#150/569 ●短編
★タイトル (yiu ) 04/03/03 22:11 ( 67)
森の中のロンバット 一楽亭 モウキ
★内容
`夜の森には問答無用で人を食らう怪物がいるー。`
最近、巷で囁かれている噂だ。そいつは、ロンバットと呼ばれている。これまでに幾人
の勇気果敢な騎士が征伐に向かっているが、戻ってきた騎士は怪物の首級を持ってこな
いで、何か『世界』に対しての真実を悟ったように戻ってきた。
そして、名のないこのボクが征伐に任命された。まだ家の農業や家畜と遊んでいたい
十四歳、つい此間羊と戯れていたのに。三日後の夜にこの村から北に位置するロンバッ
トの森に行くことになっている。両親はその知らせを村の長から聞くとその場で泣き崩
れた。ボクは何も言ってあげられず、ただ強く強く手を握っていた。
で、今村の一番大きな武術道場に三日間寄り弟子として稽古中だ。
「さて、ケイト。お前は勇者だ。選ばれたのだ。」
師匠がその深みのある低い声で言った。たしか、午前中も言ったな。
「はい。頑張ります。」
山鳥の炙りを齧りつきながら適当に相槌した。やはり村一番の道場のだけあり、夕食は
豪勢だ。
「そういえばな、ロンバットは筒状の帽子を被っているとか。」
食事の箸が一瞬止まった。
「ま、如何せん、頑張るだ、ケイト。」
形の良いパンを口に詰めて、ボク、ケイトは床に着いた。
「ガッタ。」
何か音がした。どうやら外から聞こえているようであった。ボクは同輩の頭を掻き分け
て夜の冷たい風邪が舞う外を除いてみた。人のシルエットが見えた。目を凝らしてみる
とそのシルエットは筒の形の帽子を被って蠢いていた。戦慄がボクの五体を走った。
* *
三日が経った。今は征伐の前の儀式が行われている。村の長からは最高級の鉄の甲冑に
金箔をあしらえた物と村の村旗を胡蝶とした兜、そして征伐に成功したら地主にする約
束をもらった。
「此度の勇者にこの巨剣を授ける。」
「有りがたき幸せ。」
おいおいおい、道場で巨剣の武術なんか習っていないぞ。短剣しか習っていない。
かくして、夜を待った。夜までは家で羊と戯れた。
「ケイトお兄ちゃーん、、、」
遠くの方で声がした、弟のトールである。
「お兄ちゃん、勇者に選ばれたんでしょ?友達に教えちゃった!」
「あ、あぁ。」
そういえば、今宵、ボクは人を問答無用で食らう怪物と戦うのだ。生きて帰れるわけも
ないし、帰ってきてもあの騎士達のように魂が抜かれたようになるのか。そう思えばひ
しひしと体の芯の部分から込み上がってきた。少し、泣いてしまった。
* *
思っていた通り、その森は霧深く、延々と樹が生い茂っていた。甲冑が重かった。巨剣
も重いので半ば巨剣を引きずってロンバットとの遭遇の待った。
「あー。」
「あーー。」
「あーーー。」
「あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。」
気が狂いそうな少し掠れていて高くて其れでいて小さな声が聞こえた。
ロンバットだ。直感でそう感じた。
「どこだ!ロンバット!出て来い!」
ボクが叫ぶとその怪物が現れた。そいつは例の筒状の帽子を深く被り、死人のような青
白い顔の目元に朱子色ので書いた呪印。といういでたちの人間だった。
「私に何か用か?」
ケイトはたじろいだ
「・・・・・・・・・・・・。」
「初対面の人をいきなり呼びつけにして、何か用があるのだろう?あ、君ももしや最近
よく来る『怪物退治』というヤツか?」
「そ、そうだ!ロンバット!覚悟!」
「残念ながら、そう言って私を打ち負かしたのは一人もいないよ。しかも、私は武具も
一つも持っていない。仕合をしたいなら、私の武具も持ってきてくれたまえ。」
ケイトは甲冑と巨剣を捨てた。
「どうしたんだい?」
「ロンバット、貴方はどうやら怪物じゃないようだ。」
「さあねぇ?その気になれば君達の無責任な噂のように人を食らえるぜ。」
「さ、ボクは帰る。騎士達があのような顔で帰ってきたのも分かるよ。」
ケイトは帰った。
「ふむ。これから楽しめそうだな。」
ロンバットは不適な笑みを見せた。