AWC 『秋本骨つぎ堂の逆襲』(国際都市川崎)88・5・15


        
#1014/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (FXG     )  88/ 5/16  21:45  ( 96)
『秋本骨つぎ堂の逆襲』(国際都市川崎)88・5・15
★内容
 ここんとこ疲れている。参っている。降参だ。
別に受験を控えているから降参しているわけではない。(一応、洒落てみた)
 肉体労働が仕事なので肉体が疲れればいいのだが、どういうものか精神の方
が疲れているので困ったことになっているのだ。
まっ、しかし、その原因は分かっている。「何で人間は働らかんといかんのか!」
という永年の疑問が結論を迎えることもなく、今現実問題としてわたしの運命
の上に立ちはだかっているという重圧に押しひしがれているということなのだ。
(ちょっと長いなあ。意味もよう通らん。もそっと短くやろ)
 要するに働きたくないわけなのだ。
予定ではとっくに宝くじが当たっていて、今頃は利子生活者になっている筈な
のだが、神様は罪なことをなさいます。こらあ!寝てるんとちゃうんか!
 ということで今朝のお話から始めましょう。
眠っておりました。日曜ぐらいは、ゆっくりと休みたい。起きるまで寝ておき
たい。と思いつつベッドの中に入ったのにどうだ。電話のベルで起こされた。
 時計をみた。なんと6時30分ではないか!一体どんな奴がこんな理不尽な
行為を成すのか見届けてやろうという気が起きたからこそ、本来なら無視して
やり過ごすベルの音に忠実に応えた秋本氏でありました。「……はい」
「あっ、寝てたあ?」(こいつだ!)
「結婚することにしたからー今日、結婚式」(歯!)
「出てくれます?」(阿呆!)
なる程。こいつならやりそうなことだと納得したのでありました。
結婚ではない、早朝の電話のことだ。
 だいたい相手が他人の結婚式と自分の睡眠のどちらを大切にしているかの判
断もつかない奴なのだ。こういう手合いとつき合ったわたしはその点では不明
であった。
「眠たいから、この次のに出ることにするわ」
そう云って、早々と受話器を置いたのも当然のこと。それにしても、も少し気
のきいた言葉を贈ってやればよかったが、なにせ半分以上眠っている。その点
においてはわたしの責任ではありません。(It's not my fault.)
 さあ、寝よう。再び寝にいった秋本氏でありました……
ところが、どうだ。眠れないのだ。どういうことだ、これは!
どうしてくれる!んだ。んだ。んだ。と憤りに身をふるわせていたら……
起きたのは昼の1時でありました。人間、眠りが必要な時は眠るものだという
真実を知ったのです。また、ひとつ賢くなってしまいました。
 さあ、起きてパチンコに行くぞ!
川崎の午後の日曜。人が多い。『秋本骨つぎ堂の逆襲』(変わる川崎)をお読
みになった方には御存知の通りの若者が、目の前にも横にも後ろにも。
 こりゃ、いかんというので、いつもの喫茶店にもぐり込むことにしたのです。
ところがだ。地下に降りていって、いざ店内に入ると、いつもと趣が違ってい
る。あれっ、改装でもしたのかなと、まだ気がつかなかったのだが、どうやら
間違えて隣の喫茶店に入ってしまったらしいということがわかったのは、ウエ
イトレスのおねえちゃんが注文を取りに来た頃でありました。
「アイスコーヒー」そっけもない注文の仕方はいつもの秋本さんです。
「あ○○こしぃ…」
えっ?
 ポケットからカッパブックスを取り出そうとしていたわたしの手が、そのウ
エイトレス嬢の言葉にピタリと止まりました。彼女の顔を見上げる。
あっ!
日本人ではないのであります。中国人です。
ほほう。
川崎も国際化したものだ。
と何となく誇らしく思った秋本さんでした。しかし、彼女、大丈夫だろうか。
次にわいてきたのは秋本的視座からみた感想でありました。
ちょっとばかり気が優しそうなところがある。フィリピン嬢のあのふてぶてし
いまでの口の大きさはなく、フィリピン嬢のあの計算高そうな目の動きも見受
けられない。芯に思いをぬりこめた、あの独特な無表情ではありましたが、注
文を取って帰っていく彼女の背中は国際共通語で語りかけていたのであります。
わたしにはその意味がわかりました。うううー
 カッパブックスをひろげます。栗本慎一郎「パンツを捨てるサル」
この人の顔が好きなんです。写真はだめ。テレビでなくては。あの喋る時のひ
ん曲がった口もと。いやあ、ぜひとも一度ごらんください。性格もあそこまで
如実に顔にでると見事と云う他はない。
 とまあ、昨日の電車の続きを読もうとしていたら、彼女がやってきたのです。
アイスコーヒーは持ってない。来ると無言でわたしのテーブルの上に置いてあ
るレシートをひっくり返し、また去っていきました。
 なる程。さっきはコーヒーの値段が書いてある方が表になっていたというこ
となんです。うーん。
 彼女の人生に幸あれ!願わずにおれない秋本氏でした。
でも結局、ここのアイスコーヒーはあれはなんだったんだ。ストローで一息。
そしたらジュルジュルと終わりの音。こ、これはひどい!350円だと。
 彼女に励ましの言葉もかけずお別れするのは忍びなかったが、背に腹は変え
られない。すぐさま立って、隣の本来の喫茶店にと階段をあがっていったので
ありました。
しかし、隣はシャッターが降りていたんですね。なる程。それで、間違ったわ
けなんですよ。この間コーヒーフロートを切らしたんで、今日は休んだのだろ
うかなどと、全く説得力のない推論を押し進めながら、また別の喫茶店に向か
ったのでありました。
 今度はコーヒー専門店であります。川崎の場合、コーヒーしか置いてないと
いう本来の意味以外の意味はありません。所謂コーヒーフロートなんてナイヨ
という意味なわけです。
 ここではなんと、従来の川崎がうごめいておりました。おばちゃんパワーの
全開です。いるわいるわ。そのうるさいことうるさいこと。
 「アイスコーヒー!」思わず大声をあげる秋本氏でした。
客の平均年令は40を越えていたことは間違いありません。わたしは引き下げ
る方です。これです。これが川崎の力です。
 わたしがポケットからカッパブックスを取り出すと、おっと始まりました。
隣のテーブル。「いや、わたしが!」「いいえっ!」レシートの取り合いです。
ひさしぶりに間近に観るあの双方の手の動き。早い!まるで中国拳法です。
 結局、あまりにも騒がしくて本が読めそうもないことを悟ったわたしは、早
々に引き上げてパチンコ屋に向かったのでありました。
 途中、フィリピン嬢の二人連れとすれ違いましたが、どうして彼女等は、例
外なく目の下にクマをつくっているのでしょうか。そして、どうして彼女等は
いつも二人連れなんでしょうか。
 この疑問を解くにはお金がいるわけなんですね。そこが川崎。
お金ぬきで国際化するにはもうすこし時間がかかりそうな街であります。
 結局またしてもパチンコはダメ。2千4百円負けてしまった。 (終)




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