AWC APPLE COMPLEX 【巨人達の憂鬱】(11)コスモパンダ


        
#931/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (XMF     )  88/ 3/25   6:33  ( 99)
APPLE COMPLEX 【巨人達の憂鬱】(11)コスモパンダ
★内容
               (11) 乱 闘

 しかし、ムカデの足は多い。一本や二本を撃ったってだめだ。コンピュータを壊さな
ければ・・・。
 そうか! 腕のCBに話し掛ける。
「カーマイン、パーク内のロボット芝刈り機に指令を出している奴を探せ。ロボットが
何者かに操られているんだ」
「了解。現在、パーク内の作業用ロボットに指令を出している指令電波はありません。
パーク・サービスに問い合わせましたが、稼働中の作業ロボットはいません。そちらの
ロボットは別の指令系統に組み込まれているか、独自に動いている模様です」
 馬鹿な! ということは、あんな低級ロボットに予め、アンナを襲うようにプログラ
ムしたのか。だが、奴の能力じゃ人間の識別なんかできない。やっぱり、誰かが指示し
ている筈だ。
 でも、電波じゃない。どうやって?
 ノバァは必死で走って、円形の泉を迂回していた。
 彼女が時々、銃を構えると、ムカデロボットの身体に火花が散るが、致命傷を与えら
れずにいる。
 アンナの側でスケボーをしていた子供達も、ムカデロボットの出現にパニックになっ
ていた。キャーキャー騒いで、アンナの周りを走り廻っていた。
 子供? 遠目には子供に見える。
 手足が長い、頭はそんなに大きく見えない。あのぐらいの歳頃なら、六等身くらいな
のに、あの子達は七等身か、八等身に見える。まるで、小さな大人の体型だ。
<大人のミニチュア>
「ウワーッ! ノバァ、気を付けろーっ。そいつらは子供じゃない!」
 僕は必死で叫んだが、噴水の水音に掻き消された。
 畜生! 必死で走りだしたが、ノバァとの距離は五十メートル。アンナとはまだ百メ
ートルも離れている。
「カーマイン、来い! パーク内に進入しろ。ノバァとアンナの命が掛かっている。バ
リケードをぶち破って来い!」
「了解。既に、バリケードの内側です。あと三十秒で到着します」
 分かってるじゃないか、カーマイン。僕はなおも走り続けた。
 ノバァが地面に倒れているアンナの側に到着した。すぐに銃を構えると、ロボット芝
刈り機を撃つ。しかし、パイプのお化け。どこにマイコンが埋め込まれているのか分か
らない。ロボットは手足の数こそ少なくなったが、まだ動く。
 ノバァはアンナの手を引いて起こすと、僕の方に向かって逃げ出した。
 その後をロボットが追う。
 そして、ノバァ達の逃げ道を<子供>達が塞いだ。
「・・・・!」
 ノバァがなんか叫んでいる。
 二人の<子供>がノバァ達の前を、そして残り二人が後ろを固めた。ノバァとアンナ
は四人の<子供>達が作る正方形の対角線の交点にいた。つまりど真ん中だ。
 ロボットの動きは止まっていた。
 ノバァと僕の間に立つ一人の<子供>に、僕はフライング・キックをくらわした。
 その<子供>は三メートル近く空中を飛ぶと、地面に叩きつけられて伸びた。
 僕が着地した時には、残りの三人の<子供>達が僕らに襲い掛かってきた。
 ノバァは銃を<子供>に向けたがトリガーを引かなかった。いや引けなかったのだろ
う。忽ち、ノバァは二人の子供に取り押さえられてしまったが、助ける暇がない。
 僕も一人の<子供>と立ち回りを演じていた。
 <子供>は恐ろしく敏捷で、結構腕力も強い。カンフーやカラテなどの拳法のような
形に填まった優雅な動きではない。野性的で、動物的だ。次の動きが予測できない。
 その<子供>が手にナイフを握った。刃渡りが二十センチはあるガーバーナイフだ。
 僕は腰のベルトに付けたサックから、短い警棒を出す。一振りして伸ばすと五十セン
チ位になる。軽合金だが、弾力性があって、しかも丈夫だ。
 <子供>がナイフを突き出した。体をひねって避けると、ナイフは上着の裾を切り裂
いていった。続いて横殴りにナイフの切っ先が襲う。ダッキングしてそれをかわす。
 ハッ、ハッという息遣いは僕のだが、<子供>は全然息切れ一つしていない。
 黒い瞳。広い額。鼻はそれほど高くない。薄い唇。そして肌は浅黒い。額の感じはア
ングロサクソン。瞳はモンゴロイド。肌の色は中南米。国籍も人種も全く分からない。
世界中の人種を混ぜたような奴だ。そして子供並みの身長。
 光る刃が斜め上から振り降ろされる。避ける。逆に下から撥ね上げられる。スウェイ
バックで避けた。だが、それが失敗だった。
 更に<子供>が一歩踏み込んで、ナイフを突っ込んできた。上体のバランスを崩した
途端、仰向けに転倒した。そこにナイフが振り降ろされる。
 仰向けに転がったまま両手で警棒を構え、ナイフを防いだ。
 キーンという音を立て、ナイフが撥ね返った。
 <子供>は、にやっと笑ってナイフを握り直した。ブーンという音が聞こえた。
 再びナイフが襲ってきた。
 嫌な予感がして、転がった。刃は空振りする。転がった反動を利用して立ち上がる。
 そこにナイフが迫る。両手に警棒を握って突き出した。
 その特殊合金製の警棒が、火花を散らすと真っ二つに切られた。
 やっぱり、レーザーナイフだ。
  ナイフの刃に数ミリ以内に物体が接近すると、刃に沿って焦点を調整されたレーザー
が照射され、三千度の高温が物質を切断するのだ。
 僕は真っ二つになった警棒を両手に握り直した。
「カズーっ、助けてよーっ」
 うそーっ、ノバァが助けを求めてる!? お珍しい。
 だけどノバァの様子を見る暇がない。もう少し頑張っててよ。
 その時、猛烈な勢いで真っ赤な車が走って来た。
 相手の<子供>の注意が一瞬それた。僕は両手の警棒を投げつけ、ナイフを握った<
子供>の手首を両手で掴んだ。グイッと手首のつぼを押さえると、レーザーナイフは手
を離れた。地面に落ちるが、手を放した時に働いた安全装置のためにレーザーは照射さ
れず、そのまま転がる。それを足で蹴飛ばし、噴水の中に沈めた。
 足に僕の注意がいった隙に腹を蹴られた。両手が緩んで、<子供>は逃げた。
 再びそいつと睨み合いになった。
 ふと気付くと<子供>の額の中央が膨れ上がり、ピクピクと蠢いていた。
 ガーッという回転刃の音が聞こえてきた。停止していたロボット芝刈り機が再び動き
出したんだ。
 ギャーという悲鳴が聞こえた。
 辺りに赤い飛沫が散った。まるで赤いペンキをぶち撒けたようだった。
 振り返った僕の目にゴロンと転がった人間の足が見えた。
 ピンクのシャツがボロボロに引き裂かれ、豊満な胸の膨らみが覗いているノバァ。彼
女は血に染まって倒れていた。その側に真っ赤に染まった刃を回転させている芝刈り機
がいた。
「ノバァー」僕は叫んだ。
 その途端、後頭部を殴られ、意識が朦朧とした。
 倒れる寸前、カーマインに突っ込まれ、パイプの残骸となって四散するロボット芝刈
り機の姿が見えた。

−−−−−−−−−−−−TO BE CONTINUED−−−−−−−−−−−−




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