AWC 吉外信報76 $フィン


        
#7478/7701 連載
★タイトル (XVB     )  01/03/04  11:46  (129)
吉外信報76 $フィン
★内容
Doru    もののけ姫のつづきです。
Zin        こんどはちょっと別の角度から……。
Doru    と、言うと?
Doru    この前は自然と人間のいとなみについてでしたね。
Zin        今日はもののけ姫を通して見える社会の平等というものについてお話を
してみようかなと思ってる。
Doru    ふむふむ
Zin        この作品のなかで印象に残ったもののひとつにエボシ御前がアシタカの
前で新型の石火矢を試してみるシーンがあった。
doru    アシタカが彼女の秘密の庭に招かれたとこね。
Zin        そこでハンセン病患者らしき工人たちが石火矢を製作していた。
Doru    エボシ御前はもっと軽いものをと彼らに要求していた。
Zin        実際の石火矢という武器は中国ではずいぶん昔から使われていて、いわ
ゆる近代的な銃とは違うものなんだけどね。性能は悪いししばしば爆発してしまうよ
うなしろものだったらしい。でももののけ姫のなかでは命中性能のいい完全に近代的
な武器としてあつかわれていた。
Doru    ポルトガルから火縄銃が伝来するのは1543年だからもう少し時代は後ね。
Zin        戦国時代に使われていた火縄銃にしても近代的な銃とは言えない。近代
銃である条件は三つあるとぼくは思う。ひとつは命中精度。ひとつは女性でもあつか
えるほど軽いこと。
Doru    そう言えばもののけの中でもエボシ御前はさかんに『女でも使えるように軽
く』って言っていたわね。
Zin        そう。それは大きなポイントだね。あのシーンで宮崎駿はあきらかにフ
ランス革命を意識していたと思うんだ。
Doru    おおっと。話が飛躍するわね。
Zin        そうでもないさ。18世紀にフランス革命が可能になったのは近代的な銃
が普及したからなんだよ。
Doru    マリー・アントワネットがお菓子を食べなさいと言ったので民衆が怒ったか
らじゃなかったの?
Zin        ま、きっかけはそんなとこかも知れないけどね。でも歴史のあの時点に
革命が可能になったのはまさに銃のおかげなんだ。Doruはドラクロアの『民衆をひき
いる自由の女神』を知っているでしょ?
Doru    有名な絵よね。
 Zin        実際はあの絵に描かれたのは後の七月革命なんだけど近代市民革命とし
ての本質は同じだ。あの絵のなかで三色旗をかかげた自由の女神の傍らに描かれてい
た人物を覚えている?
Doru    うーんと、なぜかフォーマルスーツできめたおじさん。
Zin        そうそう、あの人は結婚式場でいきなり銃をわたされて……じゃなくっ
て! その反対側に両手に拳銃をもった少年が描かれていたでしょ?
Doru    うん。いたかも
Zin        つまり銃は女子供でもあつかえるということなんだ。命中精度が高くて、
特別に体力のない者でも扱えるほど軽くて、そして三つめの条件……誰でも簡単に入
手できるほど大量に安価に製造できる……という条件をそなえていれば、訓練されて
いないごく普通の市民でも国王の軍隊に対して十分に戦えるわけさ。
Doru    なるほど。
Zin         剣や弓矢ではそうはいかない。それらの武器は職人が手作りするわけだ
から高価だし有効に使いこなすためには何年も何年も修練をつんで専門の技術を身に
つけなければならないからね。でも銃ならずぶの素人でもそうした熟練した軍人とも
互角に戦えるんだ。銃口を向けて引き金を引きさえすればいいんだから人を殺すなん
て簡単なことさ。
Doru    だからエボシ御前の要求をあのタタラ場の工人たちは『怖や、怖や』と言っ
たのね。
Zin         言い換えれば銃は人間を平等にする。女子供でも銃を持てば男に守って
もらうことなく自分の身を自分でまもれる。開拓時代ローラのパパが買い出しに行っ
ている間はママが炉端に銃を置いて熊やインディアンから娘たちを守った。両親が留
守だったらローラ・インガルス自身がそうしなければならなかった。熊やインディア
ンのかわりにイギリス軍が攻めてきたから植民者たちは老若男女を問わずみんな銃を
とった。気がついたらいつのまにか独立してしまっていた。アメリカ合衆国憲法が銃
の所有を市民の権利としているのはまさにそのためなんだ。
Doru でも今は銃の破棄を叫んでいる
Zin        理想は現実のしっぺがえしを受けるものだね。
Doru     だったら核もそうかしら?
