#268/566 ●短編
★タイトル (dan ) 05/05/06 04:32 ( 25)
何だ神田の明神下で 談知
★内容
銭形平次をテレビで見ていたのはいつ頃かなあ。大川橋蔵の平次
が下手人に銭を投げて捕まえる。そんなもん投げてほんまに捕まる
のか、と思わずつっこみを入れたくなるような感じだったが。ちゃ
っちゃかんちゃという舟木和夫の歌も良かった。「何だ神田の明神
下でえええ」という歌詞が妙に頭に残っている。
あの頃はテレビばかり見ていた。何であんなにテレビばかり見て
いたのか。他にすることなかったのか。勉強はみごとにしなかった
な。外に遊びにいくこともあんまりなかったような気がする。いう
ところのテレビ子というやつか。
女の子と遊ぶということもなかった。そう接触する機会もなかっ
たし。女の子と手をにぎる機会って、私らの世代だとフォークダン
スくらいしかなかったものだ。オクラホマミキサとかさ。目指す女
の子がだんだん近づいてきて、さあ手をにぎれるぞと思ったとたん
音楽が終わったりしてさ。あの頃は手をにぎるだけでどきどきした
ものだ。幸せになったね。今は乳をにぎっても、まあこんなもんか
と思うだけだ。ずいぶん進化したものだ。
夏の日に河原の土手を歩いていると、すーと吸い込まれてしまう
ような空の青さがあった。カンカン照りの太陽は頭の上にあって、
暑い光線をワタシに放射している。あれはどこの土手だったのだろ
う。繰り替えしみる夢の光景である。夢ではあるが、確かにワタシ
が経験したことであるような気がする。そんな気がする風景なのだ。
いったいあれはどこだったのだろう。いくら考えても思い出せない。
ただ夏の暑さだけがイメージとして残っている。
何だ神田の明神下で、ワタシは夢を見ていたのかもしれない。す
べては夢。夢の風景。