#965/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (QMG ) 88/ 4/ 9 1:28 ( 33)
おはよう JEFF >>田子
★内容
無意識のなかに絵のない風景が現われた。
″朝かな″ それが初めての思考だった。左手の腕時計をみた。いや、見たと言
うより見たと思った。意識に、″10時02分42秒″という時間があらわれた。
なにか夢の中にいるようだった。
″おはよう JEFF″ 遠くで老人の声がする。″これも夢かな″意識はなか
なか目覚めなかった。
″おはよう JEFF″ また同じ声が聞こえた。
″もしかして、僕の名前は JEFF と言うのかな″そう思ったとたん思考の
中に″YES″という文字が現われた。目を開けようとしたが開かなかった。
″大丈夫でしょうか。もうすぐ三分ですが。″こんどは若い男の声が聞こえた。
″僕の廻りに、少なくとも二人の人間が存在する。そして、危険も無いようだ″
僕は無意識に自分の置かれている状態を判断し、異状のないことを確認すると
大きく息を吸った。体の中を、少し冷たいが、心地よい風が通りすぎた。
通りすぎた事を、意識が感じとった。
″おはようございます″ 僕は目の開かぬまま声をだした。
″おはよう JEFF どうだい気分は″ 老人の声が近くで聞こえる。
″ええ、とても清々しい気持ちです。″
″それはなによりだ。それでは目を開けたらどうだい″
″ええ、″僕がそう言ったとたん、意識の真ん中に、横一文字に光の筋が走り、
やがて、筋は帯えと姿を変え、強い光が意識全体に広がったとたん、急にカメラ
レンズを絞りこんだように暗くなると、こんどはゆっくりと意識全体に明るさが
増してきた。それは、夜明けを早送りで見るようだった。
始め、うっすらと二人のシルエットが現われ、やがて明るさが増すと、はっき
りと、白衣を着た二人の顔が見えた。一人は白髪で細身の老人、もう一人は、不
安そうにこちらを見つめる、銀ぶちのメガネをかけた若者。
二人を見たとたん、意識の裏側に ″南野博士″ ″本田さん″ という名前が
浮かんだ。そうだ、二人は僕の創造主だ。
″おはようございます。お二人の姿がはっきりと見えます。南野博士そして 本田
さん。″ 透き通る空気が頭の中を洗うように走った。そして、僕は全てのデー
ターを与えられた。
″僕の名前は
国際事務機社製造の電子計算機 JEFF ″