#974/1850 CFM「空中分解」
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Mergeing!Mergeing!! ひすい岳舟
★内容
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Mergeing!Mergeing!!
By GakusyuHisui
1988
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最悪であった。私はこともあろうに暴走してきた車によって30m近く引き回され、
手をもぎとられるという代償によってようやく止まった。車の走り去る姿を路上のロー
アングルにて確認しながら、私はただたんに念じていた。
“こんなことで、死んでたまるか!!”と。
……次に空白がやってきた。
何時間こうしていたのであろうか。突然、私は復活した。気絶していたのだろう。私
は自分の生きていることが信じられなかった。しばらくは目を開くことを避け、あの事
故のことを考えていた。あのスポーツカーはつかまったのであろうか?記憶は断片的で
、車のシャフトが回っているところと、立ち去る後ろ姿だけであった。
結局、こうしていてもらちがあかない。詳細は警察や医者、加害者が教えてくれるだ
ろう。もう、光のない世界は嫌だ………
私は目蓋に力を入れた。
信じられなかった。天井は一般の家みたいに木の板で出来ている。吊る下がっている
照明器具だって普通にあるやつで、病院の病棟とは考えにくい。今時、開業医だってこ
んなところはない。
と、起き上がろうとすると動かない。なんということだ!!附随になってしまったの
だ!!私は顔から下に神経が通っていないと思うと、涙が出た。自分が17年間、ろく
に考えたこともなかった身体障害者になってしまったのだ。
さらに彼を悩ますことが起こった。
目しか動かないのである。口も鼻も機能はしているようだが、生きていない。
悲しむべきことだった。こういうことなら、闇の世界の方が楽だった………
……う〜ん、何なの、騒がしい。………
彼女は頭の中でシクシクという泣き声を聞いていた。夢にしてもこういったのは、嫌
である。彼女は寝返って、もう一度。寝ようとした。
“うぉ!!動いた!!”
「もう〜!!なんなのよぉ〜〜」
彼女はガバッと飛び起きた。しつこい夢だったわ!!まったく、泣いたり叫んだり、
わけのわからん夢だわ。ひっさびっさに部活の無い日曜日なのに、なんか縁起悪そぉ〜
“おりょ?女の声だ?”
「あれ?」
頭の中で声が響く。まだ眠っているのかしらん……
“ショックで頭がいかれたのか?眠っていたのは一時間前までだ”
“何よ〜、私起きたばかりよ!!いい加減、頭をしっかりしなくっちゃ!!”
“看護婦が近くでしゃべっているのかな?しかし、こっちからは話しかけられないし”
“あ〜、もうだめだ、頭洗いにいこ”
彼女は立ち上がって、階段を降り風呂場に入った。その間にも「声」は、“体が自動
的に動いている!!”などと言っていたが。彼女はそれを無視してさっさとシャンプー
を頭にかけた。泡立て、冷たい水でサァッと流す。次にリンスをし、髪の水を切り、ポ
ンポンとバスタオルで頭を叩きながら、またもや2階に。
“私は………どうなったのだろう?”
“本当、私、どうなっちゃったの?”
彼女は机に腰かけた。朝の青い光が机を照らしている。カーテンを開けると、素晴ら
しい天気。
“ねぇ?あんたは誰なんだい”
“あんたこそなんなのよ!”
“橋本智樹という名前だ。取り合えず、自己紹介しよう。このままではらちがあかない
し………”
「私は今日は、映画に行くのよ!!」思わず声を張り上げた。
“……なかなかの気性の持主だね……”
「まったく、最低だわ!」
“……本当に。自己にあって障害者になったばかりか、訳の分からん事態になって……
こうなったら性根を据えて事実をそのまま受入るしかなさそうだね。”
「ふざけないでよ。こんなこと、絶対に受入れないわ。受入れてたまるものですか!!」“あんたの名前はなんなのだい”
「中村孝子よ。あ・た・しは忙しいの!!」
彼女が叫んだ瞬間、ドアがバタンと開いた。そして彼女よりもずっと年をとったふく
よかな女性が入ってきた。
「孝子!!あんた映画いかないつもり!!人に早くから御飯の用意をさせて、グズグ
ズしているんだから!!」
「あ、今いくつもりだったの。」
「早くしなさい。まったく、朝からぶつくさぶつくさと………」
日曜とはいえ、東京へ向かう電車は込んでいた。彼には彼女がなんで7時台の電車に
乗って映画に行くのか、分かっていた。おそらく、第1回上映の時に全席自由席になる
からだろう。と、すると、この女は映画のつうなのかもしれない。普通、おんな一人で
映画なんて行かないものだろう?
彼女は彼女で考え込んでいた。どうやら橋本という奴の魂と私が混線しているらしい
。なんかの小説であったぞ。超能力者同志がそうやって意思を通じるやつ。と、すると
こんにゃろうは、超能力者なのかなあ。
新宿駅で降りた。彼は、遊体する前は何回も来たものだよな〜とふと思った。遊体?
そうか、私は魂だけ飛び出てしまったのか!!そしてたまたま波長のあったこの女に入
ってしまったのか?!いやいや、これはまだ鵜のみには出来ないだろう。何しろ、独断
であるからなぁ〜
“ねぇ、中村さん”
「何よ。」彼女はスタスタと人の海を縫って歩いている。「あんた、いい加減やめたら
?どういう理由で私を選んだかは知らないけれど、きっとあんたが思っているより悪い
素材なのよ。だかささっさとやめてよ。」
“???”
「あんたは凄い超能力者よ。認めるから出てってよ、私の頭から。」
“ちょっと待てよ。私は超能力者なんかではない。事故に遭う前は普通の17の男の子
だったんだ”
「ふ〜ん、じゃショックでそういう能力身に付けたの!!女の子の頭に自在に入ること
の出来るという!!」
回りの人にすれば不気味なことである。何せ、相手もいないのにブツクサブツクサと
怒っているのであるから。ある人は指を指し、ある人は見て見ぬふりをしている。彼女
にとってこれは怒りを爆発させる何物でもなかった。
「あんたも、テメェラも、いい加減、あ・た・し・を構わないでよ!!」
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