#149/569 ●短編
★タイトル (yut ) 04/03/02 03:00 ( 42)
彼と彼女の憂鬱
★内容
「俺はいったい何をしているんだろう?」不意に彼の脳裏にその言葉が現れた。彼は
今喫茶店で、交際している彼女と、自分の妹に挟まれていた。しかも、二人とも平均点
以上のルックスときた。全国のモテナイ君から見ればさぞかしやうらやましいことだ
が、彼はこんな状況を楽しむ余裕など無かったのだ。
「なんで英知君の妹にデートの邪魔なんかされなきゃイケナイのよー。」彼女は、心
の中でわめき散らした。この「英知君」は彼女の彼であった。二人は互いに好意を抱い
ていた。そこに彼女・相田恵理美に告白という要素が加わり、めでたくこのカップルは
誕生した。
「で、何がしたいんだ?」と彼。
「率直に申しあげますと私の兄、時雨英知と別れてはくれませんか?」と彼の妹。
「何で?私が英知君と付き合っちゃイケナイの?」と彼女。
「また、始まった。もういい加減にしてくれないか?」「いいえ。兄さんは私のものな
の。兄さんが私以外の女の所行っちゃったら、私死んじゃうかもしれないよ。いいの
?」「いい加減やめてくれよ。もう、うんざりだ。」
実は彼の妹・時雨花梨は、とてつもないブラコンだ。兄が友人の家に泊まると言えば一
緒についていく。兄に近づく女は、親類以外みんな敵ときた。その尻拭いは、必ず彼の
仕事。兄さん大好きーと言っている花梨は楽だろうが、兄からすればたまったものでは
ない。
「いいじゃない。妹にこんなに好かれる兄なんて全国探してもそうそういないと思う
よ?」
「ねえ、この場合私はどうすればいいの?」彼女は口を挟んだ。
「ほっといていいよ。こいつがどう言おうと、俺達には関係ないだろう?」
「うん。まあね。」
「ちょっとまった。だから私は別れて欲しいと。」
「花梨これ以上いうなら兄さんお前をキライになっちゃうぞ。いいのか?」
「それを言われると、私が兄さんに何も言えないこと知っているから、そんなこと言う
んでしょう。」
「わかりました。わかりましたよ。今日はここら辺で退散します。でも、いつか貴方に
は分かれてもらいますよ。」最後の言葉は、彼女に向けていた。
「それでは、失礼しました。」挨拶はきちんとしていた。
花梨は喫茶店から出て行った。
「ねぇ、スゴイ妹さんだねぇ。」
「うん。普段はもっと普通なんだけどね。かわいいし、頭も良いんだから、あの性格の
欠陥が無くなればねぇ。」ちなみに欠陥とは、もちろんブラコンのことである。
「同じく。」
「これからどうする?」と彼女。
「まあ、時間はまだまだあるから、デートの仕切りなおしとしますか?」
「デート開始10分後に、妹さんに捕まったからねぇ。」
「でも、またこんな事が起きるかもね。」
「そのときは、よろしくお願いします。」彼女の声は沈んでいた。
「善処するよ。」
結局何も解決せず、英知の妹・花梨は二人の憂鬱のタネになっていたのだった。