのだな。このく
らいの大学しかいけなかったのは、そもそも勉強してないのだから
当然で、何ら不思議なことではないのだという。そもそも中学時代
から勉強してない。先ほど書いたように、ワタシの中学時代はいじ
めにあっていて、学校へ行くこと自体嫌だった。そんな状態でまと
もに勉強できるはずがない。事実勉強はほとんど一秒もしてなかっ
た。毎日の予習復習はもちろんしない。そもそも家に帰って教科書
を開くということもなかった。それどころか期末試験の前ですらま
ったく勉強してない。何にも勉強しないままぶっつけ本番で試験を
受けていた。当然成績は悪い。それでもまだ授業をまともに聞いて
いたときは、まだましだった。途中から新聞配達のバイトをやりだ
したりして、そうなると睡眠不足で、授業中寝ていることも多かっ
た。授業も聞いていないのだから、まったく何もわからない。そん
な状態だった。成績は最低ランクである。高校を受験するときも、
普通高校にはいけなくて工業高校にいった。そしてそのことでさら
にやる気をなくし、まったく勉強することなく3年過ごした。大学
受験のときもまったく勉強していない。1秒もしてないのである。
こんなんで入れてくれる大学があるのかと思っていたが、幸い近畿
大学だけは入れてくれた。
 学歴を気にする自分がいて、それがどないやねんと思う自分がい
る。複雑にゆれるワタシである。
 考えてみると、ワタシが付き合っていた女性の大半がワタシより
高学歴である。そのことにも複雑な思いがある。別に意識して高学
歴の女性を選んだわけではないが、いつのまにかそうなっている。
ひとつには、ワタシは賢い優秀な女性が好きだということがある。
女はバカなほうが可愛いとかいう男がよくいるが、ワタシはバカな
女は嫌いである。学校の成績の優秀さのことではない。頭がいいと
いうより賢さのことである。しかし賢い女性はやはりそれなりの学
校をでていることが多いのも事実である。そういう女性と付き合っ
て、ワタシの胸中は複雑である。
 歯のコンプレックスというのは、ワタシの歯の汚さのことである。
ワタシの歯はもともと黄色い上に、あちこち補修のあとがあり、つ
ぎはぎ状態である。その補修した歯が変色していたりしている。こ
れがコンプレックスなんだな。真っ白できれいな歯のひとをみると
いいなと思う。ワタシなんか大口あけて笑えないもんな。
 女性も歯がきれいな女性がいいなと思う。
と、ここまで書いてきて分かったのは、ワタシのコンプレックスと
いうのはみんな女性がらみなんだな。女性にどう思われるかとか、
ワタシがどう思うかとか、いずれも女性がからんでいる。逆にいえ
ば、女なんかにモテなくてもいいと思ったら、どうでもいい程度の
ことなのかもしれないな。ワタシのコンプレックスといっても。
 まあ元々、こうして文章にして公開できるというのは、公開でき
る程度のものだということでもあるんだな。かってはどうかしらな
いが、今現在はその程度になっているということなんだ。本当に根
深く今も思っていることだったら、絶対ひとには知られたくないだ
ろうしね。
 そう思えば、この三つのコンプレックスといってもたいしたこと
ではないんだろうな、もはやワタシのなかでは。克服したというほ
ど積極的に動いたわけではないが、いつのまにか言ってもかまわな
い程度のことになっていた。そんな感じだろうか。まあしかし、こ
の三つがワタシが抱えている大きなコンプレックスであることには
違いがない。それが言える程度になってよかったと思うね。心がず
いぶん軽くなったような気がする。





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