AWC トゥウィンズ・1 七章 (1/3) (20/34)


        
#892/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (VLE     )  88/ 3/ 9  20:14  ( 97)
トゥウィンズ・1 七章  (1/3)  (20/34)
★内容
七章

 ディモスやマース侯の追手を気にしながらも、小走りできたためか、四時間弱
でプラネット公のお城に戻ってきてしまった。もっとも、なんどか足をくじいて、
痛い思いをしながらだったから、とても無事にたどり着けたとは言えないけど。
 でも、こんなとこで休んでる場合じゃない。早く悪魔を見つけて、なんとかし
ないとね。
 そして、ふらふらになりながらも建物の中に入ると、ちょうど一美と康司に出
会った。
「うわあ、よかったあ。一美も康司も、ここにいたのかあ。よかったあ。」
 思わず一安心。ところが、
「ちょっと、博美。あんた、マース侯の息子と結婚したんじゃないの? なんで
こんなとこにいるのよ!」
「今更、こんなとこに来る必要はない筈だろ? なにしに来たんだ?」
 そう言って二人とも軽蔑しきった眼差しで僕を見る。
「へっ? なんで?」
 まさか、出会いがしらでいきなりこんなことを言われるとは夢にも思っていな
かった僕は、一瞬、訳が判らず、思わず聞き返す。
「今更、何とぼけてんのよ。ディモスとかいうのと結婚したんでしょ。勝手に侯
爵婦人でも何でもなればいいじゃない。これ見よがしに戻ってくるなんて真似し
なくてもいいわよ。」
「違うんだって。そりゃ、確かにディモスと結婚式はさせられたけどさ……。」
「結婚式をしたのは、あたしも見たから知ってるわよ。それとも何? そのウェ
ディングドレスを見せびらかしにでも来たの? とにかくもう言い訳なんかたく
さん。あたしはもう、あんたみたいな人を姉妹だなんて思いたくないんだから。
早くマース侯のお城にお帰りなさい。残りの悪魔は、あたし達が退治しといてあ
げるから。あと、健司くんも救い出して、このことをちゃんと言っといたげるか
ら安心していいわよ。」
 そして、一美は、もう見るのも嫌だっていう風情で後ろを向く。
「ちょっと。違うってば。誤解だよ。」
 そう言って一美の腕を掴むと、
「離してよ! けがらわしい!」
 さも、汚いものに触れたような感じで手を振り払われ、吐き捨てるような感じ
で言われた。
「え……?」
 その言葉のショックと、くじいた足の痛みもあって、その場にペタンと座り込
む。
「さ、康司くん。こんな人、相手にしてないで早いとこ悪魔探しましょ。」
 一美が康司の手を引っ張って、どこかに行こうとした時、
「フッフッフ。人間同士の争いというのは、いつ見ても面白いな。」
 そんな声がして、悪魔が姿を現した。
 一美と康司が身構える。僕も腰を落としたまま、悪魔を睨みすえる。
「ほう、このワシと戦うつもりか。面白い。」
 悪魔はニヤニヤ笑いながら、一美と康司に攻撃をしかけてきた。
「あ、危ない!」
 稲妻が落ちた。しかし一瞬早く、一美と康司の体は不思議な玉の力によって青
白い光で包まれていたので、全然なんともなかった。康司は剣を持って、悪魔の
隙をついて攻撃する。
 でも、悪魔はそれを間一髪でかわす。一美は悪魔の体にまとわりついて、玉の
不思議な力で悪魔の力を弱めようとする。
 悪魔は、必死で戦っている二人の表情を見てニヤニヤしながら、その攻撃を避
けている。
 僕も、いつまでも座り込んでいる訳にはいかないから、痛む足を引きずって、
なんとか壁際に辿り着くと、剣を数本と体を支えるための棒切れを手にして、悪
魔に向かった。
 それに気が付いた悪魔は、僕に対しても稲妻を落としてくる。だけど、僕だっ
て、だてにペンダントをつけてる訳じゃない。稲妻は、僕の体を覆っている青白
い光の表面を伝わって消え……かけたところで、
「うわ! いてえっ!」
 左手の薬指に激痛が走った。運悪く、体を支える棒を左手で持っていたため、
痛みで、それを離してしまい、支えを失った僕は、その場に尻餅をつく。そして
反射的に右手で左手の薬指を握る。
 よく見ると、ディモスにはめられた指輪から先の部分だけ青白い光で覆われて
いない。
 僕は、左手の痛みに耐えながら再び立ち上がって悪魔に近付くと、手にしてい
た数本の剣を悪魔に向かって次々に投げつける。
 悪魔は、それをうるさい虫を追い払うような感じで全部かわした。
 一美と康司も、その間にいろいろな攻撃を試みていた。
 しかし、悪魔も、いい加減に煩わしくなったのか。いきなり部屋の空気をかき
回して、僕達三人を振り回し始めた。
 康司と一美の顔に焦りの色が浮かぶ。僕もさすがに少し焦った。それでも、た
またま偶然、一美が近付いてきたときに、一美の体を引き寄せることはできた。
一瞬一美も抱きついてきたけど、相手が僕だと判ると、乱暴に突き放し、また離
れてしまった。
 康司は壁に何度かぶつかって、既に気絶していた。一美も僕から離れた時の勢
いで壁にぶつかり気絶してしまった。それと共に、それぞれの体を包んでいた光
は消え、玉の光も弱まり、最後には康司の玉も一美のペンダントも光を失って床
に落ちてしまっていた。
 悪魔は、部屋の空気をかき回しながら、その二人を自分の方へ引き寄せると、
両脇に抱え込み、一旦、暗闇の空間に消えてしまった。
 そして数秒後、再び姿を現すと、さらに部屋の空気をかき回した。
 僕は手足をうまく使って、壁や天井に体が激突しないように注意しながら、目
の前にシャンデリアが近付いてきた時、それを掴んでぶら下がって体を支えた。
 こうなると悪魔は、これ以上やっても効果がないと思ったのか、部屋の中をか
き回すのをやめる。
 一方、僕の玉はすごく強く光っていて、体の表面が真っ青な光に包まれていた。
回りの景色が青一色になってきている。体中に力が満ちているのが判る。ただし、
左手の薬指を除いて。
 僕がシャンデリアから手を離しても、なぜか体は宙に浮いたままだった。でも、
その状態でも、自分の意志に従って自由に動き回れるようだ。そこで、ゆっくり
と下に降りていって、一美のペンダントを拾い、再び宙に浮いて悪魔の方に向か
った。
 左手に一美のペンダントを、右手に一本の剣を持って、その状態で身構えた。
 ふと、気が付くと、一美のペンダントを持っていた筈の左手には、白く輝く楯
が握られていた。

−−−− 続く −−−−




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