Zin         核は銃の延長にあるかも知れないね。
Doru     国同士の平等か
Zin         弱い国でも核を持てば強国と対等に交渉できるからね。貧しい国でも核
武装すれば米国と対等になれる
Doru    日本が核を持とうとしないのはなぜ?
Zin        アメリカの核の傘に入っているから必要ないもの。
Doru    アメリカの核に守ってもらいながら核に反対していても説得力ないね
Zin        核軍縮や核実験の規制ってよいことのようだけど核保有国に一方的に有
利な主張でもあるよ。保有国は核を独占したいからね
Doru    それはいえるな。自分の国だけ実験しまくって、他の国が実験を反対する
のはおかしいもの。
Zin        みんなが核を持つようになったらフランス革命みたいに王様アメリカの
優位が崩れてしまう。
Doru    秀吉の刀狩りみたいなものね。あれも農民が武士にはむかえないようにした
のじゃないの?
Zin         どちらかと言えば家康の鎖国かな。江戸時代に銃が普及したら武士の優
位がおびやかされるものね
Zin         刀の時代には農民は武士には勝てないでしょ? 島原の乱は結局鎮圧さ
れてしまった。でも近代的な銃があったら話はべつだったろう。
Doru    フランス革命がおこってしまう
Zin         訓練されていない一般市民が訓練された国王の軍隊をうちやぶった。あ
れはパリに銃砲店がたくさんあったからなんだ。
Doru    産業革命で性能がよく安い銃がたくさん出回っていたのね。
Zin         近代市民社会は銃なしにはありえなかった。昨今の日本の銃社会への批
判はそこのあたりを捉え損ねているんじゃないかとぼくは思うな。結局、自分たちの
手で民主主義を勝ち取った経験のない国民性ということかも知れないけど。
Doru    でもいっぽうで銃社会はひどいことになっているけどね。いまではアメリカ
はバトルロワイヤルになっている。
Zin         うーん。確かに誰でも銃を持つ権利を認めるとなると自分の行動に責任
をとれない人間まで銃を手にする機会を得ることになるからね。子供が悪戯して事故
を起こすのは管理の不備としても、人間的に未成熟だったり病的だったりする者が銃
を簡単に入手できるというのはあきらかに問題だ。
Doru    銃を手にすることができるのはきちんとそれを使える人間じゃないとこまる。
Zin       題名は忘れちゃったけど、こんなアメリカ映画の一シーンを思い出すな。
黒人の少年がハーレムに迷いこんできた主人公に銃を向けて言うんだ。『おれは黒人
だ。貧しいし、教育もない。だから世間の誰もおれの言うことをまともに聞いちゃく
れない。でも銃があれば話はべつだ……』
Doru なんの力もない者はせめて銃を持って強くなったつもりになりたいのね。でも、
それって哀しいね。
Zin  近代的な人間観の限界なのかも知れないなあ。表現の自由や信仰の自由なん
かとも共通する問題だよね。それらを乱用したり悪用する人間がかならず出てくる。
結局人間っていうのは真の自由を持つ資格がないのかも知れない。
Doru    日本だってだんだん病めるアメリカみたいになっているものね。
Zin         誰かが学校で銃を乱射するのも時間の問題という気がするなあ。
Zin        渋谷あたりで乱射するとかね
Doru    いつ牛刀が銃になってもおかしくない。
Zin        たぶん十年以内におこるのでは?
Doru    それでも平等はいいことだと思う?
Zin         それが近代社会を成立させた人々の夢だものね。手放してはいけないと
思う。でも難しい問題だなあ。
Doru    銃は平等をもってきた。
Zin         そのとおり
Doru    しかし同時に人間自身への信頼を破壊した
Zin         近代科学技術は自然だけでなく人間そのものを損ねているのかも知れな
いな。
Doru    人間は猿のままの方が幸せだったということ?
Zin        いまさら猿には戻れないでしょう。猿どころか江戸時代にも戻れない。
Zin        だってちょっと不況になっただけでこれだけ凶悪な事件が増えたのだか
らね。
Doru    環境をまったく破壊しないように経済を鈍化させたら社会は壊れてしまう
Zin         いまや日本は全部がたたら場になっている。
Doru    シシ神の森はどこにも残っていない。
Zin        そしてその動きは世界中をまきこんでいる。プナン族の森が跡形もなく
消滅するのもじきだろう。
Doru    そして最後はどうなる?
Zin         そして誰もいなくなった、かな?
Doru     うーん。ちょっと寂しいね




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