#7/569 ●短編
★タイトル (wad ) 02/01/16 23:18 ( 87)
プライバシー
★内容
二人だけのチャットルーム。
ワタシはその箱庭で相手に秘密を打ち明けた。
心の闇、密かな恋心、抱いている夢、僅かな希望。
そこはワタシとアナタだけの秘密の花園。
ワタシ達は繋がっている・・・。
ねぇ、そうなんでしょう?
愛を語り合った時、アナタがワタシに問い掛けた。
キミはいつも自分のコトばかり・・・
ワタシのコトは何も知らないのにね。
今度はアナタがワタシを知る番・・・。
ワタシの知っているアナタを見せてあげよう。
ディスプレイに流れるスクロールの河。
そこに映し出されるのはワタシの過去のログ。
ワタシの言葉、戯れに放ったもの
また記憶の隅に眠るもの
既に葬り去ったもの
その中で時折真実が交差する。
ワタシの勤務先。
ワタシの住所。
ワタシの電話番号。
ワタシのアクセスポイント。
ワタシの生年月日。
ワタシのいくつもの癖。
ワタシの生理の日。
ワタシだけが知らない筈だった
プライバシーがディスプレイを舞う。
ワタシはアナタを知っている。
だけどアナタはワタシを知らない。
アナタはワタシを知るべきだ。
今度はアナタの番・・・。
携帯電話に飛び込んで来たメールに
ワタシの身体が硬直する。
ワタシはディスプレイに向かって叫んだ。
待って、一体どういうつもり?!
携帯電話にまたメールが飛び込む。
キミはワタシに興味が無いの?
ワタシはキミに興味があるのに?
ワタシはキミの全てを知っている。
キミはその現状に満足してる?
キミはワタシを知るべきだ。
電話が鳴った、知らない番号が出たけど
反射的にワタシは電話に出てしまった。
モシモシ・・・聞こえる?
ワタシは硬直した。
まさか・・・
そんな・・・
うそでしょ・・・
電話の相手は男だった。
花園が、何か別の場所に変わる。
箱庭が、モーテルに変化する。
ビックリしてるね?
ワタシがオトコだから?
そしてキミがオンナだから?
そう、ワタシはキミを知っている。
キミはワタシを知るべきだ。
ねぇ、そうでしょう?
慌てて電話を切った。
その瞬間、玄関のチャイムが鳴る。
来てしまったよ。キミにワタシを見て貰いたくて
だからねぇ、ここを開けてくれないか?
少しだけでいい・・・何もしないから・・・
キミがワタシを知らなければ・・・
ワタシはキミに触れる事すら許されない・・・
苦しいんだ、キミを思うと・・・
外からの圧力でドアが音を立ててギシギシと揺れる。
ワタシのプライバシーが悲鳴を上げる音にそれは似ていた。
逃げ場所は無い・・・
何故ならアナタはワタシの全てを知っているから。
その瞬間、秘密の花園は苦しみの箱に変わった。
ねぇ、うそでしょ?
ワタシ達は奇妙な苦しみで、今、繋がっている・・・。